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答弁本文情報

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平成八年二月十三日受領
答弁第二四号

  内閣衆質一三四第二四号
    平成八年二月十三日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 土井たか子 殿

衆議院議員秋葉忠利君提出原子力発電所の地震・地盤に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員秋葉忠利君提出原子力発電所の地震・地盤に関する質問に対する答弁書



一について

 「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」(以下「検討会」という。)は、原子力施設の安全性の確認に万全を期すとの観点から、平成七年兵庫県南部地震(以下「兵庫県南部地震」という。)の状況を踏まえ、安全審査に用いられる耐震設計に関する関連指針類の妥当性について確認を行う等の所要の検討を行うために設置され、検討会では、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会決定。以下「耐震設計審査指針」という。)の妥当性等について、同指針における地震動の評価方法の妥当性も含め、検討が行われたものである。

二の1について

 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)に基づく原子炉の設置許可申請に際して敷地の解放基盤表面における最大速度振幅を算定するに当たっては大崎の方法(昭和五十四年に大崎順彦氏が発表した基準地震動評価に関するガイドラインに示された評価方法をいう。以下同じ。)が一般的に用いられているが、同方法は地震動の実測結果に基づいた経験式であり、検討会は、兵庫県南部地震による地震動の観測値のみをもって同方法の妥当性を評価することは適切ではないこと、兵庫県南部地震による最大速度振幅のうち解放基盤表面における観測値であると確認されたものがないこと等から、御指摘の評価を行わなかったものである。また、前述のとおり兵庫県南部地震による最大速度振幅のうち解放基盤表面における観測値であると確認されたものがないことから、大崎の方法に今回の地震条件を入力した場合に観測値と合致するかどうかを判定することは困難である。
 マグニチュード七・二の地震による神戸大学の敷地に想定される解放基盤表面における最大速度振幅は、大崎の方法に従って算定すると、約十八・四カインとなる。
 解放基盤表面の設定は、地表踏査、ボーリング調査、トレンチ調査、岩石・岩盤物性試験等十分な調査に基づき敷地内の地盤状況を把握した上で行う必要があるところ、神戸大学の敷地の地盤状況についてはこれまで一孔のボーリング調査の結果しか得られていないため、神戸大学の敷地の地下何メートルで解放基盤表面の条件を満たしているかは不明である。また、神戸大学の敷地において想定される解放基盤表面から地震計の設置位置までの間における最大速度振幅の増幅率は、前述のとおり神戸大学の敷地の地下何メートルで解放基盤表面の条件を満たしているかは不明であることから、不明である。
 マグニチュード七・二の地震による株式会社松村組技術研究所の敷地に想定される解放基盤表面における最大速度振幅は大崎の方法に従って算定すると約十三・八カインとなるが、当該算定値と同研究所において得られている観測値とを直接比較することについては、当該観測値は加速度の記録であるため、適当ではない。
 「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会報告書」(以下「検討会報告書」という。)四十三頁に示されている地震による神戸大学の敷地に想定される解放基盤表面における最大速度振幅は、大崎の方法に従って算定すると、E1については約十三・四カイン、E2については約四・八カイン、F1については約二十七カイン、F2については約二十・一カイン、T1については約二十七・五カイン、T2については約五・五カイン、Nについては約十三・四カインとなる。また、検討会報告書四十三頁に示されている地震による神戸大学の敷地における最大加速度振幅については、最大加速度振幅を算定するための一般的に確立された方法は承知しておらず、答弁を差し控えたい。

二の2について

 検討会報告書では、兵庫県南部地震による地震動の特徴を評価するため、同地震による各地点における地震動の最大加速度振幅と過去の地震記録に基づいた経験式である距離減衰式(以下「福島・田中式」という。)との比較等を行った入倉孝次郎氏の論文が参考文献として引用されているものである。
 福島・田中式を用いて原子力発電所の耐震安全性を再評価することは、同式が堆積層等の一般の地盤上における地震動の実測結果に基づいた経験式であり、原子力発電所における重要な建物・構築物が岩盤に支持されることとなっているため、適切ではない。
 原子力発電所の耐震安全性の評価に際して考慮される地震と敷地の相互関係については、耐震設計審査指針において、地震のエネルギー放出の中心から敷地までの距離で表すこととされているが、これは、地震による建物・構築物等への影響の評価に当たっては地震の発生によって解放された歪みエネルギーが蓄積していたと見られる空間的な広がりの中心点すなわちエネルギー放出の中心を地震の中心とみなすことが適切であるとの知見等を踏まえて定められたものであり、少なくとも現段階においては、これを見直すべき新たな知見等は得られていない。

二の3について

 検討会においては、耐震設計審査指針における地震動の評価方法の妥当性を検討するため、同指針に従って評価地点周辺で想定される地震による敷地の解放基盤表面での地震動と兵庫県南部地震の際に観測された地震動とを比較することとされたものであり、その結果、評価地点として選ばれた神戸大学の敷地において想定される最大の地震であるマグニチュード7 3/4の地震による解放基盤表面での地震動及び兵庫県南部地震の際に神戸大学で観測された地震動の応答スペクトルが検討会報告書の第五 ― 五図に記載されたものである。なお、検討会においては、二の1についてにおいて述べたとおり、地震動の実測結果に基づいた経験式である大崎の方法を兵庫県南部地震による地震動の観測値のみをもって評価することは適切ではないこと等から、御指摘の評価は行っていない。
 また、兵庫県南部地震発生後においても、大崎スペクトル(大崎の方法により求められる応答スペクトルをいう。)が解放基盤表面における実際の地震動を過小評価するとの知見等は得られていない。
 原子力発電所の耐震設計の対象とされるすべての施設、機器の固有周期はいくらかとの御質問については、固有周期が施設等の性能を表す重要な情報であり当該情報を公開することによって施設等の製造に係る私企業の営業活動に影響を及ぼす場合があるため、答弁を差し控えたい。

二の4の@について

 検討会では、上下方向と水平方向の地震動が施設に作用する場合、一般に上下方向と水平方向の地震動の最大加速度の生起時刻の差異及び施設の上下方向と水平方向の振動の特性の差異により施設の上下方向と水平方向の最大応答の生起時刻が異なることを踏まえ、上下方向と水平方向の地震動の最大加速度の生起時刻の差異に関して検討するため、地震動の加速度の時刻歴波形(地震動の加速度の時間的な変化の記録をいう。)の得られている地点を対象として水平方向の最大加速度の生起時刻における水平方向に対する上下方向の加速度振幅の比について分析を行ったものである。

二の4のAについて

 耐震設計審査指針においては、設計用最強地震又は設計用限界地震による地震力を用いて原子炉施設の耐震設計を行う場合には、基準地震動Sl又はS2の最大加速度振幅の二分の一の値を鉛直震度として求めた鉛直地震力を設計用最強地震又は設計用限界地震による水平地震力と同時に不利な方向に組み合わせて作用させることとされている。検討会では、このような耐震設計審査指針における鉛直地震力の考え方について兵庫県南部地震の際に得られた観測記録等を勘案しつつ検討を行った結果、同地震による構造物の被害の主たる原因は大きな水平動であると考えられること、原子炉施設が上下方向に特に剛性の高い構造であること、上下動と水平動の最大値の生起時刻に差異があること等から、その妥当性は兵庫県南部地震に照らしても損なわれるものではないとされたところである。

二の4のBについて

 上下動を用いた動的解析は、地震による原子力発電所の建物・構築物の被害の主たる原因は上下動ではなく水平動であると考えられていること等から、現在、耐震設計審査指針には導入されておらず、少なくとも現段階においては、上下動を用いた動的解析を同指針に導入すべき新たな知見等は得られていない。

二の5の@について

 「工学的判断」、「工学的見地」とは、原子力発電所等の耐震設計に必要な土質力学、建築構造学、土木工学その他の建設工学、材料力学、弾性学その他の機械工学等の工学分野の知見に基づく判断又は見地のことである。

二の5のA及びBについて

 耐震設計審査指針における基準地震動S1又はS2の策定の際に考慮する活断層の評価方法は、地質時代的に見て最近まで繰り返し活動していた断層は将来も活動して地震を引き起こす可能性があること、繰り返し活動していたことが確認された断層の調査結果から繰返し期間の大半は約一万年以内、これより長いものでも約五万年以内に収まっていること、一般に活動度が高ければ高いほど繰返し期間が短いとされていること等の地震学、地質学等の知見を工学的に判断して定められたものであり、御指摘の「活断層研究」第十一号に掲載されている「一九八八年深溝断層(西深溝地区)トレンチ調査」及び同誌第十三号に掲載されている「陸上活断層の最新活動期の表」を含む既往の調査の結果等を踏まえても、少なくとも現段階においては、同指針における活断層の評価方法を見直すべき新たな知見等は得られていない。

二の6について

 原子炉等規制法に基づく原子炉の設置許可及び設置変更許可に係る審査では、あらかじめ活断層を分断して個別に評価することとしているわけではなく、地質及び地盤に関する文献調査、現地調査等に基づき活断層の連続性等について慎重に評価を行っている。
 なお、兵庫県南部地震の際に活動した六甲・淡路断層帯については、個々に断層名が命名された複数の活断層が連続又は極めて近接して分布していること、これらの活断層は地質及び地形から連続性が認められる六甲山地から淡路島北部の山地にかけて分布すること、これらの活断層の変位の主成分は六甲山地側及び淡路島側でともに右横ずれであることから、連続する活断層と評価することができるものである。

三の1について

 東京電力株式会社は、柏崎刈羽原子力発電所に係る原子炉等規制法に基づく原子炉の設置変更許可申請に際して、過去の地震の生起状況から日本海海域、長野盆地周辺並びに高田直江津付近及び信濃川下流域に分けて、それぞれの地域で起こり得る地震の限界的な規模を地震地体構造に基づき、その起こり得る場所を活断層との関連で想定している。具体的には、地震地体構造に基づき日本海海域については佐渡島北方断層の位置にマグニチュード7 3/4クラスの地震であるマグニチュード七・七の地震を想定し、長野盆地周辺については長野県北部の断層群の位置にマグニチュード七・五の地震を想定し、高田直江津付近及び信濃川下流域については気比ノ宮断層の位置にマグニチュード七・〇の地震を想定している。

三の2の@について

 政府は、柏崎刈羽原子力発電所に係る原子炉等規制法に基づく原子炉の設置許可及び設置変更許可に係る審査に際して、原子炉施設の設置位置付近において存在が確認された断層については、安田層の上部層に変位を与えていないことから、少なくとも安田層堆積終了以降、すなわち約十二万年前以降活動しておらず安全上支障となるものではないと判断している。

三の2のA、B、C及びDについて

 安田層中から広域火山灰の御岳Pm ― 1が発見された事実等があるということを前提とした御質問については、発見された御岳Pm ― 1の火山灰に係る試料の採取位置等の詳細が不明であること等から、答弁を差し控えたい。また、このように試料の採取位置等の詳細が不明であること等にかんがみれば、当該火山灰に関して何らかの措置を講ずる必要はないと考えている。

三の3について

 政府は、柏崎刈羽原子力発電所に係る原子炉等規制法に基づく原子炉の設置変更許可に係る審査に際して、敷地周辺に有史以来に発生した過去の地震や活断層などの調査に基づき耐震設計上考慮すべき地震が想定されていることを確認しているところである。





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