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平成九年三月七日提出
質問第九号

国公立医療機関による無断血管摘出・冷凍保存事件に関する質問主意書

提出者  山本孝史




国公立医療機関による無断血管摘出・冷凍保存事件に関する質問主意書


 今般、国立循環器病センター(以下、センター)と奈良県立医科大学第三外科により、平成五年十一月二日に遺族の同意の無い組織摘出が行われ、センターに血管が冷凍保存され、遺族がその返還を求めている事件が明らかになったが、移植医療の適正を期し、開かれた移植医療の発展に資するために、以下質問する。

一 レシピエント病院以外の医療機関であるセンターと奈良県立医大第三外科が、関西医科大学救命救急センターにドナー候補者が存在することを知った経緯と、どんな臓器・組織が提供されそうだとの通報を受けたのか、時系列で具体的に答えよ。併せて、腎臓バンクや腎臓移植ネットワークの関与についても答えよ。
二 センターと奈良県立医大がドナー候補者が存在することを知ってから、摘出チームを派遣するまでの経緯を時系列で具体的に答えよ。
三 センターと奈良県立医大第三外科の医師らによる臓器提供報告書によれば、十一月二日二十時三十分に腎臓チーム摘出開始、二十一時十五分血管チーム摘出開始、二十一時三十五分処置終了となっている。
 @ センターと奈良県立医大第三外科から派遣され摘出を行った医師は誰か。そしてその医師らの診療科目などの専門領域は何か。
 A 文部省からの資料によれば、奈良県立医科大学外科学第三講座は、心臓移植・心疾患を主な研究領域としている。その講座の医師とセンターの心臓血管外科の医師らが共同して血管を摘出した理由を具体的に答えよ。
 B 血管チームは、組織摘出の際に、組織提供承諾書の当該組織の承諾の有無を確認したのか。仮にしなかったとすれば、それはなぜか。承諾があるという旨の告知を誰かから受けていたのか。
 C 臓器提供報告書では、「遺族への感謝状 ― 今回は送付せず」とあるが、それはなぜか。
 D 採取した血管はどのくらいの長さか、またその部位はどこか。血管以外に採取した組織や臓器はなかったのか。
四 平成八年六月になってセンターの高本部長は「死体腎臓周囲血管採取報告書」を作成し本件に関係する訴訟の代理人に提出している。
  ドナーの腎臓周囲血管を採取するためであれば、心臓外科を専門とする奈良県立医大の医師も関与する必要はなく、また腎臓チームと同時に摘出を行えば、レシピエントの医療機関との移植術施行の際のトラブルに有効に対処するためのコミュニケーションも可能と考えるが、血管摘出を腎臓摘出チームと同時に行わなかった理由を具体的に答えよ。
五 センターでは液体窒素を利用した高度な冷凍保存設備を持っていると承知している。厚生省の説明によれば、平成九年二月末日現在、センターの冷凍設備で保存されている組織は二十四件あり、その内訳は、血管十一、心臓弁七、皮膚六とのことである。
 @ 保存されている数と内訳に間違いはないか。
 A 保存されている組織それぞれについて、提供承諾書の有無、承諾書の中の当該組織の摘出の承諾の有無及び遺族の当該組織保存の認識の有無について、ひとつひとつ答えよ。
 B それらの組織は、摘出された臓器に付属するものではなく、臓器本体とは別個の組織部分の承諾によって摘出されたものと解して良いか。二十四例それぞれについて、答えよ。
 C それらの組織を冷凍保存している目的は何か。
 D 現在の組織の冷凍保存技術では、さまざまな組織はどのくらいの期間保存が可能なのか。
 E 長期冷凍保存された後に医療に利用された組織について、遺族には利用の事後報告を行っているのか。
 F 数時間のうちに移植される臓器の場合とは異なり、組織は何年も保存が可能である。家族の肉体の一部が長期冷凍保存されることは、遺族の心情を考えると、あまりに無機質的であり、組織を医療材料として考えていることになる。そのような医療のあり方、医療材料の調達のあり方について、国はどのように考えているか答えよ。
六 角膜及び腎臓の移植に関する法律は、移植術に使用しなかった部分は焼却しなければならないと定めている。しかし、実際は焼却はされず三年以上もの間保存されていた。摘出したのは、移植する腎臓の周囲血管であったという主張に立てば、これは同法第七条違反の疑いがある。その認識を伺う。
七 脳死臨調答申では、移植医療にかかる問題事例を審査する審査委員会の設置が要請され、過日ようやく設置された。平成七年六月に発覚した、米国で利用されなかった腎臓を輸入し、東京女子医科大学の太田和夫教授らがネットワークを通さずに移植した、いわゆる「US腎事件」や、今回の摘出事例は、審査委員会での調査・審査の当然の対象と考えるが、どのように日本腎臓移植ネットワークに対して指導をしていく所存か。
八 このような事件の発生の原因としては、医療従事者の教育、実習、入学試験及び資格試験など諸制度のあり方が深く関係していると考える。特に倫理面において、移植医療の適正を期すために対策や再発防止策をどのように講じるつもりか、それぞれについて答えよ。

 右質問する。





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