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平成九年三月二十八日受領
答弁第九号

  内閣衆質一四〇第九号
    平成九年三月二十八日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員山本孝史君提出国公立医療機関による無断血管摘出・冷凍保存事件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員山本孝史君提出国公立医療機関による無断血管摘出・冷凍保存事件に関する質問に対する答弁書



一及び二について

 厚生省において、御指摘の組織(血管、心臓弁等臓器以外の人体の組織をいう。以下同じ。)の摘出に関し、血管摘出を行った国立循環器病センター(以下「センター」という。)の高本真一医師に報告を求めたところ、平成五年十月三十日夕刻に組織凍結保存ネットワークのコーディネーターからセンターの本村昇医師に対して「腎臓以外も摘出できる可能性があるので、関西医科大学の千代孝夫医師から組織摘出チームの派遣の要請があった」との連絡があり、同月三十一日深夜にセンターの大北裕医師及び本村医師の二名が同ネットワークの組織摘出チームとして関西医科大学に行き十一月一日午前九時三十分まで待機し、さらに、同月二日午後七時三十分から高本医師を加えた三名が同大学に行き再度待機し、別の医師による腎臓移植のための腎臓摘出終了後の午後九時十五分から血管摘出を行ったとの回答があったところである。
 また、文部省において奈良県立医科大学に確認したところ、同大学第三外科学の庭屋和夫医師から、詳細な時刻は不明であるが、組織凍結保存ネットワークのコーディネーターから同医師に対して「腎臓移植に伴い心臓弁の提供があるかもしれない」との連絡があり、同医師が関西医科大学に行き待機した旨の報告があったとの回答があったところである。
 腎臓バンク及び腎臓移植ネットワークの関与については、組織凍結保存ネットワークの当該コーディネーターは、財団法人大阪腎臓バンクからコーディネーターの業務を委嘱されていた者であったところであり、また、社団法人日本腎臓移植ネットワークは当時設立されていなかったところである。
 なお、組織凍結保存ネットワークは、組織摘出及び組織保存並びに組織移植に関する啓発活動を行う任意の団体であり、近畿圏内の医療施設の関係者を構成員とし、組織摘出及び組織保存に関して、センターや奈良県立医科大学第三外科学等の医師に、コーディネーターが連絡を行っているものと承知している。

三の@及びAについて

 厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、同医師、大北医師及び本村医師の三名が組織凍結保存ネットワークの活動として関西医科大学に行き、当該血管の摘出を行ったとの回答があった。これら三名の医師の専門領域は、いずれも心臓血管外科である。また、文部省において、奈良県立医科大学に確認したところ、同大学第三外科学の庭屋医師は組織凍結保存ネットワークのコーディネーターから連絡を受けて関西医科大学に行き待機したが、当該摘出には参加していない。

三のBについて

 厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、当該摘出に当たって関西医科大学の千代医師から高本医師に対して摘出は腎臓の周囲の血管にとどめる旨の指示があり、同医師は、その指示の範囲内において腎臓摘出に伴う血管摘出に関する遺族の承諾があるものと認識し、遺族が千代医師に提出した臓器・組織提供承諾書に基づいて当該承諾があることの確認は行わなかったとの回答があったところである。

三のCについて

 厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、御指摘の血管摘出は腎臓移植に使用されるための腎臓の摘出に伴うものであり、当該腎臓摘出についての感謝状が遺族に贈られるので別途の感謝状を贈る必要はないと考えたためであるとの回答があったところである。

三のDについて

 厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、当該摘出において摘出した血管の部位及びその長さは、腎動脈分岐部下方腹部大動脈及び腎静脈分岐部下方下大静脈それぞれ約二センチメートルずつであり、これらの血管以外に当該摘出において摘出した組織や臓器はないとの回答があったところである。

四について

 厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、組織凍結保存ネットワークの活動として行う血管の摘出については、腎臓とは別の部位から行うことが通常であり、腎臓摘出終了後に行うこととしていたため、御指摘の事例においても腎臓摘出終了後に血管摘出を行ったものであるとの回答があったところである。

五の@について

 本年二月二十八日現在センターに保存されている臓器及び組織は、三の@及びAについてで述べた血管以外には、御指摘の二十四件及びすい臓ランゲルハンス氏島二件の合計二十六件である。

五のA及びBについて

 五の@についてで述べたセンターで保存している二十六件の組織に関する提供承諾書等の有無、摘出承諾の有無及び臓器本体とは別個の組織部分の摘出の承諾の有無は、それぞれ表のとおりである。また、遺族の当該組織の保存の認識の有無については、記録がなく確認できない。
組織に関する提供承諾書等の有無、摘出承諾の有無及び臓器本体とは別個の組織部分の摘出の承諾の有無

五のCについて

 高本医師等が同種組織移植の臨床応用のための研究を目的として凍結保存を行っていると承知している。

五のDについて

 組織の凍結保存技術は研究段階であり、お尋ねの保存可能な期間については、現在必ずしも明確な結論が得られていないと承知している。なお、センターの医師が当該研究に関して組織の摘出の同意を得る際に遺族に対し、理論上は半永久的に保存可能と説明したことがあると承知している。

五のEについて

 お尋ねの遺族に対する事後報告については、一般的には、当該組織の摘出を行った医師の判断により行われるものであるが、厚生省において、センターの高本医師に報告を求めたところ、センターにおいて同医師が凍結保存された組織を使用した場合については、遺族に対する事後報告を行っているとの回答があったところである。

五のFについて

 組織移植は、組織の修復困難な損傷等に対して有効な治療方法であり、凍結保存された組織の移植は、人工的に製造されたものに比べて、生着率等において優れているものと承知している。
 また、組織を摘出する際には、遺族に対して組織移植の意義等について十分に説明した上で承諾を得るとともに、組織の摘出及びその凍結保存に当たっては礼意を失わないよう特に注意することが必要と考えている。

六について

 御指摘の血管の摘出及び凍結保存については、摘出された血管は腎臓の周囲の血管であったが、当該摘出は腎臓を摘出した医師とは別の医師が行ったものであること、腎臓を摘出した医師は当該血管の摘出及び凍結保存について、血管を摘出した医師との間で指示、照会等の関わりが認められないこと等の現時点で把握した諸事情に照らすと、当該血管が当該腎臓移植に使用されるために摘出されたものと考えることは困難であり、角膜及び腎臓の移植に関する法律(昭和五十四年法律第六十三号)第七条の適用はないものと考えている。

七について

 御指摘のいわゆる「US腎事件」については、平成七年九月に社団法人日本腎臓移植ネットワークにおいて調査結果がまとあられたと承知しいてるが、同ネットワークに対しては、この調査結果を先般同ネットワークに設置された審査委員会に説明して審査の参考とするよう指導してまいりたい。
 御指摘の血管の摘出事例は、平成五年十一月に行われたものであり、社団法人日本腎臓移植ネットワークの発足以前の事例であること、また、当該血管摘出が腎臓移植に使用されるために行われたものと考えることは困難であることから、当該審査委員会の審査の対象となるものではないと考えているが、当該事例が審査の参考となるよう同ネットワークに対して情報提供してまいりたい。

八について

 医療従事者が高い倫理観を持つことは重要であり、このため、従来から医療従事者の資格試験及び養成に関して、「医の倫理」について、医師等の国家試験の出題基準に含めること、医師の卒後臨床研修の目標として当該研修を行う機関に対して明示すること、各種の医療従事者の養成施設の指定基準においてカリキュラムに盛り込むこととすること等の施策を講じているところであり、今後ともこうした施策の充実に努めてまいりたい。また、医療従事者を養成する大学及び養成施設の入学者選抜において、面接の実施及びその内容の充実等の自主的な取組を行っているものが多いと承知しているが、今後、これらの大学及び養成施設に対してこうした取組をより一層進めるよう働きかけてまいりたい。
 さらに、移植医療におけるコーディネーターについては、社団法人日本腎臓移植ネットワークにおいて、腎臓移植のコーディネーターを対象として、移植医療に関する医学的な基礎知識、家族への説明等の実践方法等幅広い研修が行われているところであり、今後、これらの機会を活用して移植医療に関する倫理について注意を喚起し、適正な移植医療の確保等に努めてまいりたい。





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