質問本文情報
平成九年四月二十三日提出質問第一八号
中国海洋調査船の我が国領海侵犯等に関する質問主意書
中国海洋調査船の我が国領海侵犯等に関する質問主意書
我が国は、平成八年六月二十日、国際海洋法条約を批准して、排他的経済水域を設定したものであるが、同年九月二日に中国の海洋調査船海洋四号が、我が国の排他的経済水域で無許可に海洋調査したのみならず、尖閣諸島の大正島付近の我が国領海に侵入した。その中国の海洋調査船は、我が国の海上保安庁の巡視船からの交信にたいし、ここは中国の海である旨応答し平然と航行したということである。
当職は、この事実と同年十月七日に中国人四人が尖閣諸島魚釣島に上陸し中国の領土であることをアピールしたことをふまえ、平成九年三月二十一日の衆議院内閣委員会において、梶山官房長官から、「我が国の領土と主権を完全に確保することは国家の大使命である」旨の主権国家であれば当然の確認をえたうえで、再び中国の海洋調査船が、我が国の尖閣諸島周辺の領海に侵入する事態が生じたときは、主権国家として如何に対処されるかを質したところ、同長官から「民官を問わず適切な方法で排除する」との言明がなされたのである。
尖閣諸島の海域での対処方については、内閣の外政審議室が総合調整しているものであり、したがって、この官房長官の言明は、内閣の意思であると思料される。この故に、平成九年四月十三日に衆議院法務委員会で、当職が同様の質問を法務大臣に行ったときにも、法務大臣から「排除する」との官房長官と同様の答弁を得たのである。
しかるに、平成九年四月十六日午前九時四十分、我が国の航空機は、宮古島沖東南東約一〇〇海里の我が国の排他的経済水域において、中国海洋調査船「海洋十三号」(以下、海洋十三号という)が、無許可で海洋調査を実施しているのを確認した。直ちに巡視船が海洋十三号に接近し、無線で問い掛けてたが同船は応答せず、調査の中止要求にも応答しなかった。さらに、海洋十三号は、巡視船の制止を無視して、本書添付の「海洋十三号」行動海域図に示すとおり航行し、同二十日午後九時二十分大正島北東の北緯二十六度東経一二四度四六分の地点で我が国領海内に侵入したうえ、領海内を真西に航行し同日午後十一時十二分に領海を脱し、その後進路を真南の石垣島方向に転じ、さらに二十一日十二時ころ石垣島と尖閣諸島の中間点付近から真東に進路を転じて二十三日現在宮古島北東海域を調査しつつ航行している。以上の、海洋十三号の航行は、全て我が国の排他的経済水域と領海内で敢行されているものである。そして、前記領海侵犯の間、巡視船からの交信にたいし、海洋十三号は、「本船は中国の大陸棚を航走しており、なんら不法ではない」と応答してきている。
よって、以上の事実を前提にして、次のとおり質問する。速やかに回答されたい。
二 この海洋十三号の行動は、我が国の主権に対する侵犯であると当職は認識するが、政府は、如何に認識しているのか、回答されたい。
三 香港の四月十三日付「明報」の報道によると、本年五月十八日に昨年になされたとおり、外国人が、尖閣諸島に上陸しそこを中国の領土と宣言する計画がなされているという。当職は、この報道は信憑性がたかく、昨年為されたごとく本年も計画され実行に移されると思料している。そこで、この外国人による我が国の領土と領海を公然否定した上での領海侵犯と不法上陸に、政府として如何に対処する所存か回答されたい。
四 当職は、尖閣諸島周辺において、現在政府が海洋十三号にたいして無為であるごとく、中国領土である旨公然主張して領土領海を侵犯する外国人にたいし何ら法的措置を決断せず無為であるならば、我が国は、同諸島周辺における我が国の国家としての主権を放棄したことになると警告するものであるが、政府はこの点いかに認識するのか、回答されたい。
五 政府が仮に外国人の領土領海侵犯にたいして、昨年の如く無為であるならば、我が国国民は、刑事訴訟法上現行犯逮捕の権限を有するものであり、国民の中にこの権限を行使して政府に替わって当該外国人を逮捕すべく尖閣諸島に渡る国民が現れても不思議ではない。政府は、この事態を容認し国民の現行犯逮捕に期待するのか否か。回答されたい。
右質問する。
添付資料 中国海洋調査船「海洋十三号」行動海域図と題する図面