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平成九年十月三十一日提出
質問第九号

シベリア抑留者に関する質問主意書

提出者  相沢英之




シベリア抑留者に関する質問主意書


 抑留者に関連する政府解釈が曖昧であり、懸案解決に支障がある。速やかに政府の統一見解を示す必要がある。よって、次の事項について質問する。

一 詔書渙発後敵の勢力下に入った者の身分に関する質問

 大本営の終戦当時の命令文の中に「詔書渙発以後敵軍の勢力下に入りたる帝国陸軍軍人軍属を俘虜と認めず」とある。海軍にも同様の命令があった。
 旧憲法下では大本営命令は天皇の命令であり、法令に相当する。よって日本では、八月十五日以降敵軍の勢力下に入った者は捕虜ではない。しかるに過去の国会における政府答弁は曖昧である。この際明確にしてもらいたい。

 国内的には捕虜でないことは前述のとおりと存ずるが、対外的にはどうか。
 ポツダム宣言は、日本が受け入れたことによって成立した当事国間の国際条約である。条約は、当事国間では他の国際条約に優先して適用される。したがって、シベリア抑留者もこの宣言の9項に照らして、対外的にも捕虜ではないと考える。
 ポツダム宣言を受け入れて終戦となる以前に敵の勢力下に入った者は、終戦までの間は「捕虜」であるが、ポツダム宣言受け入れ後は捕虜ではない。ソ連以外の軍隊の勢力下に入った者は、捕虜の扱いを受けていない。
 ソ連抑留者だけが、ソ連側に捕虜と扱われるいわれはないと考えるが、政府の明確なる見解を伺いたい。

 ソ連の言うごとく、終戦は降伏文書に調印したときだとか、平和条約が締結されるときだとかいうことを肯定するのかどうか。
 もしソ連の軍隊の勢力下に入った者を捕虜というなら、何時までを捕虜というのか、降伏文書に調印するまでなのか、調印後もずっと捕虜なのかについて、明確な政府の統一見解を示していただきたい。

二 日ソ共同宣言の解釈に関する質問

 千九百五十六年の日ソ共同宣言の六項に、次のような条項がある。
  ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。
  日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。

 この共同宣言は、特に日ソ両国の国会批准を経たもので、条約に相当する。条約の締結は国家権力の行使であり、私権を制限できる。この条項から、国家権力により個人の権利を放棄していることは明白である。どの国もそう理解するであろう。

 しかるに、政府は我々に対し「国といえども個人の権利まで放棄する権限はない、だから個人の請求権はある、ただ外交保護権を放棄しているので、国として個人に協力できない」と国会において答えてきたが、国内法でも、土地収用法のごとく公益のためなら国家権力により個人の権利を制限できる法律がある。

 条約は国内法に優先する。私権は制限される。この共同宣言も同様であると考えられる。この際、対外的にも通用する政府の明確なる回答をお願いしたい。

 右質問する。





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