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平成十年二月三日提出
質問第五号

自動車事故にかかる損害賠償の算定基準等に関する質問主意書

提出者  (注)井英勝




自動車事故にかかる損害賠償の算定基準等に関する質問主意書


一 年間一万人近い死者、九十万人を超える負傷者を出し続けている自動車交通事故は、全体では阪神・淡路大震災をもはるかに上回る大惨事が年々繰り返されているということであり、現代における黒死病ともいうべき社会的悲劇の根源である。しかもそれは避けることのできない天災ではなく、人間社会の営みから生じた人災であり、運転マナーの向上、運転者の過労の防止、人車分離の道路改善、自動車の抜本的改良、歩行者の立場に立った交通ルールの強化、自動車に頼らずとも済む大量輸送交通機関の整備など、あらゆる手だてを尽くせば限りなくゼロに近づけ得るものである。政府は自動車事故を撲滅する総合的な計画を持っているのか、死者・負傷者の削減目標数値を設定しているのか、まず伺いたい。
二 自動車事故による被害者、特に歩行者は、ほとんどの場合無過失であり、なんら自己責任がないにもかかわらず「走る凶器」によって人生そのものを奪われている。人権侵害の最たるものである。自動車事故被害者に対する補償を手厚くし、少なくとも事故被害者とそれに生計を依存する家族の経済的不安をなくすことは加害者の最低限の義務であり、政治はそれを確実なものにする責務を負わなければならない。政府の考え方はどうか。
三 「被害者の保護を図」ることを目的とする自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責」という。)は、二で述べた政治の責務を果たすための制度だと考える。しかし実態は、残念ながら被害者及び家族の経済的不安を取り除くものとはなっていない。特に問題なのは、被害者が交通事故にあったことにより失う将来の収入の補填、いわゆる逸失利益の補填に関わる算定基準である。
  自賠責では運輸省通達による算定基準で「新ホフマン方式」なるものを採用し、補償金を一括払いするのだからそこから生じる金利を見込まなければならないとして、年利五%で運用されるものと仮定した「中間利子控除」を行っている。利子を見込むこと自体は妥当なのだが、許し難いのは「五%」という高利で計算していることである。これにより、本来ならばあと二十年働くことができる被害者に対して、〔年収(後遺障害の場合は労働能力喪失率を乗じ、死亡の場合は生活費を控除する。)×二〇〕の補償がなされるべきところ、実際には〔年収(同)×一三・六一六〕の補償しかなされていない。十八歳で就労可能年数四十九年の被害者の場合は〔年収(同)×二四・四一六〕と実に働ける年数の半分以下しか補償されないというのが実態である。労働者の場合、たたかいによってほぼ毎年賃上げされることが確実であるにもかかわらずそれが全く無視されていることも重大だが、その点はおくとして、被害者はいったいどうすれば補償金を年利五%で運用できるのか、示していただきたい。
四 政府の長期にわたる超低金利政策のもとで、現在の市中金利は三年もの大口定期預金でも年利〇・五%となっており、国民生活を脅かしている。交通事故被害者の暮らしを守るためにも金利政策の変更を求めるが、それがなされない間であっても自賠責算定基準の「五%」を現実に合致したものに変えるだけで大幅に改善することができる。「五%」の根拠については民法の法定利息によると説明されているが、民法の「五%」は利率の定めのない民事契約に適用されるだけであって強行規定ではない。自賠責の算定上は政府・運輸省が「被害者の保護を図」る見地で数値を定めればよいのである。自賠責の九四年度支払実績は一〇五万四五九八件(内死亡一万一四三七件)、八七九二億四九〇〇万円(内死亡二六四四億三一〇〇万円)であり、これだけの人が現実に合わない不当な算定基準によって巨額の損失を被っているのである。政府は一刻も早く事態を是正すべきであり、運輸省通達による現行の算定基準を直ちに改められたい。
五 自賠責に見習って民間の自動車事故損害賠償保険(いわゆる任意保険)もすべて「五%」を算定基準にしている。任意保険のうち対人賠償の九四年度実績は三三万四〇八二件、三九七五億四六〇〇万円であり、自賠責同様、多くの人が不当な算定基準によって損失を被っている。算定基準に用いる年利について実態に合わせた是正を行うよう損害保険業界を指導すべきではないか。
自動車事故被害者が安心できる答弁を求める。

 右質問する。





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