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平成十年二月十七日提出
質問第一〇号

死刑の必要性、情報公開などに関する再質問主意書

提出者  保坂展人




死刑の必要性、情報公開などに関する再質問主意書


 一月十六日提出の「死刑の必要性、情報公開などに関する質問」に対する二月十三日付け政府答弁書には明らかに実例、根拠を欠き、合理性に乏しい不十分な答弁が散見されたため、以下再質問する。少なくとも二月三日提出の「大蔵省不祥事と疑惑解明に関する質問」に対する二月十三日付け政府答弁書と同程度の具体性、説明力などを持った答弁を求める。また、前回質問提出後にも米国テキサス州でのカーラ・タッカー死刑確定者の処刑が世界的な話題となり、同時に米国と日本の死刑をめぐる情報公開の落差も大きく取り上げられたほか、オウム真理教事件の裁判では、地下鉄サリン事件で殺害された被害者の遺族が被告に死刑を求めない証言をするなど、死刑をめぐる議論の高まりを踏まえ、新たな質問項目も付加した。

一 死刑の必要性について
 (1) 二月十三日付け政府答弁書(以下「答弁書」とする。)の「一の1について」には「国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないと考えており」とあるが、国民世論の多数がそう考えていることを示す調査結果、統計はあるのか。
 (2) 法務省が死刑の是非について、世論の動向を調査したことはあるか。調査したとすればその結果、調査していない場合はその理由をそれぞれ明らかにされたい。また、今後世論調査を実施する予定はあるか。
 (3) 答弁書「一の2について」に「死刑が乱用された経験がある場合」や「特定の罪について死刑のみが定められていて科刑における柔軟性が十分でなかった場合」と記されているが、具体的にどこの国のいかなるケースを指しているのか、明らかにされたい。
 (4) 答弁書「一の2について」には、死刑制度の存廃は「基本的に各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、それぞれの国において独自に決定すべきものと考えている」とあるが、政府は死刑存廃をめぐる諸外国の動向などは参考にしないということか。
 (5) 日本が批准している国際人権規約・市民的及び政治的権利に関する国際規約第六条第一項には「すべての人間は、生命に対する固有の権利を有する。この権利は、法律によって保護される。何人も、恣意的にその生命を奪われない」とあり、同条第六項には「この条のいかなる規定も、この規約の締約国により死刑の廃止を遅らせ又は妨げるために援用されてはならない」とあるが、政府はこの条項の趣旨をどのように考えているか。
 (6) 答弁書「一の3について」には「被害者の遺族の感情は、各遺族それぞれに異なるものと考えている」とあり、死刑が刑罰として必要、相当な理由(「一の1について」)にも遺族感情の慰謝が明記されていないが、政府は遺族感情の慰謝を死刑が必要、相当な理由と考えていないのか。そうだとすれば、検察が裁判で死刑を求刑する場合、遺族の「被告を死刑にしてほしい」という供述調書を証拠請求したり、遺族に同様の証言を求めたりする理由を述べられたい。
 (7) 地下鉄サリン事件の実行犯の一人として、殺人、殺人未遂罪などで起訴された林郁夫被告の一月二十三日の公判で、同事件で亡くなった営団地下鉄職員の妻が「事件当時は犯人が憎い、死刑を思っていた。しかし、その後法廷を傍聴したり、被告から謝罪の手紙をもらったりして、被告の心の弱さにも気付いた。本当に罪を悔いているのならば、一生刑務所で罪を償ってほしい」と証言したが、このように遺族が被告に死刑を求めないケースがあることをどのように考えるか。
二 死刑の情報公開について
 (1) 答弁書「二の2について」には「国連加盟各国の状況については、その詳細は把握していない」とあるが、詳細に把握する必要はないと考えているのか。それとも必要はあるが、把握する努力を怠っているのか。死刑の是非は国際社会で重大な関心を集めている問題とは認識していないのか。諸外国の状況を「詳細に把握していない」のに、死刑に関する情報公開を促した一九八九年十二月の国連総会決議ではどのようにして賛否を決めたのか。
 (2) 答弁書「二の3及び4について」によれば、一九九七年十二月十二日提出の「死刑の執行などに関する質問主意書」に対する本年一月十三日付け政府答弁書(以下「前回答弁書」とする。)に誤りがあったことを認めているが、答弁を誤った理由は何か。
 (3) 答弁書「二の3及び4について」には、死刑確定の未執行者数について、年度途中でも回答していたのを十二月末日現在の回答のみにしたのは「各種質問等に対し統一的に対応するため」とあるが、統一的対応を議員側が要望したのか。議員側が要望していないとすれば、答弁書「二の1について」記載の「個人の生活の平穏等の私的な権利利益を害し、又は公務の適正な遂行等の公共の利益を損なうおそれ」が新たに生じたのか。生じたとすれば、具体的に明らかにされたい。
 (4) 答弁書「二の5について」には、法務統計月報に月別の死刑執行件数を記載しなくなったのは
 「業務上の要請が無くなっていると考え」とあるが、それ以前に存在した「業務上の要請」を具体的に明らかにされたい。また、それがなくなったと考えた理由を述べられたい。
 (5) 米国時間二月三日午後のタッカー死刑確定者処刑では事前に本人、関係者、被害者の遺族らに執行が通知され、処刑には代表取材なども認められたが、情報公開をめぐる日本との大きな相違をどう考えるか。
 (6) 日本で米国程度の情報公開を進めると、国内世論に変化があると考えるか。
三 死刑確定者の「心情の安定」について
 (1) 答弁書「三の1について」によると、死刑確定者は「ささいなことでも大きい精神的動揺と苦悩に陥りやすいことが十分推測される」として、「心情の安定」に対する配慮は監獄法の要請だとしているが、死刑確定者が監獄側に対し、面会、信書の発受、物品の授受などをめぐって精神的損害の賠償を求める訴訟を起こすなどしたことはないのか。
 (2) 答弁書「三の3について」によれば、死刑執行の事実を公表することによって、執行された確定者の遺族の感情やほかの死刑確定者の「心情の安定」に影響を与えた例は把握していないのに、前回答弁書では、ほかの死刑確定者の「心情の安定」を損なうことなどを死刑に関する情報公開を進めない理由として挙げている。実例も知らないのに、いかなる根拠で「心情の安定」を損なうと判断するのか。
 (3) 答弁書「三の4について」記載の根拠法令に基づく実際の運用は、すべて各施設長の裁量に任されているのか、それとも通達などによって運用されているのか。通達があれば、そのすべてについて、通達の年月日、内容、出された理由を明らかにされたい。
四 恩赦について
 (1) 答弁書「四について」によれば、恩赦を不相当とする決議の通知は、本人が在監中の場合は口頭で直接本人に通知されているようであるが、結果のみが通知されるのか、それとも不相当の理由も併せて通知されるのか。理由を通知していないとすれば、その理由、法的根拠も明らかにされたい。
 (2) 代理人により恩赦の出願がなされた場合でも、その結果は「本人に対して行われている」とあるが、代理人に通知しないのはなぜか。  (3) 中央更生保護審査会では、死刑確定者の恩赦出願に対し、いかなる資料に基づき、どのような審議を行うのか。審議手続きを定める法令、規則は何か。また、審議手続きで、出願者またはその代理人が意見を述べたり、資料を提出したりする機会が保障されているか。
 (4) 出願者が恩赦を不相当とする決議に対し、行政不服審査、行政訴訟その他、異議若しくは再考を求める手段はあるか。
 (5) 受刑者あるいは死刑確定者の近親者に恩赦の出願を認めているか。認めていないとすれば、その法的根拠を明らかにされたい。
 (6) 受刑者や死刑確定者の近親者などが請願法第三条第一項に基づき、恩赦を求める請願書を提出した場合、所管官公署はどこになるのか。また、受理後の手続きはどうなるのか。恩赦法施行規則による恩赦の出願とどのように異なるのか。
 (7) 国際人権規約・市民的及び政治的権利に関する国際規約第六条は「死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦又は減刑を求める権利を有する。死刑に対する大赦、特赦又は減刑は、すべての場合に与えることができる」として、死刑確定者の人権として恩赦を受ける権利を保障しなければならないと規定しているが、日本の恩赦制度はこの規定に適うものと考えるか。
 (8) 前回答弁書別表第二によると、死刑確定者の恩赦出願状況は一九五五年から六四年までの十年間が百四十一件だったのに対し、六五年から七四年までは二十二件、七五年から八四年までは八件、八五年から九四年までは四件と大きく減少しているが、その原因をどのように考えるか。また、七六年以降は恩赦が全く認められていないが、その理由を明らかにされたい。
五 死刑をめぐる国際状況、国連への報告について
 (1) 答弁書「五の1について」には「国際連合加盟国における死刑に関する世論の動向については、十分に把握しているわけではない。」とあるが、十分に各国の状況も把握していないのに、答弁書「一の2について」記載の「国際的には、様々な考え方があり」ということがなぜ分かるのか。不十分な根拠に基づく不正確な認識ではないのか。
 (2) 答弁書「五の2について」によれば、一九九四年の第四十九回国連総会における死刑決議案に対し、日本政府が死刑の存廃は基本的に各国独自の問題と主張し、反対票を投じたことを国会に報告していないとされるが、報告しなかった理由を明らかにされたい。また、日本政府の各国独自の問題との主張に対し、各加盟国からいかなる意見が出されたかを明らかにされたい。
 (3) 答弁書「五の3について」記載のように、死刑の存廃は事件の国際捜査にまで影響しているが、それでも各国独自の問題であると言い通せるのか。
 (4) 存廃の是非も含めて死刑をめぐる問題、議論は、人権をめぐる問題、議論とは考えないか。
 (5) 一月に来日した国連人権高等弁務官メアリー・ロビンソン氏が日本政府に要望した事項は何か。
六 死刑執行の起案、決裁及び再審について
 (1) 答弁書「六の1について」に記載された「判決及び確定記録の内容を十分精査せしめ」というのはいかなる目的でなされるのか。もし、精査の段階で重大な誤りが発見された場合、どうするのか。
 (2) 捜査や裁判に誤りはないと考えるか。
 (3) 戦後、死刑確定者が再審で無罪となったケースが四件あるとされるが、それぞれのケースについて、政府はなぜこうした事態に立ち至ったと考えるか、明らかにされたい。
 (4) 死刑確定者を処刑した後、実は冤罪と判明した場合、国は処刑した故人やその遺族に対し何ができるのか。
 (5) 答弁書「六の4について」には「刑具については、絞罪器械図式(明治六年太政官布告第六十五号)に定められている」とあるが、現在使用されている刑具も図式と同じものと理解してよいか。
七 死刑の執行について
  NGOや報道機関によると、法務省は近く処刑してもその情報が伝わりにくい死刑確定者を一人ずつ選んで執行するとの情報が流されているが、事実か。

 右質問する。





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