衆議院

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平成十年八月十一日提出
質問第四号

参院選公示日の死刑執行に関する再質問主意書

提出者  保坂展人




参院選公示日の死刑執行に関する再質問主意書


 七月三十日付け「参院選公示日の死刑執行に関する質問主意書」(以下、前回主意書とする)に対して、八月七日付けの政府答弁書(以下、今回答弁書とする)が送付されたが、新聞やテレビで繰り返し報道された六月二十五日の死刑執行について「答弁を差し控えたい」としている。死刑執行にかかわる情報公開はこれまでも再三再四指摘してきたように、死刑の是非はともかくとして議論の基礎になるものであり、既に報道された事実の確認さえ拒むというのは、議論そのものの拒否に等しい。こうした姿勢を強く批判したい。
 参院選後に選出された小渕恵三総理は所信表明演説で「政治主導の政策実行」「開かれた行政」を強調し、新任の中村正三郎法務大臣は死刑執行について「隠すことはない」と明言している。それなのに、新内閣が初めて答弁する国会議員の質問主意書に対して、答弁拒否というのは、あまりにも整合性に欠ける無責任な姿勢ではないか。この点についても厳しく指摘する。
 答弁の拒否に伴い、今回答弁書は内容も不十分で、疑問点も数多くあるので、以下、再質問する。なお、死刑執行の報道や死刑執行に伴う税金の支出について、新たな質問も付け加えた。

一 死刑執行の事実確認について
 (1) 七月三十一日付け東京新聞夕刊によると、小渕内閣の中村法務大臣は初閣議後の記者会見で、死刑執行について「法にのっとってやるのだから隠すことはない」と発言した。参院選公示日の死刑執行があったかなかったかをただした前回主意書に対し、今回答弁書「一の(1)について」は「答弁を差し控えたい」と執行の有無を隠しているが、法にのっとらずに執行したのか。
 (2) 同夕刊によると、中村法務大臣は「日本は情報公開性が非常に低い。だから国民がどう判断していいか分からない。情報公開が徹底すれば行政改革の半分は成し遂げたと思っていい」とも発言しているが、情報公開を拒む今回の答弁は行政改革を成し遂げられないように画策する官僚が作成し、多忙な閣僚は見過ごしてしまったのか。
 (3) いわゆる「知る権利」について、政府はどのように考えているか。また、「知る権利」にかかわる最高裁及び下級審の各判例をどのように解釈し、その後の行政に反映させてきたか。
 (4) 行政の情報公開について、政府はどのように考えているか。また、情報公開法案を国会に提出した目的は何か。
 (5) 国会に提出された情報公開法案第一条は「この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする」とあるが、今回の答弁書のように新聞、テレビで繰り返し報道された事実について、説明を拒否するのは「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務」を全うしたことになるのか。「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進」なのか。
 (6) 小渕総理は八月七日の所信表明で「政治主導の下、責任の所在を明確にしながらスピーディーに政策を実行してまいります」と演説したが、既に新聞、テレビで繰り返し報道された死刑執行の事実を答弁しないのも「政治主導」なのか、それとも官僚主導で、多忙な閣僚は見過ごしたのか。
 (7) 同所信表明では「責任の所在を明確にしながら」とも述べているが、既に新聞、テレビで繰り返し報道された事実を明らかにしなくても「責任の所在」は明確になると考えるか。
 (8) 同所信表明では「国民に開かれた行政の実現を図ることも重要な課題」とも述べているが、今回の答弁書のように新聞、テレビで繰り返し報道された事実の確認さえ拒む政府の姿勢はそうした「重要な課題」を例示したのか。
 (9) 既に新聞、テレビで繰り返し報道された事実について、何ひとつ具体的に説明しない今回の答弁書と同所信表明が同じ日になされたのは、今後の政府のダブル・スタンダードを示唆したのか。
 (10) 死刑の執行をめぐり、重大な過失に基づく事故や執行にかかわる公務員による犯罪行為などがあった場合でも、今回の答弁書のように一切の説明を拒むのか。拒むとすれば、立法府はそうした過失や犯罪行為を再発させないため、どのようにして事実と責任の所在を確認するのか。立法府の責任追及を免れるため、一切の説明を拒否しているのか。
二 国政選挙について
 (1) 今回答弁書「二の(1)及び(2)について」によると、政府は国政選挙について「国権の最高機関である国会の構成員を決定する極めて重要な意義を有するもの」と考えているようだが、国権の最高機関である国会の構成員が国会法に基づき、現在の死刑制度について詳細な質問主意書を提出し、政府において答弁期間の延長を申し出て答弁を検討している最中、しかも国政選挙期間中に決してとりかえしのつかない死刑の執行はあり得るのか。
 (2) 今回答弁書「二の(6)について」によると、英国では「各閣僚が選挙期間中に意思決定を行う場合には、当該決定が取り消せない性質のものでないものに限られる」とあるが、同国がこうした制限を設けている趣旨をどのように考えるか。
 (3) 今回答弁書「二の(7)について」によると、米国で大統領や国会議員の選挙期間中、死刑が執行されたケースの有無は「承知していない」ということだが、それは調査せずに把握していないということか。それとも、答弁期間内では調査できなかったということか。もし、調査する気はあったが、期間内には不可能だったならば、あらためて調査の上、答弁されたい。
三 法務省の人事異動について
 (1) 過去の死刑執行において、直前の人事異動による関係当局者の交代で、ミスが発生したことはあるか。
 (2) 法務省の職員は勤務時間終了後、同省内でプライベートな時間を過ごすことがあるのか。
 (3) 一九九八年六月二十五日午後七時ごろ、法務省内で刑事局職員と面談したが、職員はプライベートな立場で面談したのか。そうであるならば、法務省の職員は国会議員との面談をどのように考えているのか。
 (4) 同日、法務省内では出先機関や関係機関の責任者を集めた会合後、酒食を伴う懇親会があったか。あったとすれば、その懇親会はいかなる会合に伴うもので、前記面談の相手となった職員はその懇親会に出席していたか。また、懇親会の会場費として、出席者は国庫にそれぞれいくら支払ったか。
 (5) これまでに死刑を執行した日に法務省内で酒食を伴う懇親会が開かれたことがあるか。また、執行にかかわった職員の慰労会を開いたことはあるか。
 (6) 凶悪事件の犯人だった可能性が大きい犯罪者とはいえ、国が死刑という刑罰によって人間を死亡させた日に所管官庁の庁舎内で酒食を伴う懇親会を開くことは適切と考えるか。ここで言う「懇親会」には、実際に死刑を執行した刑務官たちがやるせない気持ちから、特別手当の二万円を持ち寄るなどして開いた酒を飲む会は含まない。
四 衆院法務委員会での質疑について
 (1) 今回答弁書「四の(2)について」によれば、政府は「死刑に関する事項については、毎年、死刑執行者数、死刑確定者数等を統計等により可能な限り公表している。また、死刑の言渡しがなされた個々の事件の裁判の内容については、裁判公開の原則により公にされているところである」ので、国会の議論に不都合はないと考えているようだが、国政選挙期間中の死刑執行で、事故や犯罪が発生した場合、どうするのか。
 (2) 前記答弁では、だれが死刑になったかの情報公開は永久に必要ないと考えているようだが、なぜか。
 (3) 刑を執行された死刑確定者が引き起こしたとされる事件で、被害者となった人の遺族には、死刑執行の事実を伝えているのか。伝えていないとすれば、なぜか。また、東京都世田谷区で起きた片山隼君の交通事故をきっかけに、法務・検察当局は事務手続きを改め、被害者側に被疑者の処分内容などを伝えるようになったが、これまで伝えてこなかった理由は何か。
 (4) 刑を執行した死刑確定者が本当は無実だった可能性は全くないと言い切れるか。
 (5) 死刑確定者の無実を示す証拠が刑の執行後に見つかり、死刑確定者の遺族が名誉回復と国家賠償のために再審と民事訴訟を起こした場合、政府はその死刑確定者の刑を執行したことを隠し続けるのか。
 (6) 刑を執行された死刑確定者に身寄りがない場合、法務・検察当局者と市区町村の戸籍係以外、死刑確定者が死亡した事実を確認できないのか。
 (7) 相続人のいない死刑確定者が所有する財産を公共施設などに寄付すると遺言し、刑を執行された場合、その遺言は守られるのか。
 (8) 刑を執行された死刑確定者が自らの処刑を公表してくれるように遺言した場合、その遺言は守られるか。
五 質問主意書の答弁期間などについて
 (1) 前回主意書で、六月十七日提出の「死刑制度などに関する質問主意書」に対する答弁期間の延長について、本当の理由は六月二十五日の死刑執行の準備作業で忙しかったのではないかとの趣旨をただしたところ、今回答弁書「五の(1)について」では、「指摘のような理由で答弁を先延ばしにしたものではない」と答えているが、この質問だけ具体的な死刑執行に関する事項にかかわる答弁をした理由は何か。
 (2) 前回主意書では、質問主意書の答弁期間中の参院選公示日に死刑が執行されたと報道されたことや法務省の原田明夫前刑事局長(現事務次官)らを信用するとともに誠意ある対応を期待してきたことが大きく裏切られた可能性が極めて大きかったことから、法定の期間内に答弁を求めたが、実際のところ答弁のための準備時間は足りなかったか。
 (3) 今回答弁書の十四項目中、「差し控えたい」が八項目を占めたが、答弁期間が短すぎたか。
六 死刑執行の報道について
 (1) 行政にかかわる重要な事項が国内のほとんどすべての新聞、テレビで同じように報道された場合、政府は報道内容を事実と信じる国民はどの程度いると考えるか。
 (2) 行政にかかわる重要な事項が国内のほとんどすべての新聞、テレビで同じように報道されたが、政府がその報道内容を事実かどうか明らかにしない場合、国民の報道に対する信用が損なわれても構わないと考えているのか。
 (3) 行政にかかわる重要な事項が国内のほとんどすべての新聞、テレビで同じように報道され、国会議員から事実かどうか質問されたケースで、政府が答弁を拒んだことはこれまでにあるか。あるとすれば、その事例と理由、根拠法令などを明らかにされたい。
 (4) 日本の行政にかかわる重要事項が国外に報道されたが、政府がその報道内容を事実かどうか明らかにしない場合、国際的にどのような影響を与えると考えるか。
 (5) 日本における死刑の執行が報道され、外国からそれが事実かどうか確認を求められた場合も今回答弁書同様、答えないのか。死刑廃止国と存置国でその対応には、違いが生じるのか。
七 死刑執行に伴う税金の支出について
 (1) 納税者は行政による税金の支出内容をどの程度まで知る権利があると政府は考えているか。
 (2) 税金の支出を伴う死刑の執行で、納税者にだれの執行に税金を支出したか、適正に支出されたかなどを知らせなくてもいいと考える理由は何か。自分たちに誤りはないと考えているからか。
 (3) 法務省は組織の判断に決して誤りはないと考えているか。考えているならば、その根拠を示されたい。

 右質問する。



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