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答弁本文情報

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平成十年九月十一日受領
答弁第四号

  内閣衆質一四三第四号
    平成十年九月十一日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出参院選公示日の死刑執行に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出参院選公示日の死刑執行に関する再質問に対する答弁書



一の(1)について

 個々具体的な死刑の執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。
 なお、御指摘の報道があったことは承知しているが、会見の際、法務大臣は個々具体的な執行の事実については言えない旨発言しているところであって、「個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。」とする御指摘の答弁書の内容と矛盾するものではない。
 また、一般論として申し上げれば、死刑の執行については、法令に従い適正に行っているところである。

一の(2)について

 御指摘の答弁書については、法務大臣の決裁を了した後、閣議に付議し、その決定を得ている。

一の(3)について

 いわゆる「知る権利」の概念には多くの理解の仕方があるのが現状であると認識しているところ、最高裁判所の判例においては、「知る権利」が表現の自由を定めた憲法第二十一条から導き出されるものとして説明されることがあり、それは、国民が様々な情報等に接し、これを摂取する自由、すなわち国家によって侵害されてはならない自由権として言及されているものと承知している。政府としては、この権利に言及した最高裁判所の判例の趣旨を尊重しつつ行政を運営してきたものである。

一の(4)について

 行政の情報公開は、国民に開かれた信頼される行政を実現するために重要な課題であると認識している。
 また、御指摘の「行政機関の保有する情報の公開に関する法律案」(以下「情報公開法案」という。)は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的としている。

一の(5)について

 情報公開法案においても、一定の情報を除く「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」等は、不開示情報とされているところであり、個々具体的な死刑の執行に関する事項につき答弁を差し控えることは、情報公開法案の趣旨に反するものではないと考えている。

一の(6)及び(7)について

 御指摘の内閣総理大臣の所信表明演説は、「今日、わが国は、急速な少子高齢化、情報化、国際化などが進展する中で、大きな変革期に直面しております。国民の間に、わが国経済・社会の将来に対する不安感が生まれています。政治は、国民の不安感を払拭し、国民に夢と希望を与え、そして国民から信頼されるものでなければなりません。私は、この難局を切り拓き豊かで安心できる社会を築き上げるため、政治主導の下、責任の所在を明確にしながらスピーディーに政策を実行してまいります。」というものであり、死刑に関する情報公開の在り方について言及したものではない。したがって、右の内閣総理大臣の所信表明演説と個々具体的な死刑の執行に関する事項につき答弁を差し控えることとは関係がないものと考えている。

一の(8)について

 内閣総理大臣は、御指摘の部分に続いて「継続審議となっている情報公開法案について、速やかな成立にご協力をお願いいたします。」と述べているところであり、御指摘の部分は情報公開法案に関連して言及したものである。一の(5)についてでお答えしたとおり、個々具体的な死刑の執行に関する事項につき答弁を差し控えることは、情報公開法案の趣旨に反するものではないと考えている。

一の(9)について

 御指摘の答弁書の提出と内閣総理大臣の所信表明演説とが同じ日になされたことについては、特段の理由はない。

一の(10)について

 仮定の御質問には、答弁を差し控えたい。
 なお、一般論として申し上げれば、死刑の執行については、法令に従い適正に行っているところである。

二の(1)について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。
 なお、一般論として申し上げれば、憲法第七十三条第一号は、法律を誠実に執行することを内閣の事務として定めており、国政選挙期間中であると否とを問わず、また、質問主意書に対する答弁を検討中であると否とを問わず、政府としては、国会によって制定された法律を誠実に執行しなければならないと考えている。

二の(2)について

 英国が、選挙期間中に各閣僚が意思決定を行う場合に、慣習上、当該決定が取り消せない性質のものでないものに限っているのは、民意の反映の観点から、新規政策や重要案件の決定は選挙後に行うとの趣旨だと理解している。

二の(3)について

 御質問の点について今回調査し、把握し得た範囲でお答えすると、次のとおりである。
 我が国と米国の選挙制度は異なっており、米国の大統領選挙や上下両院議員選挙の期間とは何かが明らかではないが、大統領選挙について、政党から指名を受けた各党の大統領候補者が指名受諾演説を行ってから本選挙が行われるまでを選挙期間とした場合、例えば、千九百九十六年においては、民主、共和、改革各政党の大統領候補者がすべて指名受諾演説を終えた八月二十九日から大統領選挙人を選出するいわゆる本選挙が行われる前日の十一月四日までの間、サウスカロライナ州外四州で合計六件の死刑が執行されている。
 また、上下両院議員選挙について、予備選挙により各党の候補者が選出されてから本選挙が行われるまでを選挙期間とした場合、州によって日程は異なるが、例えば、千九百九十六年においては、フロリダ州において各党の予備選挙が行われる十月一日から本選挙が行われる前日の十一月十一日までの間、同州で一件の死刑が執行されている。

三の(1)について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。
 なお、一般論として申し上げれば、死刑の執行については、法令に従い適正に行っているところである。

三の(2)について

 勤務時間終了後の職員のプライバシーにかかわる事項については、お答えする立場にはない。

三の(3)について

 法務省職員は、職務として保坂展人衆議院議員に面会したものである。

三の(4)について

 御質問のような懇親会は、開かれていない。

三の(5)及び(6)について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁を差し控えたい。
 なお、一般論として申し上げれば、勤務時間終了後の職員のプライバシーにかかわる事項については、お答えする立場にはない。

四の(1)について

 仮定の御質問には、答弁を差し控えたい。

四の(2)について

 国家の刑罰権の作用は、本来、刑の執行そのものに限られるのであって、それを超えて、国家機関が刑の執行の事実を殊更に公表して、刑の執行を受けた者やその関係者に、刑の執行そのものを超えた不利益や精神的苦痛を与えることは相当でないと考えている。このような考え方に基づき、個々具体的な死刑執行の事実を公表することについては、死刑を執行された者の遺族の感情、他の死刑確定者の心情の安定等に配慮し、答弁を差し控えてきたところであり、今後ともその公表を差し控えるのが相当であると考えている。

四の(3)について

 被害者の遺族に死刑執行の事実を伝えることは、その精神的平穏を乱すおそれがある上、そこから死刑執行の事実が公になれば、死刑を執行された者の遺族の感情、他の死刑確定者の心情の安定等に影響を及ぼすこととなるので、被害者の遺族に対しても死刑執行の事実を伝えていない。
 また、現在多くの検察庁においていわゆる被害者等通知制度を実施しているが、制度実施前においても、検察官等が相当と認めた場合には、処分結果等を被害者等に通知してきたところである。

四の(4)について

 我が国においては、令状主義及び厳格な証拠法則が採用され、三審制が保障されるなど、捜査公判を通じて慎重な手続により有罪が確定されている上、再審制度が保障されており、有罪を認定することについては、適正な判断がなされているものと考えている。加えて、死刑は、その言渡しを受けた者の生命を断つ極刑であり、一度執行されれば回復し難いこととなるものであるから、死刑の執行停止、再審及び非常上告の事由の有無等について慎重に検討するために、判決及び確定記録の内容を十分精査せしめているので、死刑を執行した者の中には誤判による無実の者が含まれていることはないものと確信しているものである。

四の(5)について

 仮定の御質問には、答弁を差し控えたい。
 なお、一般論として申し上げれば、検察、法務当局は、再審請求事件及び国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)に基づく民事訴訟事件に対しては、法令に従い適切に対処することとなる。

四の(6)について

 四の(3)についてでお答えした理由から、執行を受けた者の親族を除いては、その執行の事実は明らかにしていない。

四の(7)について

 遺言は、法律上有効なものである限り、遺言者の死亡の時からその効力を生じ、法律の規定に従って実現されるべきものであって、これは、遺言者が死刑確定者であっても何ら異なることはない。

四の(8)について

 遺言が相手方のない単独行為であるという性質上、民法(明治二十九年法律第八十九号)は法的効力を有する遺言事項を限定しているところ、自己の死刑執行の公表を求めることは、民法の定める遺言事項には当たらない。したがって、右の内容の遺言は、法律上の効果を有しない。

五の(1)について

 御指摘の答弁書については、答弁期間の延長をお願いした理由についてお答えしたものであり、個々具体的な死刑執行に関する事項を答弁したものではない。

五の(2)について

 御指摘の質問主意書については、国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第七十五条第二項に従い誠実に答弁したところである。

五の(3)について

 御指摘の答弁書において答弁を差し控えたのは、御質問の内容が個々具体的な死刑執行に関する事項であったこと等の理由によるものである。

六の(1)から(4)までについて

 御質問の「行政にかかわる重要な事項」及び「日本の行政にかかわる重要事項」が具体的にいかなるものを指すのか判断しかねるので、答弁を差し控えたい。
 なお、報道内容に対する国民の受け取り方や国民の報道に対する信用については、お答えする立場にはない。

六の(5)について

 仮定の御質問には、答弁を差し控えたい。

七の(1)について

 これまで政府は、我が国の財政状況について国民に理解を深めていただくため、憲法第九十一条、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四十六条等に従い、我が国の財政状況に関する情報を公表している。また、これらの規定に従い、行政に対する国民の信頼の確保及び行政情報の有効利用の観点から、行政機関が管理する文書を広く公開するという「行政情報公開基準」(平成三年十二月十一日情報公開問題に関する連絡会議申合せ)の趣旨も踏まえつつ、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)等の守秘義務規定により非公開とする場合等を除き、国民に対して適宜適切に財政状況に関する情報の公開を行ってきたところである。
 なお、現在国会で審議中の情報公開法案が成立し、施行された後には、これに従い、今後とも適切な情報公開を行ってまいりたい。

七の(2)について

 一般論として申し上げれば、国の支出内容については、可能な限り情報を公開する必要があると考えるが、四の(2)についてでお答えしたとおり、個々具体的な死刑執行に関する事項については、公表を差し控えるのが相当であると考えている。

七の(3)について

 法務省においては、その所掌事務を法令に従って誠実に執行しており、その判断に誤りなきを期しているところである。





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