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平成十年十月十六日提出
質問第三一号

冤罪における再審請求と証拠開示および国際人権(自由権)規約の実施状況に関する質問主意書

提出者  保坂展人




冤罪における再審請求と証拠開示および国際人権(自由権)規約の実施状況に関する質問主意書


 わが国は、国際人権(自由権)規約を一九七九年に批准し、司法制度の整備に努めてきたはずである。しかしながら、国連・国際人権(自由権)規約委員会は日本政府に対して、「弁護人が警察記録にある関係資料にアクセスする権利を有していない」ことに懸念を表明し、「防御のための十分な便益」の保障を求めていることに対して政府の動きははなはだ鈍い。
 本年十月、ジュネーブ国連代表部での国際人権規約委員会開催を念頭にして、証拠開示の実態について、質問するものである。

一 国連の国際人権(自由権)規約委員会の証拠開示を受ける機会の保障についての勧告
  一九九三年一一月に、国際人権(自由権)規約委員会が、国際人権(自由権)規約にもとづく日本政府の第3回報告書を審査し、コメントを発表している。日本政府にたいしての主要な懸念事項として、「弁護人は、弁護の準備を可能とする警察記録にあるすべての関係資料にアクセスする権利を有していない」と指摘し、さらに「弁護準備のための便宜に関するすべての保障が、遵守されなければならない」と勧告している。国連の国際人権(自由権)規約委員会のこの勧告は証拠開示を受ける機会の保障についての措置をとることをうながしているが、この勧告をどう受け止めているか。
二 公判準備をするために必要な証拠開示を受ける十分な機会保障と冤罪の再審請求について
 (1) 昨年六月に国際人権(自由権)規約に基づく第4回定期報告書が日本政府から、国連あてに提出されている。この第4回報告書には、日本においては、「被告人および弁護人には、公判の準備をするために必要な証拠の開示を受ける十分な機会が保障されている」と書かれている。「十分な保障」とは再審請求においても、個々の弁護人から証拠開示の請求があった場合、担当の検察官がこれに応じることも含むのか。
 (2) カナダでマーシャル事件という冤罪事件があった。一九七一年におきた殺人事件で、マーシャルという先住民の少年が誤って殺人犯とされ、終身刑を受けたが、十年後に真犯人が判明し、一九八二年に再審で無罪となった冤罪事件である。
     この冤罪事件では、再審で無罪となっためと、一九八七年に、政府が調査のための委員会を設置した。そして、この委員会は調査の後、誤判の原因として、差別があったこと、証拠が開示されなかったことを指摘した。これを契機にして、カナダでは検察官の事前の全証拠開示を義務づける制度が確立したと言われる。日本においても、戦後、いくつかの(差別・偏見)を土台とする冤罪事件があった。それら、冤罪事件の無罪判決確定後、証拠開示制度の運用はどのように改善されたのかを明らかにされたい。
 (3) 日本においても戦後大きな冤罪事件で、誤判が長期間放置された後に、再審無罪となる事件が続いた。被疑者への「差別」など、先入観が捜査・審理に影響をあたえたという指摘を被疑者弁護人から受けて、冤罪解明のために証拠開示を要請された場合、法務当局はどのような対処を行ってきたか。
 (4) 日本においては、免田事件、財田川事件、松山事件など、一九八〇年代に死刑確定事件で誤判があきらかになり、再審で無罪となったケースがあいついだ。誤判によって、何十年も死刑囚として獄中に囚われていたことを考えると、きわめて重大な人権侵害と言わざるをえない。なぜ、このような誤判がおきたのか。このような誤判を繰り返さないために、どのような刑事司法改革が必要と考えているか。
 (5) いわゆる免田事件、財田川事件、松山事件では、いずれも、再審請求の段階で、検察庁から未提出証拠の開示がなされたと聞いているが、そのとおりか。これら三事件では、具体的に、いつどのようなかたちで、検察官手持ちの証拠の開示がなされたのか。どのようなものがどれだけ開示されたのか明らかにされたい。
 (6) これまでの再審請求事件、免田事件、梅田事件では証拠リストが開示された前例があるが、今後、同様の再審請求があった場合、証拠リストの開示を行うのか。
三 狭山事件を例とする再審請求における証拠開示とプライバシーの問題について
 (1) 狭山事件については、再審請求の弁護人から具体的な証拠を特定しての開示請求がされているが、未開示証拠が多数存在することを認めながら応じていないと聞いている。さきの国際人権(自由権)規約にもとづく規約委員会の勧告や日本政府の国連への第四回報告等を踏まえた対応を行うとするなら、証拠開示を避けるべきではないのではないか。
 (2) 狭山事件弁護団の証拠リストの開示要求に対して、証拠リストの開示にあたっては、プライバシーに配慮しなければならないとの検察の回答があるが、この場合のプライバシーとは何を指すのか。また、これまでの冤罪事件で開示された証拠に、第三者のプライバシーを含む内容は存在しなかったのか。また、それらはなぜ開示できたのか。
 (3) 「証拠開示」における、保護されるべきプライバシーの要件とはなにか。
     また、プライバシー保護基準がなければ設定の用意はあるのか。
 (4) これまでの再審請求等の証拠開示で関係者のプライバシーが侵害された例があるのか。あるとすれば、どのような場合か。
 (5) 「関係者へのプライバシーの配慮」が、基準を持たず運用されるならば、証拠開示そのものを否定する結果を生じかねない。仮にも冤罪の可能性を推し量れば、長い年月を「犯人」として扱われてきた被疑者のプライバシーをどのように考えるか。
 (6) 証拠(証拠リスト)の開示については、プライバシーの保護(基準)に則る形でも開示方法を考えないのか。またプライバシー問題以外に開示できない理由はあるのか。

 右質問する。



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