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平成十年十二月十日提出
質問第三号

「海上コンテナ」の陸上輸送における安全確保に関する質問主意書

提出者  寺前 巖




「海上コンテナ」の陸上輸送における安全確保に関する質問主意書


 日本における国際輸送用コンテナ(通称「海上コンテナ」)による貿易は、一九六七年九月に日本とアメリカ間に始まって以来飛躍的に拡大している。運輸省の資料においても、「貿易における港湾取り扱い貨物量」のコンテナ比率は、一九七〇年当時、輸出で六・五%、輸入で〇・五%であったものが、九六年、輸出で四一・〇%、輸入で九・七%となっており、「海上コンテナ」輸送は日本の貿易に重要な役割を果たしている。
 貿易量の増大にともなって、近年、この「海上コンテナ」の陸上輸送中の事故が増えている。警察庁のパネルトレーラーとコンテナトレーラーの事故統計(死亡事故と負傷事故)によると、一九九三年・一七六〇件、九四年・一九一四件、九五年・二〇四六件、九六年・二〇七〇件、九七年・二一七七件と年々増えている。
 「海上コンテナ」は「通い箱」として、荷主が「海上コンテナ」内に荷物を積んでから、荷物の受取人が「海上コンテナ」を開けるまで、運送事業者及び運転者は、海上・陸上にかかわらずコンテナの扉を開けることができない。そのため、陸上輸送中に積み荷の片荷による横転事故や危険物による事故が起こっている。
 欧米諸国では、「海上コンテナ」の陸上輸送における安全を確保するため、「海上コンテナ」内に積載された積み荷の情報公開(危険有害物の積載証明・コンテナ貨物の重量証明)と、その安全証明(コンテナ内貨物の安全な積み付け証明)を、荷主に義務付けつつある。米国では、海上コンテナ安全運送法が一九九二年に制定され、積み荷情報の証明は荷主に徹底されている。欧州においては、IMO(国際海事機関)とECが各国間の国内法を調整しながら、コンテナ内貨物の安全な積み付け証明を行う機関を設置している。日本は、この点での不徹底さを多分に残しており、運転者への積み荷の情報公開と安全証明を荷主に義務付ける対策など、政府の責任による抜本的な安全対策が求められている。
 したがって、次の事項について質問する。

一 「海上コンテナ」内貨物の安全な積み付けを保障する措置について
  片荷による「海上コンテナ」の横転事故が起こっている中で、「海上コンテナ」の陸上における安全輸送のための具体的施策の検討と推進が強く求められている。政府においては、陸上輸送の安全性を確保するため、荷主及び荷物を積み付けた者などに対し、コンテナ内の貨物の積み付けに責任を負うなど法的措置を含む施策を講ずべきと思うがどうか。
二 危険有害物(化学物質)の輸送について
 1 「海上コンテナ」輸送が始まって三〇年。陸上輸送に際し、運転者はコンテナ内貨物の正確な情報を一貫して求めてきた。特に危険有害物の輸送に際して、その持つ意味はとりわけ重要である。政府及び業界は、「化学物質等安全データーシート」の徹底や、日本化学工業協会が自主的に取り組んでいる「イエローカード」の奨励など、この間様々な措置をとってきたが、その徹底は不十分である。したがって海上でのコンテナ輸送の場合と同じように「危険有害物の積載証明」を荷送人(荷主)の責任で発行するよう考える必要があると思うがどうか。
 2 現行の消防法は、危険物の情報把握と車両への危険標識の掲示責任は「危険物の移送をする者」(「海上コンテナ」の陸上輸送に際しては、運転者・貨物運送事業者にあたる)とし、荷主からの情報提供義務を不問にしている。荷主に対する法的な情報提供義務がないため、「海上コンテナ」運転者への危険物輸送の情報開示が進まない原因になっている。荷主に対する情報提供の義務化が必要だと思うがどうか。
 3 コンテナの外面表示について、現行の消防法、毒物及び劇物取締法は、それぞれ「危」や「毒」の標識の掲示を求めている。最近の事故事例によると、運転者に危険有害物についての情報が提供されていても、運転者自身が負傷し、「危」「毒」の外面標識だけで内容物がわからず、せっかくの情報提供もいかされず対処が遅れた事例も少なくない。荷主の責任で、コンテナの外面への危険有害物の品名と数量、事故の際の対処方法を表示する標識が必要であると思うがどうか。
 4 欧米諸国では、増大する危険物のコンテナ輸送に対応し、一九八〇年代半頃から危険物コンテナ運送のIMDGコード(危険物海上輸送の際の、容器・包装・標札・積載方法等を規定したもの)への適合性の適否を検査するインスペクションプログラムを、政府及び公共機関は実施している。この検査制度は、輸入コンテナの積み荷の安全性を水際で確保しその権限は内陸部にも及ぶという点で、陸上輸送の安全にも重要な役割を果たすものである。
   運輸省は、米国コーストガードのコンテナインスペクションプログラムについて調査を行ったと聞いている。政府は、調査結果を踏まえこの制度について、今後どのように具体化されようとしているのか。
 5 昨年八月、静岡県菊川町の東名高速下り線で、ステアリン酸クロライドを積んだタンクローリーが横転し、同化学物質が流出した。この物質は水やアルコールと反応を起こして塩化水素を発生するもので、劇毒物に指定されていない。この物質を劇毒物に指定する必要があるのではないか。
   さらに、今日、化学物質の活用が日進月歩で進んでいる。少なくとも諸法令で規制対象物質になっている危険有害物については、全ての物質についての表示義務を荷主に課す必要があると思うがどうか。
   また、現存する危険有害性をもつ物質で規制対象物になっていない物質については、すみやかに法的整備を行い、同様の措置をとる必要があると思うがどうか。さらに、日々生まれている新しい物質について、その危険有害性の把握などの体制はどうなっているか明らかにされたい。現在、危険有害物に対する規制目的によって所管する省庁は、労働省、厚生省、通産省、消防庁などとなっているが、政府において危険有害物を総合的に対処する体制が必要だと思うがどうか。
三 「海上コンテナ」に対する「重量証明」の義務化について
 「海上コンテナ」の陸上運転者は、荷主によるコンテナ内の荷物の重量証明がない限り、実際の積載重量を確認できない。運輸省は、今年四月より行政指導によって「海上コンテナ」の運転者に対して、コンテナ総重量を記載した「運送作業指図書」の携帯を求めている。この「運送作業指図書」への重量記載責任は運送事業者にあるとなっているが、海上輸送と同じように、コンテナ総重量の通知責任を荷主にもたせるべきだと思うがどうか。

 右質問する。





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