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平成十一年十月二十九日提出質問第二号
労災保険制度における脊髄損傷者の遺族補償給付に関する質問主意書
提出者 桝屋敬悟
労災保険制度における脊髄損傷者の遺族補償給付に関する質問主意書
労災事故により不幸にして脊髄損傷者となった場合、多くは車椅子生活をおくることとなるが、その症状により傷病補償年金・傷病年金(以下「傷病(補償)年金」という。)あるいは障害補償年金・障害年金(以下「障害(補償)年金」という。)を受給しながら労働能力の喪失の補償を受けることとなる。
こうした脊髄損傷者が長期療養の末死亡した場合は、死亡の原因となった疾病等と原疾患である脊髄損傷との因果関係が認められる場合は、遺族補償が行われることとされている。
この因果関係の認定に当たっては、一義的には主治医の意見を聴くこととされているが、脊髄損傷者の場合、じん肺等の他の労災患者に比べて、遺族補償につながるケースが極めて少ないとの指摘がなされている。
政府においても、こうした実態に鑑み、脊髄損傷者の併発する疾病について、その医学的な因果関係の視点から検討の上、報告書も出されているところである。
しかしながら、なお、医療機関や労働基準監督署等の現場において、区区とした対応が見られる実態を聞いているところである。
従って、次の事項について質問する。
1 脊髄損傷者について、傷病(補償)年金、障害(補償)年金の受給者の中でどの程度の割合で遺族補償が行われているか。
2 特に障害(補償)年金受給者の場合、認定現場において遺族補償はその対象にならないとの認識も見られるが、傷病(補償)年金受給者に比べて具体的な取扱いに差異があるのかどうか。
二 平成五年十月二十八日付け基発第六一六号労働基準局長通達の運用について
1 この局長通達は、脊髄損傷者の併発疾病について労災の適用上の取扱いについて通達したものであるが、脊髄損傷者の死亡に際し、関わった医師がこの通達の趣旨を十分に理解していない場合があることも指摘されている。医療分野のすべてにわたりこの通知の趣旨を徹底することは相当の困難性が想定される。
従って、当該通達の趣旨を活かす観点から、因果関係を判断するための脊髄損傷者用の死亡診断書を用意する、あるいは脊髄損傷者が労災制度により定期的な医療健康管理を受けていることから死亡に際しても当該主治医の意見を聴取する等の取扱いが必要と考えられるが、こうした運用面の改善を行うべきである。
2 こうした事由は、基発第六一六号通達が、脊髄損傷者の併発疾病に関する検討会報告を受けて併発疾病に係る医学的な整理を行っているものの、労働基準監督署や労災病院等の労災認定に直接関わる事務処理について触れられていないことに起因すると考えられる。
加えて、遺族(補償)給付の請求者にとって、所定の申請様式もなく申請権が侵されているのではないかとの指摘もあり、請求を行う側の手続きも含め、運用面での改善方策について、再度検討を行うべきである。
三 脊髄損傷者に対する遺族補償の在り方について
例えば一級から三級までの障害年金を受給している脊髄損傷者は、労働能力を百パーセント喪失しているものとして労災保険制度上の補償が行われていることから、こうした人が亡くなった場合も、被災時に即死した場合と同様に取り扱ってもらいたい。死亡時に、再度因果関係を審査することは不合理であるとの声が強い。
脊髄損傷者が下肢麻痺、四肢麻痺、神経因性膀胱、直腸神経麻痺等々の多くの障害を抱え、なおかつ慢性期には二十五以上の併発疾病を有する可能性がある被災労働者であること、また、長期にわたり看護、介護に当たる家族の苦労等々を勘案すると、脊髄損傷者に係る遺族補償の在り方についても抜本的に改革を検討すべきであるが、政府の所見を伺いたい。
右質問する。