衆議院

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平成十一年十二月十五日提出
質問第二〇号

「定期借家権」による混乱と危険性に関する質問主意書

提出者  保坂展人




「定期借家権」による混乱と危険性に関する質問主意書


 一四五国会において衆議院法務委員会に付託されていた「定期借家権」をめざす議員立法が与党の継続反対によって廃案になり、その直前に同建設委員会に「良質な賃貸住宅の供給を促進する法律案」がこれも議員立法として付託された。両案は、「定期借家権」を創設するために借地借家法の一部を改正する等、後者の住宅政策についての努力規定を除いては、ほぼ同一の内容である。
 賃貸住宅に居住する多くの国民にとって、施行日を三月一日と前倒しにした「定期借家権」の実施は、大きな影響と混乱をもたらすおそれがある。はたして賃貸住宅に居住する国民の権利は脅かされる危険はないのか、政府は緊急に対策を講じなければならないと多くの識者が指摘している。
 以下、質問する。

一 定期借家権を創設する法律の施行にあたっての政府の対応について
 (1) この事案の所轄官庁を明確にされたい。
 (2) 施行日(二〇〇〇年三月一日)を控えて二ヵ月あまりしかないが、政府はどのような方法・手段をもって国民全体への周知徹底をはかるか。
 (3) 施行にあたって地方公共団体はどのような役割をになうのか。
 (4) 立法過程で示唆された「標準契約書」の作成は、どのように実現するのか。宅建業法との関連で作るのか、あるいは別の法的根拠を定めるのか。明確にされたい。
 (5) 「標準契約書」が成立した場合の法的効果、拘束力などはどのようになるのか。区分所有建物における標準管理規約のようなものになりえるのか。何らかの行政指導的な措置がなされるのか。
 (6) 賃貸借契約終了時の通知を行う期間は定められているか。文理解釈上、期間満了時までに行うべきものと解することができるが、期間終了後の通知でもよいのか明確な規定が見当たらない。期間終了後、十年経過してからその旨を通知することも可能であるならば、期間終了後の賃貸住宅居住者はきわめて不安定な位置にあり続けることになると考えるが、どうか。
 (7) 賃貸借終了の通知がなく、居住を続けている場合、契約更新があったものと解釈できるのか。
 (8) 賃貸借契約は終了した。けれども、賃貸借人の明け渡しが事実上困難な場合は、いかに対処すべきなのか。「単身高齢で身寄りのない場合」「病臥、あるいは身体の障害のため動けない場合」
    「入院中で余命いくばくもない場合」「交通事故や突然の怪我で動けない場合」など、経済的、物理的に転居明け渡しが困難な場合、引越しが不可能な賃貸借人を強制退去させるのか。そうでないなら、どのような対処が可能なのか。
 (9) 今後、貸家市場に流通する物件が「定期借家」中心となり、「普通借家」が割高になることにより、借り手側が経済的事情から定期借家権以外の物件を選択できないとしたら、賃借人の選択権は有名無実のものとなる。「定期借家」と「普通借家」との家賃の相違は防ぐべきではないか。
 (10) 施行にあたって想定される法律解釈問題を列挙されたい。また、それぞれにどのような対応を行うのか。
二 四年後の「見直し」について
 (1) 政府部内で見直しを行う担当部局は存在するか。事態の推移を見守るデータは、公表されるのか。
 (2) 見直しの際には、法律一〜四条で努力義務を課した箇所について、政府として行った政策や措置について、その成果を具体的に検証する必要が出てくるのではないか。
三 「定期借家制度」の実効性を評価するための作業について
 (1) とくに、新規の家族向けの広い借家の供給がどのように増加、既存持家の貸家化と新規の賃貸住宅建設と分けてデータを作成することが必要ではないか。
 (2) 家賃水準の「低下」状況に関して公的な主体による分析作業と公表が必要ではないか。
 (3) 定期借家契約の普及の度合い、契約の内容や期間の定め状況、賃料自動改定特約の内容と普及の状況、再契約の状況、礼金等「再契約料」徴収の有無の状況、トラブルの有無などに関する調査実施(住宅と営業用を分けての)が必要ではないか。
 (4) 入居差別の有無も含め、借家関係の実態把握のために行う必要はないか。
 (5) 本法第1〜第4条の達成状況を政府による公的調査報告書として国会に報告・公表するべきではないか。
四 既存契約の転換の問題について
 (1) 本法(附則2条1項、同3条)に違反する既存借家(住宅)の定期借家への切り替えを防ぐためどのような措置をとるのか。また、逐次調査を行う必要があるのではないか。
 (2) 店舗併用住宅である借家は、居住用であるか営業用であるか、法文上も明らかでない。借地借家法二四条では、区分のため「専ら事業の用に供する」の旨規定しているが、「専ら」ではない場合、一部でも居住の用に供されている場合は「居住用」と解してよいのか。
 (3) 営業用については、「既存契約を合意で定期借家に切り替えることが許されている」という趣旨(附則3条の反対解釈による)の解説や報道もあるようだが、営業用でも、附則2条1項があるかぎり、その更新は原則として「なお従前の例による」(正当事由制度の適用対象とする)のが、法の本来の内容ではないか。
    この点に関する法の趣旨の普及・徹底を図ることの必要性について見解を問う。
五 新規に締結された定期借家契約における解釈問題
 (1) 38条の2項、3項には、書面を付した説明義務が履行されない場合、契約が無効となるという規定があるが、貸主の実質的な説明と、借手の納得を確実に行わせる必要があるが、どのような方法を取るのか。
 (2) 消費者契約法が制定された場合、それによる消費者保護の規定は、定期借家契約にも及ぶのか。
 (3) 例えば、契約期間を2年としたとして、再契約に際し、予め一定の約定をする契約が種々の形で登場すると思われるが、(家賃の自動的な値上げや、中途解約の違約金など)不当な「再契約の条件」から、借手を守るために、調査と監視が必要ではないか。
 (4) 契約を終了させるための通知が、通知期間の経過後、約定の期間の満了後もなされずに、借家人が住み続けている場合、 ― ― 例えば、2年契約。通知は一切なく、借家人が ― ― 場合によっては、口頭のやりとりで賃料額のみ改定した上で居住を続け、家主も賃料を受領しているケースはどうなるか。
 (5) 38条4項の但書は、形式的には例えば3年目、4年目に入ったときでも、家主は通知して、6ヵ月後の明渡しを請求できるようにも解釈できるが、この例で、4年目の始めに家主が一方的に通知して、その後6ヵ月で契約を終了させることができるか。
 (6) 賃借人側からの中途解約権の排除(5項の反対解釈)は、賃料自動改定特約とも結びついて、借家人(とくに営業用)にとって非常に厳しい事態を招く場合がありうる。
    少なくとも契約中で、(イ)一定の場合の解約権を留保させる、(ロ)借家人に、残存契約期間についての譲渡・転貸の自由を認める、などの措置を取らせることが必要ではないか。「標準契約書」では、この問題も考慮し反映させるべきではないか。
 (7) 約定期間満了時の「苛酷条項」がないが、そのために生じうるトラブルの実態の調査を行う必要はないか。
 (8) 公共賃貸住宅(公営、公団、公社の賃貸住宅)の法律関係には、この新法は影響するのか。
六 諸外国の制度について
 (1) 「自由契約」と「市場化」が進めば、借家人の権利を守るために、情報の開示・公開が必要であるが、適正賃料等の客観的な情報の収集と公表の体勢を整えることが必要ではないか。諸外国の制度はどうなっているか。
 (2) 今後、賃貸住宅の市場化を迎えた場合、借家人層が家主に対抗するためには一定の組織化が必要であり、フランス、ドイツなどでは、強力な借家人組合が存在する。「定期借家」に住む借家人の「居住する権利」を守るために、政府は、NPO組織などとの協力、補助を行うべきではないか。

 右質問する。



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