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平成十二年二月四日受領
答弁第二〇号

  内閣衆質一四六第二〇号
    平成十二年二月四日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出「定期借家権」による混乱と危険性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出「定期借家権」による混乱と危険性に関する質問に対する答弁書



一の(1)について

 良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法(平成十一年法律第百五十三号。以下「特別措置法」という。)については、法務省及び建設省の共管である。

一の(2)について

 特別措置法第五条の規定による改正後の借地借家法(平成三年法律第九十号)第三十八条(以下「改正後の借地借家法第三十八条」という。)に規定する定期建物賃貸借(以下「定期借家」という。)の制度を広く周知徹底させるため、新聞、テレビ等を活用した政府広報、パンフレット、ポスター等の作成及び配布、地方公共団体、その他関係団体等に対する説明会の開催等を行っているところである。

一の(3)について

 特別措置法第二条から第四条までにおいては、地方公共団体は、国と共に、良質な賃貸住宅等の供給の促進、住宅困窮者のための良質な公共賃貸住宅の供給の促進及び賃貸住宅等に関する情報の提供、相談等の体制の整備に努めるものとされている。特に、賃貸住宅等に関する情報の提供、相談等の体制の整備の一環として、地方公共団体は、借地借家法及び同法の一部改正内容の周知徹底を図るため、各種広報に努めるとともに、住宅相談窓口、法律相談窓口等における相談機能の充実に努めることとなる。

一の(4)及び(5)について

 建設省において、建物賃貸借関係の適正化を図る観点から、定期賃貸住宅標準契約書を作成し、都道府県及び政令指定都市並びに関係団体に通知したところである。定期賃貸住宅標準契約書は、特定の法令に根拠を有するものではないが、建設省が住宅政策を所管していることに基づき、住宅に係る定期借家契約の雛形として作成したものであり、その点で、建設省が作成した中高層共同住宅標準管理規約と同様の性格を有するものである。

一の(6)について

 改正後の借地借家法第三十八条第四項の規定により、期間が一年以上である場合には、賃貸人は、期間満了の一年前から六月前までの間(以下「通知期間」という。)に賃借人に対し期間の満了により賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を賃借人に対抗することができないが、賃貸人が通知期間の経過後賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、対抗することができるとされている。このように法律上、賃貸人は、期間の満了後も通知をすることは可能である。
 仮に、期間の満了後十年を経過してから通知をする場合であっても、賃貸人が賃貸借が終了する旨の通知をしてから、賃貸人が賃借人にその終了を対抗することができるようになるまでには六月の経過が必要であり、他方、賃借人はいつでも賃貸借の終了を主張することが許されるから、期間満了後の賃借人が極めて不安定な地位にあり続けることはないものと承知している。

一の(7)について

 定期借家契約は、契約の更新がないこととする旨を定める契約であり(改正後の借地借家法第三十八条第一項)、民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百十九条に規定する黙示の更新を含め、契約の更新を排除する趣旨であると解される。
 したがって、一般に、御指摘のような場合には、契約の更新があったものと解釈することはできないと解される。

一の(8)について

 賃貸借が終了した場合には、賃借人は、目的物である建物を明け渡す義務があり、これを履行しない場合には、賃貸人は、訴えの提起等法的措置を採ることが可能である。

一の(9)について

 今後、貸家市場において定期借家が中心となるか、賃料がどのように推移するか等については、市場の動向を慎重に見守る必要があるが、定期借家制度は、従来の賃貸人による更新拒絶については正当の事由が必要とされる建物賃貸借(以下「普通借家」という。)に加えて新たな選択肢を創設するものであって、そのいずれを選択するかは、賃貸人及び賃借人の合理的な判断によるものとなると承知している。
 なお、家賃についての規制は、相当ではないと考えている。

一の(10)について

 解釈上の問題点としては、@定期借家において期間が一年以上である場合に、期間が満了したが、賃貸人が賃借人に対し賃貸借が終了する旨の通知をしないときは、賃貸借契約が継続しているか、A期間が満了した後、賃借人が建物の使用を継続し、かつ、賃貸人がこれに対して何らの異議も述べない場合には、契約の更新が認められるか、B改正後の借地借家法第三十八条第五項及び特別措置法附則第三条における「居住の用に供する建物」にはいわゆる店舗併用住宅を含むか等がある。
 @については、一の(6)についてで述べたところから明らかなように、賃貸人は、賃貸借の終了を賃借人に対抗することができず、賃借人から賃貸人に対して賃貸借の終了を主張しない限り、従前の賃貸借契約が継続している状態になるものと解される。Aについては、一の(7)についてで述べたとおり、契約の更新は認められないものと解される。Bについては、四の(2)についてで述べるとおり、いわゆる店舗併用住宅も含むものと解される。
 これらの点については、広報等により国民に周知徹底を図ってまいりたい。

二の(1)について

 特別措置法附則第四条は、「国は、この法律の施行後四年を目途として、居住の用に供する建物の賃貸借の在り方について見直しを行うとともに、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と規定しているところ、政府部内においては、借地借家法を所管する法務省及び住宅政策を所管する建設省が見直しの中心となる。
 また、関連する統計調査等を実施し、必要なデータの収集に努め、これを公表する等必要な情報を提供してまいりたい。

二の(2)について

 特別措置法第三条第一項に規定する公共賃貸住宅の供給戸数及び管理戸数の実績等施策の具体的な実施状況については、これまでも把握してきているところであるが、同法第二条から第四条までの趣旨を踏まえ、今後とも、住宅の性能を表示する制度の普及の状況、適切な規模、性能、居住環境等を有する良質な公共賃貸住宅の供給の状況、賃貸住宅等に関する情報の提供、相談等の体制の整備の状況等施策の具体的な実施状況の把握の充実に努め、適切な対応を行ってまいりたい。

三について

 特別措置法附則第四条により、同法の施行後四年を目途として、居住の用に供する建物の賃貸借の在り方について見直しを行うとともに、同法の施行の状況について検討を加えることとされており、今後は、必要に応じて、御指摘の点も含め、賃貸借に関する様々な要素を考慮に入れながら同法の施行の状況について把握してまいりたい。
 特に、同法第三条第一項に規定する公共賃貸住宅の供給戸数及び管理戸数の実績等施策の具体的な実施状況については、これまでも把握してきており、建設白書等において公表してきているところであるが、同法第二条から第四条までの趣旨を踏まえ、今後とも、施策の具体的な実施状況の把握及びその公表の充実に努めてまいりたい。

四の(1)について

 特別措置法附則第三条は、同法第五条の規定の施行前にされた居住の用に供する建物の賃貸借の当事者が、その賃貸借を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする場合には、当分の間、改正後の借地借家法第三十八条の規定は、適用しないものとしており、その結果、いわゆる定期借家への切替えが行われたとしても、当事者の意思にかかわらず、普通借家となる。したがって、既存の契約の当事者に対し、その趣旨を広く周知徹底させることが必要であると考えられ、一の(2)についてで述べたとおりの広報等を行っているところである。
 また、必要に応じて調査を行うなどして、状況の把握に努めてまいりたい。

四の(2)について

 借地借家法第三十六条第一項の「居住の用に供する建物」は、賃貸借の目的である建物の全部が住居として使用されている必要はないと解されており、同法第二十四条中の「居住の用に供するもの」についても同様に解されるものと考えている。したがって、建物の一部が居住の用に供されている場合は、一般に、居住の用に供する建物に当たるものと解される。

四の(3)について

 特別措置法附則第三条は、居住の用に供されていない事業用の建物の賃貸借には適用されないので、この種の賃貸借については、いわゆる定期借家への切替えも許される。
 なお、同法附則第二条第一項は、同法第五条の規定の施行前にされた建物の賃貸借については、従前どおり契約の更新の規定が適用されるという趣旨であり、従前の契約の合意解約を前提とするいわゆる定期借家への切替えとは別の事項を規定するものである。

五の(1)について

 パンフレットの配布等により、改正後の借地借家法第三十八条第二項及び第三項の趣旨を広く周知徹底させるとともに、建設省において、定期賃貸住宅標準契約書と併せて、同条第二項に規定する説明に係る書面の雛形を作成し、広く利用されるよう周知徹底を図っているところである。

五の(2)について

 消費者契約法案(仮称)は、現在検討の段階にあり、その内容については未確定である。
 なお、平成十一年十二月二十四日に取りまとめられた国民生活審議会消費者政策部会の報告書によれば、同報告書が予定する消費者契約法は、消費者が事業者と締結する契約(以下「消費者契約」という。)を幅広く対象とすることとされており、定期借家契約が一方当事者としての消費者が他方当事者としての事業者と締結するものであれば、同報告書における消費者契約に当たると考えられる。

五の(3)について

 定期借家契約が終了した後、同一の建物について同一の当事者間で、借家契約が締結される場合も少なくないと考えられるが、その際、新たに締結する場合の賃料等の条件については、賃貸人と賃借人の自由な交渉にゆだねられることになる。その実状等については、今後、必要に応じて調査してまいりたい。

五の(4)について

 定期借家において期間が一年以上である場合に、期間が満了したが、賃貸人が賃借人に対し賃貸借が終了する旨の通知をしないときの法律関係は、一の(10)についてで述べたとおりであり、御指摘の場合には、従前の賃貸借契約が継続し、賃料額が改定された状態になるものと解される。

五の(5)について

 改正後の借地借家法第三十八条第四項ただし書の趣旨については、一の(6)についてで述べたとおりであり、御指摘のとおりであると解される。

五の(6)について

 改正後の借地借家法第三十八条第五項は、契約の当事者が中途解約権について特約により定めることを排除するものではない。同項は、事業を営む賃借人については、契約後の事情の変更により建物を使用することができなくなることがあることをも考慮に入れて中途解約権の特約をすることも十分に可能であると考えられたことから、居住の用に供する建物の賃借人に限って法定の中途解約権を認めたものであると承知している。
 なお、建設省が作成した定期賃貸住宅標準契約書においては、同項に規定する解約事由に限定せず、賃借人による契約の中途解約権を認めているところである。

五の(7)について

 御指摘の「苛酷条項」とは、賃借人に明渡しを求めることが苛酷となる場合にこれを制限する趣旨の条項を意味するものと思われるが、このような場合でも明渡しの対象となるのは、一般の契約の場合と異ならないと解される。
 なお、御指摘の問題については、今後、必要に応じて調査してまいりたい。

五の(8)について

 公営住宅(公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)第二条第二号に規定する公営住宅をいう。以下同じ。)については、同法及びこれに基づく条例に特別の定めがない限り、原則として借地借家法が適用されることが判例上確立しているところである。しかしながら、公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者のために賃貸する住宅であり、入居者が高額所得者となること等特段の事由がない限り居住が継続することを前提として制度が成り立っていることから、事業主体(公営住宅法第二条第十六号に規定する事業主体をいう。)は、入居者との間で期間の定めがない賃貸借契約を締結しており、定期借家制度にはなじまないと認識している。
 また、都市基盤整備公団又は地方住宅供給公社が賃貸する住宅については、定期借家制度も含め、借地借家法の規定が適用されることとなるが、実際に定期借家制度を適用するかどうかは、都市基盤整備公団又は地方住宅供給公社において、定期借家制度の定着状況、入居希望者の意向等を踏まえた検討を行った上で、判断するものと認識している。

六の(1)について

 家賃規制等を行っている欧米諸国においては、当該施策を実施するため、民間の家賃を調査している国もあると認識している。一方、我が国においては、既に地代家賃統制令(昭和二十一年勅令第四百四十三号)が廃止され、家賃規制も行われていないこと等から、政府において、適正賃料を定め公表する観点から賃料に関する情報を収集することは考えていない。しかしながら、透明で公正な賃貸住宅市場が形成されるよう、賃料を含む賃貸住宅市場の情報が円滑に流通するための業界団体等に対する支援等を行うことを検討してまいりたい。

六の(2)について

 定期借家契約は、期間の満了により、契約の更新がなく終了するものであるが、契約の締結に当たり、期間は、賃貸人及び賃借人の自由意思に基づき合意により定められることから、賃借人は、期間の終期を十分に認識できる。
 また、期間が一年以上である場合には、賃貸人は、通知期間に賃借人に対し期間の満了により賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を賃借人に対抗することができないこと等から、賃借人には期間の満了後の対応について検討する十分な時間があり、さらに、賃貸人及び賃借人が期間の満了後に引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする旨の合意を行った場合は、賃借人は引き続き当該建物への入居を継続することが可能である。
 これらのことから、定期借家契約の場合において借家に居住する賃借人の居住の安定が害されるとは認識していない。
 したがって、定期借家契約の一方の当事者である賃借人に係る団体に対して、御指摘のような定期借家の場合において借家に居住する賃借人の居住する権利を守るためという観点での特段の補助等を行うことは考えていない。





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