衆議院

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平成十一年十二月十五日提出
質問第二一号

タクシー行政の改善に関する質問主意書

提出者  平賀高成




タクシー行政の改善に関する質問主意書


 一九九七年度におけるハイヤー・タクシー(以下「タクシーという」)の利用者は年間二十六億一千五百万人で、国民一人当たりの利用回数も二〇・八回と、タクシーは公共輸送機関として国民生活に密着している。公共輸送機関の最大の社会的使命は、人命を安全に目的地まで輸送することだが、その安全輸送をはじめ利用者への接客サービスは、タクシー労働者の労働条件改善および良質な労働力の確保と密接不可分の関係にある。
 しかし、運輸省は「平成九年度以降の当面の規制緩和措置」を実施し、タクシーの慢性的な供給過剰状態を一層深刻化させた。同「措置」とは、九七年度から過去五年間の実績に、この新たな増車基準により算出された基準車両数に、一定割合を上乗せした車両数を適正枠として、この枠までは増車を認めるというものである。九七年度は一割、九八、九九年度には二割の上乗せを公示することになった。その結果、九七年度では、全国で新規事業者二十一社で四百四台、既存事業者で三千七百三十五台、九八年度には、全国で新規事業者二十三社二百六十四台、既存事業者で千百六十三台の増車が行われ、東京都内法人タクシー車両台数は消費不況が長期化しているにもかかわらず、過去五年間で約二千五百台も増車された。九九年度には、わずか一両しか増車枠が生じなかったほど、運輸省によって、タクシーの新たな供給過剰状態が、作りだされた。
 タクシーの供給過剰状態は、タクシーの事故を増加させ、安全輸送を脅かしている。このことは、事故発生件数と実車率の推移からも明らかになっている。全国乗用自動車連合会交通事故防止委員会調査(富田委員長作成)によると、東京都内の法人タクシーの九〇年事故発生件数は二千八百三十件、特別区・武三地区の実車率は五五・四%であったが、九七年には四千八百十三件と四六・八%に、この八年間で、事故件数は一・七倍となる一方、実車率は八・六ポイントも減少している。この調査から、実車率が低下すればするほど、事故発生件数は増加することが明らかになっている。
 また、タクシーの供給過剰状態で、かつ消費不況の中で運賃改定を行えず、タクシーの運転者の労働条件を一層悪化させている。本来、タクシーの運賃改定は、「神風タクシー」の教訓から労働条件等の改善による良質な労働力確保とサービス改善・安全輸送の向上等を目的として行われてきた。長い間、ほぼ二年毎にタクシー運賃改定を認可してきた。しかしながら、東京特別区・武三地区の場合、九七年の消費税引き上げ転嫁のための引き上げを除いて、九六年以来運賃改定が行われていない。タクシーの運賃改定の目的や労働時間の短縮が、いまだに十分達成されず、労働条件はますます低下している。一九九八年度のタクシー運転手の年間収入は、三百二十七万円(全国平均・労働省調査)と九年前の三百二十四万円の水準にまで落ち込み、他産業との格差が拡大している。
 こうしたなかで、来年の通常国会で、タクシーの免許制を廃止して許可事業とすること、運賃を上限運賃を定めて、それ以下の運賃は届出制にするなどを内容とする道路運送法の見直しが検討されている。許可事業による新規参入の増加で、慢性的な供給過剰状態が一層深刻となり、過酷な運賃ダンピング競争に拍車をかけることは必至である。これではタクシーの公共輸送機関としての使命である安全輸送やサービスの向上など重大な脅威に曝されることになると、危惧する声が関係者の間で日増しに高まっている。
 ついては、公共輸送機関としての使命を十分に果たし得るようなタクシー行政のあり方に関して、次の事項について質問する。

一 タクシー行政の原点が、「神風タクシー」の防止対策にあることは歴史的経過からも明らかである。五八年四月政府の交通事故防止対策本部は「タクシー事故防止対策要綱」を定めて、その徹底を図った。同要綱では「事故の根本的原因を精査した結果、運転者の指導取締りを更に強化すべきは勿論であるが、その労務状況を改善しなければ事故防止の目的達成は困難であると考えられるにいたった。このためにはタクシー事業の経営者が、免許制度による公益事業の責任者たる自覚と誇りを新たにし、運転者をして安んじて安全運転をなし得るように長期的かつ安定した雇用条件の下に就業させることが必須の要件である」として、給与制度については「交通の安全を阻害する過激な運転を誘発し又は強要するおそれのある給与制度を改善するため、固定給を増額するとともに著しく刺激的な歩合給を排除すること」など、また、労働時間等の適正化については「運転者の労働時間については、休憩時間を厳格に確保し、洗車、点検等は之を労働基準法に違反する時間外労働及び休日労働は厳に取締るとともに、年次有給休暇制度及び休日制度の確立を図るものとする」としている。
 (一) 同要綱では、タクシー運転者の給与制度について「刺激的な歩合制を排除すること」としているが、近年、供給過剰状態の下で、かつ消費不況のなかで、「オール歩合制」や「リース」紛い等の所謂「刺激的な」給与制度が大勢を占めつつある。また、労働省通達(平成九・三・一一基発第一四五号自動車運転者の労働時間等の改善のための基準について)でも「廃止するものとする」とされている累進歩合制度は依然としてなくならず、逆に営業収入の低下にともない「足切り以下オール歩合」という形で増加しつつある。事故防止・安全輸送を確保するためには、給与制度に関して完全な労使問題に委ねるのではなく、あらためて「神風タクシー」防止の原点にかえって、安全輸送の確保に相応しい給与制度にするよう事業者に対して、適切な行政指導をすべきではないのか。
 (二) また、現在法定週労働時間は四〇時間となっているが、タクシーの運転者の年間労働時間は、我が国政府の国際公約である千八百時間を大きく上回る二千五百十五時間(九七年度)で、週労働時間は四十八時間で、法定週労働時間をはるかに超えている。このようなタクシー運転者の労働時間は、例外とは片づけられない問題であり、政府は一刻も早く改善すべきであると思うがどうか、また、その具体的な対策を明らかにされたい。
二 「平成九年度以降の当面の規制緩和措置」によって、この三年間でタクシーは全国で五千五百六十七台も増加、今年度全国では、愛知県大府市で一台の増車枠しか生じなかった。各運輸局は「九九年度需給動向判断結果」を公示したが、その「判断結果」によると、北海道札幌首都圏では、九九年度の恒久車両台数は四千六百台で、運輸省の上乗せ増車基準に基づく適用車両台数四千九十九台を、五百一台上回っている。昨年度の過剰車両台数二百八十七台で、今年度は昨年度に比べて二倍近い供給過剰となっている。
 (一) 今年度の増車が全国で一両の増車しか認められなかったことは、運輸省自身の需給判断基準によっても全国の大部分の事業区域で供給過剰状態にあるとの認識に基づくものと考えるが、政府の認識を明らかにしていただきたい。
 (二) とくに東京・神奈川・千葉・埼玉等、九七、九八年度に増車を認可した地域の供給過剰は、増車を認可したがゆえに供給過剰がいっそう促進されたものと考えられるが、そうするとこの認可は、道路運送法第六条一項および二項に定められた免許基準に反する認可であったのではないのか。このような法律ないしその趣旨に反する増車認可をしてきたことの責任をどうとるのか明らかにされたい。
 (三) また、供給過剰状態がとりわけ著しい九州各県では、タクシー乗場からあふれ出したタクシーが長蛇の列をつくり、ところ構わず停車して客待ちすることから、運転手が乗っているタクシーが駐車違反で摘発される事例が続出している。警察から違法駐停車摘発の通報を受けた運輸局は事業者に車両停止の行政処分を行っている。ここ数年間にわたり大量の行政処分が行われているにもかかわらず、相変わらず同一事業者が違反を繰り返し、全体としても違反が根絶されないことは、行政処分がその効果を発揮していないことが明らかである。その根本原因であるタクシー供給過剰を解消しないかぎり、駐停車違反をなくすという行政上の目的をはたしえないということになる。運輸省はこのようなタクシーの供給過剰状態の解消策について、どのような具体的な対策を講じようとしているのか、明らかにされたい。
三 安全な輸送は公共輸送機関の最大の使命である。ところが近年いわゆるパート・アルバイト・嘱託などの不安定雇用運転者が急速に増加し、これらの運転者は、他職との兼職等による長時間・過労運転等から安全性の低下や乗客への接遇の面でのサービス低下などの問題を発生させている。
 (一) このようなアルバイト運転者の採用状況について、政府はどのように把握しているのか。把握していれば、それを明らかにしていただきたい。また、政府として、そのような実態を改善するために、どのような措置を具体的に講じているのかについても、明らかにされたい。
 (二) 特に、「定時制乗務員」としての必要な基準(全乗連「定時制乗務員の雇用管理に当たって留意すべき事項」)を満たさないものについては、法令・通達(旅客自動車運送事業等運輸規則第三十五条・三十六条及び昭五三・六・一五 自旅第二〇三号旅客自動車運送事業における運転者の選任について)に違反するものとして、所謂アルバイト運転者の選任はやめさせるべきではないのか。
四 九八年「自動車運転者を使用する事業場にかかる労働基準関係法令の違反状況」によると、ハイ・タク業では、監督実施事業場数三百七十事業場のうち違反事業場は二百八十四事業場と、実に七六・八%が違反事業場となっている。また、九八年「自動車運転者を使用する事業場に係る改善基準告示の違反状況」でも、改善基準告示違反事業場は、二百十四事業場と、五七・八%を占めている。いずれも過半数を超えるタクシー事業場が法等の違反状態にあると言わざるをえない。
 (一) 労働省による自動車運転者を使用する事業場に対する監督は、八九年にはハイヤー・タクシー業で千八十事業場で実施されていたのが、九八年には三百七十事業場と三分の一にまで減少している。毎年法違反が多数摘発される問題業種であるにもかかわらず、このように監督自体が急減している原因は何か。これらの法違反・告示違反を根絶するために、政府の監督体制の充実強化をはかるべきではないのか。
 (二) タクシーは営業費の八〇%を人件費が占めていることからも、安全輸送とサービスの向上は、タクシーの運転者の労働条件と密接に結びついている。そのためにも、労基法等の厳守がタクシーの安全輸送とサービスの向上を確保するための最低必要条件になっている。しかし、一方で、タクシー事業者の一部には、労基法等をないがしろにして、労働条件を違法な手段で、一方的に引下げることによって、事業拡大を行っている事業者も存在することは由々しき事態である。公共輸送機関を担っているタクシー業界で、違法がはびこる、いわゆる「悪貨が良貨を駆逐する」ことを許さないための政府の決意と、その対策を明らかにされたい。
 (三) 消費不況と相まってタクシー業界でのリストラが行われている。特に、タクシー会社の別会社化、営業譲渡などを契機にして徹底した労働条件の違法な引下げや「組合つぶし」等の不当労働行為が行われていることは重大である。このような違法なリストラを防止し、雇用を守るために、政府は適切な対策をとるべきであると思うがどうか。その対策を明らかにしていただきたい。

 右質問する。



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