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平成十一年十二月十五日提出
質問第二五号

神奈川県警事件の責任などに関する再質問主意書

提出者  保坂展人




神奈川県警事件の責任などに関する再質問主意書


 二〇〇〇年を迎えるにも胸のつかえがとれない不快な出来事が未解決のままになっている。神奈川県警問題はその本質において重大な懸念を将来に残したと言わなければならない。神奈川県警外事課の警部補が覚醒剤を使用していた事実をもみ消した当時の県警本部長ら五人が十二月十日、起訴された。都道府県警本部長の起訴はかつてないことで、これだけの事態を引き起こしながら、警察庁長官は引責辞任の姿勢さえない。新聞などを見ると、国民はこの事態の本質を何ら反省せず、表面を取りつくろって居直っているとみている。社会は警察官僚が考えているほど、甘くない。もはや警察に対する信頼は地に墜ち、現場の警察官は日々このために苦労している。警察庁長官の厚顔ぶりは、本部長の犯罪以上に国民と日夜がんばっている全国の警察官に対する背信だと強く非難せざるをえない。
 大蔵省がいわゆる「公費天国」で批判された際、綱紀責任者の同省官房長は軽い処分にとどまり、その後に事務次官、都市銀行頭取、日銀総裁などを歴任した。今回の警察庁長官らと同様のこの厚顔ぶりは、省内の綱紀をさらにゆるめ、その後の接待汚職で多くの被疑者、被告人を生んだ。捜査は総裁となった日銀にまで及び、厚顔の元官房長は遂に総裁辞任に追い込まれたのは、「因果応報」そのものである。警察庁もこのままでは、数年後に同じ道をたどるだろう。
 十一月十五日に提出した「神奈川県警事件の責任などに関する質問主意書」(以下「前回質問」とする)に対する同月二十六日付け政府答弁書(以下「答弁書」とする)は、大半が警察庁で起案されたものとみられるが、質問に的確に答えず、誠実な姿勢がうかがえない。虚偽とみられる部分もあり、かつて私が受けとった各省庁起案の答弁書の中で、最低である。議員を愚弄しているとしか思えない内容だった。警察庁は独立国として霞が関に君臨しているとでも考えているのだろうか。「裸の王様」はもうやめにしてほしい。
 国民のために働く本当の警察を再建するため、以下再質問する。国会法所定の期間内に一問一問真摯に答弁されたい。

一 起訴
 (一) 元本部長らが起訴されたことについて、政府はどのように考えているか。
 (二) 答弁書「一の(1)について」には、元本部長らの書類送検は「警察に対する国民の信頼を損なうものであり、誠に遺憾」とあるが、広辞苑によると、「遺憾」は「思い通りにいかず心残りなこと。残念。気の毒」という意味で、反省を示す言葉ではない。政府は今回の事態を招いたことについて、反省していないのか。国民に分かるように「反省している」「反省していない」のいずれかで答弁されたい。
 (三) 政府にとって、思い通りにいかなかったこととは何か。「残念」というのは事件そのものに対する感想か。それともこうした事態を招いた組織、システムのありようが残念だと考えているのか。「気の毒」というのは国民が気の毒という意味か。それとも警察庁長官が気の毒ということか。
 (四) 今回の事件について監督責任が最も重いのはだれか。当然必要な再発防止措置の推進以外に、どのような形で責任を明らかにすべきか。
 (五) 答弁書「一の(2)について」記載の「都道府県警察に対する特別監察」は具体的にどんなことをするのか。監察官室が事件もみ消しの中心となった今回の事件と同様、身内をかばったり、事実を隠したりしないのか。しないとすれば、身内をかばったり、事実を隠したりできない合理的なシステムを作ったのか。
 (六) 答弁書「一の(2)について」記載の「組織管理者研修」とは具体的にどんなことをするのか。
 (七) 答弁書「一の(2)について」記載の「国及び都道府県における公安委員会の管理機能の充実の措置」とは具体的にはどんなことをするのか。
 (八) 答弁書「一の(2)について」には「都道府県警察に対して、公安委員会に対する適時適切な報告の励行、幹部職員に対する教養の徹底、監察体制の強化及び特別監察の実施等を指示し(た)」とあるが、都道府県警察はこれまで、公安委員会に「適時適切な報告」を励行していなかったのか。
 (九) 都道府県警察はこれまで「幹部職員に対する教養」を十分してこなかったのか。「教養」という言葉は研修と似た意味で使っていると思われるが、国民にその意味が理解されていると考えているのか。
 (十) 各都道府県警察は数千人から四万人にのぼる巨大な組織であり、個人的な理由から事件を起こす警察官もいるだろう。答弁書「一の(2)について」記載の「不祥事案対策」とは、そうした警察官の個人的な犯罪を未然に防ぐためのものか、それとも警察官の不祥事を組織的にもみ消すような警察の犯罪を起こさないシステムをつくるためのものか。後者も意図しているとすれば、政府は今回の措置で十分と考えているのか。
 (十一) 前回質問「一の(3)」では「監察官という綱紀の保持に当たるセクションが自ら不祥事もみ消しに動いた事実は、監察制度そのものの限界を示していないか」と質問したのに、答弁書では明確に答えていない。今回の事件が監察官制度の限界を示した事例と考えているかどうか、明確に答弁されたい。
 (十二) 答弁書「一の(3)について」には「不祥事案が発生した場合、監察部門が中心となって速やかに調査を行い、解明された事実に基づき所要の懲戒等の処分を行うとともに、刑罰法令に触れる行為があると認められた場合には、刑事事件として適正な捜査を行い、厳正に対処している」とあるが、神奈川県警事件など一連の警察不祥事が次々に発覚する中で、それまで「厳正に対処」していなかった事案をあらためて調査、捜査し、処分したケースを示されたい。
 (十三) 答弁書「一の(4)について」では、監察業務に外部の者を従事させることが適正でない理由として「警察の組織及び業務に精通し、かつ、刑事部門、交通部門等の執行部門から独立した者が監察業務に当たることが適当」「個人のプライバシーの保護及び職務上知ることのできた秘密の保持に配慮する必要がある」を挙げているが、国及び都道府県の公安委員会の委員は就任時から「警察の組織及び業務に精通」しているのか。
 (十四) 監察業務に外部の人が加わる場合、各公安委員会の委員同様、守秘義務が課せられるのは常識だ。守秘義務も課さない前提で議論しているとでも思っているのか。「個人のプライバシーの保護及び職務上知ることのできた秘密の保持」は理由にならないのではないか。
二 組織犯罪
 (一) 神奈川県警は「共通の目的を有する多数人の継続的結合体」か。
 (二) 神奈川県警は「その目的又は意思を実現するため、業務の全部又は一部を指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体」か。
 (三) 今回の事件は、県警本部長の指揮命令に基づき、監察官室長らがあらかじめ定められた任務の分担に従って犯行を完遂した犯人隠避事件か。
 (四) 今回の事件は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律に定義された団体が実行した犯人隠避事件か。
 (五) 神奈川県警外事課警部補が覚醒剤を使用した事実が明らかなのに、それが立件されていないことが報道で発覚後、神奈川県警本部長は横浜地検検事正と直接面談したり、電話で話したりした事実はあるか。警察庁長官が検事総長や法務省事務次官と直接面談したり、電話で話したりした事実はあるか。警察庁次長が次長検事と直接面談したり、電話で話したりした事実はあるか。警察庁官房長が最高検察庁刑事部長や法務省官房長と直接面談したり、電話で話したりした事実はあるか。捜査の内容にも関わるので、会話の内容は問わずに事実の有無のみを問う。
 (六) 元本部長ら九人が書類送検され、うち五人が起訴された今回の事件で、被疑者が互いに連絡の取れる状態のまま、捜査したことについて、政府は国民に不信感を抱かせたと考えないか。「考えている」「考えていない」のいずれかで簡潔に答弁されたい。
 (七) 今回の事件の捜査を振り返り、政府は反省点があると考えているか。「反省点がある」「ない」のいずれかで簡潔に答弁されたい 。
 (八) 前回質問「一の(7)」で「捜査を尽くしたか」否かを質問した。しかし、答弁書「一の(7)について」では「捜査の具体的内容については、答弁を差し控えたい」として、政府は答えなかった。捜査を尽くしたか否かは捜査の具体的内容なのか。捜査は尽くしていないのか。
 (九) 答弁書「二の(1)について」によると、神奈川県警の交通違反検挙件数は大幅に減っている。現場の警察官の苦労をどのように考えているか。
 (十) 答弁書「二の(2)について」によると、現場の警察官は交通違反の取り締まりに際して「シャブよりましだろ」「身内だともみ消すのに、こんな微罪でも市民は処分されるのか」と同種の言葉を浴びせかけられているという。政府は「不祥事案対策の推進」だけで、こうした事態を解消できると考えているのか。時間が経過すれば、国民は忘れるとでも考えているのか。
 (十一) 答弁書「二の(3)について」記載の「国民からいささかの疑念も抱かれることのないよう」にするためには、「不祥事案対策の推進」だけで足りるのか。ほかに何が必要か。
 (十二) 答弁書「二の(4)について」で、政府は「警察による通信の傍受は適正に実施されるものと考える」と答えているが、適正に実施されず、警察官が傍受で入手した情報を元に関係者を恐喝する事件などが発生した場合、政府はどのような形で責任を明らかにするつもりか。それとも神奈川県警のように事件をもみ消すのか。
 (十三) 都道府県警察は数千人から数万人の巨大な組織であり、個人的な動機による警察官の犯罪は起こり得るし、その一件一件についてトップの進退をただすのは合理的ではない。しかし、警察組織が不祥事そのものをもみ消した今回の事件は、組織の犯罪であり、警察官個人の犯罪とは明らかに質が異なる。再発を防止し、警察に対する信頼を回復するためには、警察組織のトップが辞任することで事態の重大さを明らかにした上で、国民が納得できる組織の改編が必要と考えるが、政府はそう考えないのか。
三 緒方宅盗聴事件と検察
 (一) 答弁書「三の(2)について」によると、政府は一九九七年六月二十六日の東京高裁判決は「警察による組織的犯罪であると断定したものではない」と承知しているようだが、東京高裁は判決理由の第三で「被告久保らの各行為が個人的動機に基づく独自の行動であったと見ることは到底できないものと言うべきであって、同人らによる本件盗聴行為は、神奈川県警本部警備部公安第一課所属の警察官としての『共産党国際部長である原告靖夫の通話内容の盗聴』という目的に向けた組織的な行動の一環であったものと推認するのが相当であり、被告久保ら三名の間において右目的に向けた意思の連絡(共謀)が成立していたことについては疑い得ないところである」と事実認定している。政府は警察庁の虚偽の説明をうのみにしていないか。答弁に当たり、判決文を確認したか。
 (二) 緒方宅盗聴事件について、警察庁と神奈川県警はこの期に及んでも「警察の組織犯罪ではない」と強弁し続けている。警察庁は「神奈川県警の組織犯罪であって、警察全体の組織犯罪ではない」と、神奈川県警は「盗聴は警察庁の命令であり、神奈川県警の組織による犯罪ではない」と、それぞれ考えているのか。
 (三) 緒方宅盗聴は警察庁警備局の指示による犯罪ではないのか。
 (四) 答弁書「三の(3)について」には「神奈川県警察においては、必要な人事の刷新が図られるとともに、関係警察官を懲戒処分に付し」とある。県警関係者から寄せられた情報では「この事件では地元採用の警察官が自殺している。県警では、責任は地元ばかりに負わせたと不満が大きかった。盗聴を指示したキャリアは警察大学校の教官などに異動し、しばらく『冷や飯』を食わされていたが、最近になって本部長に復帰した。こんな不条理が許されるのかと不満は再燃した。一連の不祥事はキャリア追い落としのための怒りの内部告発だ」という。政府はどのように考えるか。今回の事態を招いた根源は、警察庁の緒方宅盗聴事件に対する反省のなさと考えるが、どうか。
 (五) 今回の事件で、検察は自らの機能を十分に果たしたと考えているか。新聞には警察に甘い検察の限界を指摘する記事もあったが、政府は国民に疑念を招くようなことは決してないと、断言できるか。「断言できる」「できない」のいずれかで簡潔に答弁されたい。

 右質問する。





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