衆議院

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昭和二十二年九月二十六日
答弁第七号
(質問の 七)

  内閣衆甲第九六号
     昭和二十二年九月二十六日
内閣総理大臣 片山 哲

         衆議院議長 松岡駒吉 殿

衆議院議員林百(注)君提出略式命令の違憲性に関する質問に対し別紙答弁書を送付する。





衆議院議員林百(注)君提出略式命令の違憲性に関する質問に対する答弁書



 御質問の趣旨は、刑事訴訟法第五百二十三條は、憲法第三十七條、第三十八條、第八十二條に違反するにもかかわらず、政府の見解が不明確であるため、各地の裁判所においてその取扱が区々となつているので、これに関する政府の見解と対策を明かにせよというに在るものと思う。
 結論を申せば、政府は、当初から、略式命令は憲法違反でないと解して居り、この見解は、新憲法施行前から機会ある毎に明かにして居るので、全國の檢察官は勿論、裁判官も充分承知している筈である。
 略式命令は、なる程書面審理の上発せられるものであるが、これを受ける者は、常に正式裁判を請求し得るのであつて、正式裁判の請求があれば、裁判所は、第一審からすべて通常の手続に從つて審判をなし略式命令に拘束されないのであるから、審級の点において、裁判の公開の点において、弁護権の点において、將又証拠の点において、略式命令が発せられた場合と然らざる場合との間には、何等差異はないのである。從つて仮に略式命令が発せられたとしても、國民が憲法によつて保障されたこれらの権利を奪われることはなく、唯國民が自由な意思に基いてこれらの権利を放棄するならば書面審理による裁判が確定するというに過ぎない。憲法は、行政機関が前審として裁判を行うことすら認めて居り、政府は、右に述べた國民の権利が憲法上絶対に放棄できない権利であるとは考えていない。
 搜査官憲の取調を受けた者で、略式命令による裁判を希望する者が極めて多いことにも特に考慮を拂う必要がある。
 なお、統計的にいえば、略式命令によつて確定する事件は、全刑事々件の七割に達するのであつて、現在の限られた我が國の財力を以て、全刑事々件をすべて通常の手続で裁判することは、殆んど不可能に近いことに思を致すならば、軽微な爭なき事件については比較的簡易な手続による裁判を行い、眞に爭のある事件及び体刑を以て臨むが如き比較的重要な事件については、愼重な裁判を行うことこそ、実質的に國民の権利を尊重し、これを保障する最も妥当な途であると信ずるのである。
 或る裁判所が政府とその見解を同じくして略式命令を発し他の裁判所がこれに反する見解に立つているのは事実であるが、これは政府の見解が不明確なためではなく、それぞれの裁判所の憲法の解釈に差異があるからであつて、裁判の性質上やむを得ないところである。これは、具体的事件について、最高裁判所の判決が下るまでは、続くであらう。政府には、これに対し何等採るべき方策が與えられていないのである。


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