答弁本文情報
昭和二十三年十一月三十日答弁第六號
(質問の 六)
内閣衆甲第六三号
昭和二十三年十一月三十日
内閣総理大臣 吉田 茂
衆議院議長 松岡駒吉 殿
衆議院議員林百※(注)君提出学生政治活動取締に関する質問に対し別紙答弁書を送付する。
衆議院議員林百※(注)君提出学生政治活動取締に関する質問に対する答弁書
質問の要点は、学校が文部次官の「学生の政治活動」に関する通牒に便乘して学生運動を不当に彈圧していないかというにあると解せられる。学生の政治活動については、さきに第二回國会において森戸前文部大臣が文部省の見解を表明したのであるが、なお政治運動の限界について疑義をもたれる向もあつたので、文部省は本通牒を発し、更に具体的な見解を表示して学校長の判断の参考に供せんとしたものである。
この通牒の要旨は、第一に学内における政治の研究、批判の自由を尊重し、進んで学生が個々に結社に加入する自由を禁止せず、学生運動の健全な発展を期待したのである。第二には学内の政治活動に関し学園の政治的中立性と各学校の教育上の自主性を保持する必要から各学校の実情に應じ、学園の秩序を阻害する如き運動が起らないよう指導をし、それに必要な適切な措置が講じられるべきことを明らかにしたもので、これは教育基本法第八條の趣旨から言つて当然であり、学校の教育活動あるいは、学校管理の問題である。第三には学園内の自治活動について直接行動や成心ある少数者の支配を戒めたものであり、このことはわが國の政治が國会民主々義の原則に基いている点からして明瞭である。
以上が次官通牒の趣旨であつて、これはあくまで学校長の判断の参考資料としたもので、この通牒をもつて学校長が学生運動を不当に彈圧しているとは考えていないし、又しばしば学校長会議や大学総長学長会議の機会をつくつて、その趣旨の闡明や徹底に努力している。
長野師範学校においては、青年共産同盟を研究の自由から認めて來たが、その行動において学校経営に支障を來したので、学校としてはやむなく解散を命ずる等の措置を講じたものと認めた。又秋田師範においては、生徒が学校側の勧告を無視して試驗時間にあえて大会を開いて試驗をボイコットしたので、その首謀者を処分したものであつて、いずれも各学校の自主性に基く学校管理措置であつて、ポツダム宣言、新憲法の精神を蹂躪し、次官通牒を不当に惡用したものとは考えられない。