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答弁本文情報

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昭和二十四年五月二十七日
答弁第三〇号
(質問の 三〇)

  内閣衆甲第四四号
     昭和二十四年五月二十七日
内閣総理大臣 吉田 茂

         衆議院議長 (注)原喜重(注) 殿

衆議院議員河口陽一君提出農地買收に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員河口陽一君提出農地買收に関する再質問に対する答弁書



一、地主岩(注)豊一は東京都北区稻付町四丁目九三に居住するから、いわゆる不在地主であることに疑問はない。なお耕作者の方も、東京都練馬区中村一ノ五に居住し、関係地一・八反のみを耕作するものである。
  不在地主の所有する農地(現況農地である一・八反の分)であつて、まだ買收になつていない理由は、地元の農地委員会において「新開墾地で收穫不定」であるから、自作農創設特別措置法第五條第八号に該当する土地であると認定して買收を保留しているからである。もつともこの裏には、地主は現耕作者が権限なくして不法占有した無断開墾地であると主張、耕作者の方には地主のこの主張を破るべき証拠がなく、若し不法占有地であるとすれば耕作権も否定されることとなり、耕作者に不利であつたので、たまたまこの問題を知つた縣の小作主事が調停に入り、まず耕作者の事情を考えてすでに開墾している一反八畝の耕作権を地主に認めさせることに努力し、地元の農地委員会でも縣小作主事の調停案に同調したが、不法占有による耕作地ならば買收は不当であると考えた点が大きく作用していると思われる。縣の小作主事も耕作者が賣渡の相手方としては不適格であるので、たとえ買收しても國有地として貸し付けておくより外ない点も考慮すれば、とりあえず耕作権を認めさせることを主眼において、実質的に耕作者の地位を守ることが先決であると判断し、買收問題にこだわらず前述の線で調停したのである。

二、自作農創設特別措置法第三條第一項第一号で政府が買收する農地は不在地主の所有する「小作地」と規定され、「小作地」とは同法第二條第二項によつて「耕作の業務を営む者が賃借権、使用貸借による権利、永小作権、地上権又は質権に基きその業務の目的に供している農地」と定義されておる。したがつて、若し不法占有によつて耕作しているとすれば「小作地」とはいえないのである。

三、昭和二十年十一月二十三日現在の小作農(権限に基いて小作地を耕作している者)がその後地主の不当な土地取り上げによつて耕作権を失つていても、自作農創設特別措置法第六條の二乃至第六條の五の規定によつて、いわゆる遡及買收のできる規定がおかれている。
  もつとも本件は、当初より不法占有であつたかどうかが爭点であつて、遡及買收するかどうかには直接関係のない問題である。現在調停によつて耕作者に耕作を認められている一反八畝以外の分(調停後耕作者が新たに開墾した分を含む。)については、耕作者は占有を放棄させられているが、遡及買收を請求するには昭和二十年十一月二十三日当時において耕作する権限があつた農地があることが立証されなければならないのである。なお現況農地でない分は農地買收の対象とならない。

四、自作農を創設するため必要があるときは、自作農創設特別措置法第三十條によつて「農地の開発に供しようとする」土地を買收できる規定があるが、そのためには開拓適地審査委員会で開拓適地であると判定しなければならない。またこの規定によつて買收した場合賣渡の相手方は、一定の資格要件を備えた入植適格者(地元の増反入植を含む。)でなければならない。現在農地ならざる宅地でも將來農地となるものを農地として買收することはできない。なお農地改革において「農地」とは、現況主義をとつているのであつて、土地台帳地目が農地であつても、またたとえ農地とする目的で借りたとしても、現に耕作の目的に供しているものでない限り「農地」としては扱えない。

五、片山村農地委員会は一度解散を命ぜられたことがあり、また縣農地委員会で権限の一部代行も行つており、保守的な色彩の強い農地委員会であることは事実である。それゆえにこそ縣当局でもその運営には常時留意しておるのであり、農林省においても再三調査したのであるが、この件に対して縣当局のとつてきた措置は非難すべきところがない。なお耕作者の申立によつて來る六月八日に浦和地方裁判所において昭和二四セ第三号を以て小作調停法による小作調停委員会が開かれることになつておるが、この調停が本件の適正な解決へ一歩を進めるきつかけであろう。農林省としては本件を軽視して徒らに放置しようとする考えではなく、以上述べた事情のすべてを考慮に入れて縣当局のこれまでの措置を妥当と判断し、なお今後の推移を注視しようとするものである。

  右答弁する。




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