昭和二十七年四月十八日受領
答弁第三〇号
(質問の 三〇)
内閣衆質第三〇号
昭和二十七年四月十八日
内閣総理大臣 吉田 茂
衆議院議長 林 讓治 殿
衆議院議員深澤義守君提出麦角に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員深澤義守君提出麦角に関する質問に対する答弁書
一 麦角の発生は、病菌が麦の開花期に寄生して発生するものであつて、人為的のものでなく自然的のものである。攝取量多量に上れば收れん性の中毒を起す。その限界は一回二粒、一日十粒程度である。
二 麦角の発生は、麦の立毛中に病菌が寄生することによるので貯蔵とは関係がない。ただ立毛中の温濕度がその発生に影響することはいうまでもない。
三 麦角の混入率の許容限界は、輸出国の輸出検査規格に規定されており、わが国で発見されたものはいずれもその限界の範囲内であるから、検査の不備とはいいえない。
四 その大部分はカナダ、一部はアメリカである。今年特に問題となつた理由は、これらの国の麦の開花期中の異常気象によるものと推定せられる。
五 昭和二十六年三月末日現在、その累計は一五六、〇九五トンであり、その発見はすべて輸入検査の段階であつた。
六 輸入食糧中に発見された麦角の混入率は、きん少であり、これにより被害を受けることは考えられない。
麦角の混入率についての許容限界は、アメリカ、カナダの公式検査規格に規定せられている(最も多い場合で、アメリカ〇・三%、カナダ〇・二五%)。
現在までに輸入せられたものの混入率は、最高〇・〇〇五% ― 〇・〇〇〇二%であるので、クレームの対象にはならないが混入率の少ないものを特に要望している。
七 食糧としての毒性は非常に軽微なものと考えられているので、具体的対策はとられていないが、加工工程においてはできるだけ精選分離を行い、精選かすは燒却処分するよう指示している。
飼料として家畜に対する影響は問題でないが、ただうまやごえ等によつて畑にさん布されることの危險はあるので、その対策は考究中である。
八 日本においてはきわめて例外的のことであるが、諸外国においては麦角の問題は常態的であり、その混入程度はおおむね許容限界内であるので、これに対して特殊の対策はとられていないようである。
国連機構において麦角の研究をしているかどうかはいまだきいていない。
右答弁する。