答弁本文情報
昭和二十八年六月五日受領答弁第四号
(質問の 四)
内閣衆質第四号
昭和二十八年六月五日
内閣総理大臣 吉田 茂
衆議院議長 堤 康次※(注) 殿
衆議院議員春日一幸君提出前国税庁長官の公職選挙法違反事件に関与せる大蔵省関係職員の身分及び氏名並びにその違反内容の報告を求むるの質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員春日一幸君提出前国税庁長官の公職選挙法違反事件に関与せる大蔵省関係職員の身分及び氏名並びにその違反内容の報告を求むるの質問に対する答弁書
前国税庁長官高橋衞氏の参議院議員選挙に関し、国税庁関係職員中より公職選挙法違反容疑者を出したことは誠に遺憾である。
一 イ 名古屋国税局長大蔵事務官久米武文については、とりあえず、昭和二十八年五月十六日付国家公務員法第七十九条第二号により休職を発令したが、更に事実を確認のうえ厳正なる処分を行う予定である。
ロ 厚狭税務署総務課長大蔵事務官徳田寿男
防府税務署直税課長大蔵事務官杉岡邦人
笠岡税務署間税課長大蔵事務官荒木精彌
右三名については、国税庁監察官の調査をまつて、いずれも厳正に処分する方針である。
ハ 徳山税務署長大蔵事務官田中啓二郎については、嫌疑により国警の取調を受けたが、その後国税庁の調査の結果によれば違反事実について嫌疑はなく、行政処分の必要を認めていない。
ニ 名古屋国税局調査査察部長大蔵事務官高宮亭二
一宮税務署長大蔵事務官佐※(注)富士雄
岩国税務署長大蔵事務官森山親孝
岩国税務署総務課長大蔵事務官足立庚三
右四名は、いずれも参考人として警察の取調を受けたが、公職選挙法違反についての嫌疑は全くなく、従つて行政処分の必要を認めていない。
二1 事件の内容
イ 名古屋国税局長久米武文は、公職選挙法違反容疑で四月二十二日逮捕され、警視庁及び東京地方検察庁により取調を受けた。その結果は昭和二十八年三月二十八日ごろ名古屋精糖株式会社取締役副社長岡本寛氏より高橋衞氏のために、選挙運動費用として現金二十万円を受け取り、これの措置につき単独の判断で三月三十日及び四月四日の二回にわたり、行政管理庁名古屋管区監察局総務課課長補佐丸山防人氏に対し、高橋衞氏の選挙運動を依頼して右の現金を渡した嫌疑により五月十四日国家公務員法及び公職選挙法違反のかどで起訴された。
更に、四月二日ごろ名古屋ジヤーナル社社長水野勝太郎氏より現金十万円を、また、四月十一日ごろトヨダ自動車販売株式会社より現金十万円を、いずれも高橋衞氏のための選挙運動費用として受領し、政治的行為をした嫌疑により、五月二十六日追起訴されたものである。
ロ 厚狭税務署総務課長徳田寿男は、時日不詳に酒造業者二名及び大理石採取業者に対し、高橋衞氏のための投票を依頼した嫌疑により国警の取調を受けたもので、目下なお調査中である。
ハ 防府税務署直税課長杉岡邦人は、昭和二十八年四月六日ごろ、佐波郡出雲村において酒類業者八戸を戸別訪問し、高橋衞氏のための投票を依頼した嫌疑並びに本人及び高橋衞氏の名刺十六枚を有権者に配付して、同じく投票を依頼した嫌疑により、国警の取調を受け、書類送検されたものである。
ニ 笠岡税務署間税課長荒木精彌は、昭和二十八年四月十三、十四日の両日にわたり、笠岡税務署管内小田郡北木島町、上島外村及び白石村において、酒販業者七名を戸別訪問し、高橋衞氏のために投票を依頼した嫌疑により、国警の取調を受け、書類送検されたものである。
ホ 徳山税務署長田中啓二郎は、昭和二十八年三月ごろ酒造業者に対し、高橋衞氏のための選挙運動を依頼した嫌疑により国警の取調を受け、本人否認のまま、四月二十二日書類送検されたものであるが、その後国税庁の調査の結果によれば違反事実についての嫌疑はない。
2 事件の防止対策については、高橋衞氏は国税庁開設以来三年七箇月の長い間、長官であつたことでもあり、国税庁としてはその職員の中にこのたびの選挙に関し、あやまつた行動に出る者があつてはならないと思い、先ず庁自体から自粛を促すはもとより各国税局に対しても会議等機会あるごとに、これが自粛につき厳重に指示してきたのであるが、右のような違反者を出したことは誠に遺憾である。今回の事例にかんがみ特に今後を戒めるため、違反者については、事件の真相確認次第厳正に処分を行うことの外、五月二十日監察官室長会議を開催して、不正事案の監察及び予防に遺漏のないよう厳達し、更に六月四日より三日間開催予定の国税局総務部長会議においては、部内監察の強化、非行事件に対する処分の励行等、職場規律の刷新方について徹底した指示を行い、今後再びかかることのないようにする所存である。
三 高橋衞氏後援会の性格は、その設立趣意書にもあるように同氏の出身地福井県の県人、また同氏の同窓生あるいは同氏のかつて勤務した台湾総督府時代の知人で、同氏の人格識見を慕う人々によつて構成され、もつぱら、同氏の社会的活動を後援する目的で設立されたものであつて、それは国税庁とはなんらの関係を有するものではない。
右答弁する。