答弁本文情報
昭和二十九年三月十六日受理答弁第一二号
(質問の 一二)
内閣衆質第一二号
昭和二十九年三月十六日
内閣総理大臣 吉田 茂
衆議院議長 堤 康次※(注) 殿
衆議院議員中村※(注)吉君提出農地法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員中村※(注)吉君提出農地法に関する質問に対する答弁書
一 農地法に基く農地の買収及び売渡は行政処分と解する。
二 国の行う農地の買収及び売渡が行政処分であるからといつて、行政庁がいつでもその買収又は売渡処分を取り消すことができるのではなく、その買収又は売渡処分に取消を必要とするようなかしが存在する場合にのみ処分行政庁は、その買収又は売渡処分を取り消すことができる。
三 国の行う売渡処分は、国民に対する利益処分であり、その売渡の取消によつて売渡の相手方の既得の権利利益を侵害することとなるから、その取消は、単にその売渡処分にかしがあつたからということのみでは行うことができず、その取消によつて売渡の相手方に与える権利、利益の侵害を正当化するだけの公益上の必要性がある場合にのみ行いうると解されている。
売渡の取消は、以上述べたとおりきわめて限られた場合にのみ行い得るものであり、一般的に売渡の相手方である耕作者の地位を不安定にするものではない。
四 埼玉県における売渡の取消事案については、その内容が明らかでないから質問書のみによりその当否を判断しがたい。
五及び六 国の行う農地の買収及び売渡は、都道府県知事の機関委任事務としてもつぱらその権限に属さしめているからその買収及び売渡の取消も原則としてもつぱら都道府県知事が行うべきものと解する。
都道府県知事がその取消をした場合、都道府県知事は、国の機関としてのその取消処分を行うものであり、従つてその最終的な責任は国に属するが、その売渡の取消処分を違法としてその取消を求める訴は、行政事件訴訟特例法第三条の規定により都道府県知事を相手方として提起されなければならない。
七 旧自作農創設特別措置法に基き、都道府県、農業委員会、市町村農業委員会は、農地等の買収計画、売渡計画を樹立、公告する権限を有したが、その権限に基き作成した買収計画又は売渡計画について取消を行う必要のあるかしその他取消を相当とする事情等があつた場合には、農業委員会法第四十九条の規定に基き、その取消につき都道府県知事の確認をうけて買収計画又は売渡計画を取り消すことができる。
右答弁する。