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答弁本文情報

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昭和三十四年二月六日受領
答弁第二号
(質問の 二)

  内閣衆質三一第二号
    昭和三十四年二月六日
内閣総理大臣 岸 信介

         衆議院議長 加(注)鐐五(注) 殿

衆議院議員石野久男君提出朝鮮問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員石野久男君提出朝鮮問題に関する質問に対する答弁書



一 わが国が韓国との間に諸懸案を解決し国交を正常化する目的をもつて交渉を行つているのは、同国と善隣友好の関係を樹立し東亜の安定と平和に貢献したいとの念願によるものであり、交渉の相手方である韓国政府も同様の精神をもつて交渉に臨んでいると確信している。

二 国連総会は、千九百四十七年十一月十四日の決議(一一二(II))によつて、朝鮮の統一と独立は自由選挙によつて選ばれた代表により構成される国民議会を基盤として実現されるべきことを認め、この自由選挙監察のための国連臨時朝鮮委員会を設置した。しかしながら、ソ連等の非協力の結果、国連監察下における自由選挙は南鮮においてのみ実施され、この結果、翌千九百四十八年十二月十二日第三総会決議一九五(III)において大韓民国政府が、朝鮮において国連監察下に実施された自由選挙に基く、唯一の合法的政府であることが宣言されている。一方、千九百五十年六月における北鮮からの武力侵入は平和の破壊を構成するものと安保理事会により認定せられ、朝鮮に対する国連軍の派遣を招いたことは周知の事実である。
  早期に朝鮮が統一され、統一朝鮮の国連加盟が実現することが望ましいことはもちろんであるが、共産政権側は武力侵入により朝鮮戦争を引き起した上、(1)国連が平和回復のため集団的措置をとり、また、朝鮮における平和的解決のためあつせんを行う十分かつ正当な権限を有すること、(2)国連の監視下に実施される自由選挙により朝鮮の統一を図ることの二原則に関する累次の国連総会決議を受諾しないため、朝鮮の統一は不当に遅延しているという状態である。このような現状において、いつまでも朝鮮人民の大多数を代表し、国連によつても合法政府として認められている政府を有する韓国を国連の外に取り残して置くことは適当でないと考え韓国の国連加盟の共同提案に参加している次第である。

三 政府は在日朝鮮人の帰還問題は、基本的人権に基く居住地選択の自由という国際通念に基いて処理せらるべきであると考えており、北鮮帰還希望者の実情の調査と各個人の意思の確認を行うために近く赤十字国際委員会の厳正かつ中立的な協力を要請する考えである。

四 日本政府としては、釜山に収容されている日本人漁夫と大村入国者収容所に収容されている朝鮮人の釈放問題を相関的に考えたことはなく、またこれを日韓会談の取引の材料に利用しようと考えたこともないし、利用したこともない。右抑留日本人漁夫の問題と大村被収容者の問題の両者は全く別個のものと考えている。
  すなわち大村収容所に朝鮮人を収容しているのは、国際法上の通念ならびに国内法に基いて強制退去すべきものを送還までの間一時的に収容しているのであつて当然の措置である。したがつて韓国側が引取りに応じさえすればいつにても引渡す用意がある。しかるに、韓国側が言を左右にして引取を拒否しているので送還業務が一時停滞しているのは、きわめて遺憾である。
  また一方、釜山に抑留されている日本人漁夫の問題は、これこそ真に人道上の問題であつて、韓国側は、刑期が終了したものすら送還せず長期に抑留している。このことは韓国側が大村収容所収容問題と相関的に考えているのではないかと疑わしめるのである。日本側としては純粋に人道上の問題としてその釈放送還方を過去において強く要求して来たしまた今後も要求を続ける所存である。
  そのようなわけであるから、大村収容所収容中の朝鮮人を国内に釈放することは、韓国政府の入境許可が容易に入手できない現実に照らし、ただいたずらに不法入国者を国内にかかえこみ、密入国、密貿易を助長するのみという結果を招来するものと憂えられるので、人道上の考慮を要するものは格別、原則としては収容を継続するのほかはない。

五 国連は千九百四十八年十二月第三総会の決議によつて韓国政府を、朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に有効な支配と管轄権を及ぼし、かつ右地域の人民の自由な意思の表明である選挙に基礎を有している合法政府であること及びこの政府が朝鮮における唯一のこの種の政府であることを認めており、わが国は国連決議の線にそつて韓国政府が朝鮮における唯一のこの種の合法政府であるとの建前をとつている。
  したがつてわが国としては右建前の下に日韓会談を通じて韓国政府と国交を樹立する方針であり、北鮮と経済文化の交流を行うことは現在のところ考えていない。

 右答弁する。




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