衆議院

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昭和三十四年十二月二十五日受領
答弁第二号
(質問の 二)

  内閣衆質三三第二号
    昭和三十四年十二月二十五日
内閣総理大臣 岸 信介

         衆議院議長 加(注)鐐五(注) 殿

衆議院議員北條秀一君提出在外公館借入金等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員北條秀一君提出在外公館借入金等に関する質問に対する答弁書



一 在外公館借入金の完済について

 在外公館等借入金の返済の実施に関する法律(昭和二十七年法律第四十四号)により定められた在外公館等借入金債務額の確定のための基準は、在外公館等借入金の返済の準備に関する法律(昭和二十六年法律第五十四号)第二条の趣旨にそつて、国民負担の衡平の見地から定められた公正かつ妥当なものであるから、この基準を変更する考えはない。

二 インド国よりの引揚者の在印財産について

 昭和三十三年七月十五日インド政府は日印平和条約第四条の規定に基づき、その管理下にあつた在印日本財産を原所有者に返還することとした。返還財産の内容は、

預   金 二四二口
  総   額   一四、八九八、七〇九ルピー(邦貨換算約一一億二千六百三十万円)
  株   式   一九七、一三一株
  公   債   二口
  建   物   一件

であるが、これらの財産のうち、すでに受領権利者が明らかにされているものについては、ただちにインド政府当局より返還が行なわれたが、その他の財産については、両国政府当局が協議の結果、次の要領によつて返還を行なうこととした。
(イ) 日本政府当局においてこれらの財産の受領権利者をさがした上で、その身許確認を行なう。
(ロ) 右の手続を了した分の財産について、日本側よりインド政府当局に通報する。
(ハ) インド政府当局は、右の通報をうけた財産についてそれぞれの受領権利者に返還する。このようにしてすでに個々の受領権利者に対し返還が行なわれた財産は、

預   金 一七三口
  総   額   一四、八一九、九八二ルピー(邦貨換算約一一億二、〇三〇万円)
  株   式   一九七、一三一株
  公   債   二口
  建   物   一件

となつており、いまだ返還の行なわれていない財産は、預金六九口、総額七八、七二八ルピー(邦貨換算約六〇〇万円)のみである。これらの財産については、目下関係事務当局において、受領権利者の発見ならびに身許確認に努めている。
 なお、返還財産については、インド政府は、同国の外貨事情にもかんがみ、できればインド国内で投資されることを希望しており、また、これら財産の大口所有者(主として商社)の大部分は上記インド側の希望に応じて、インド国内における経済協力のため使用することを計画している。

三 アメリカ引揚者の在米財産について

 第二次大戦中米国政府に接収された在米財産は、対日平和条約により、その処分権が米国にゆだねられたまま現在に至つている。
 その後米国内において私有財産尊重ないしわが国との友好関係促進の見地より在米資産を返還すべしとの声が起り、以来米国議会において種々の在米財産返還法案が提出されるに至つたが、これまでのところ、いずれの法案も審議未了のまま通過するに至つていない。
 ドイツの場合も事情は日本と同一であつて日独の資産を差別しドイツのみを優遇する法案は提出されていない。一部返還されたというのは、戦時中引き続き米国に滞在した旧所有者に対して返還されたのであり、この点はドイツのみでなく、わが国の場合も同様である。
 なお、政府としては、前記平和条約の建前上直接対米折衝を行ないうる立場にはないが、機会あるごとに米側にわが方の立場を説明、これが返還実現に努めている。

四 戦前中国における生命保険契約について

 戦時の中国における生命保険契約は、戦後金融機関再建整備にあたつて、金融機関経理応急措置法(昭和二十一年法律第六号)及び同法施行令(昭和二十一年勅令第三百九十号)の規定に基づいて、内地契約と同一の原則により、保険金額一万円以下の部分については、円貨をもつて支払われた。したがつて、中国においてなされた契約について、その限度額を引き上げる等特に優遇する措置を講ずることは適当でないと考える。
 また、保険金額一万円超の部分については、前記再建整備にあたり棚上げされ、その後棚上げ部分につき通貨別に定めた為替換算率を適用して得られた金額が円貨で支払われた。これは終戦時における銀行の未払送金為替の換算率等当時の実勢換算率を勘案すれば公正かつ妥当なものであり、なんら不当な取扱ではなかつたと考える。
 したがつて、戦時中国における生命保険契約に関する戦後処理についてなんらの変更を加える意思はない。

五 旧満鉄及び華北交通社員中の軍属者の処遇について

 旧南満州鉄道株式会社及び旧華北交通株式会社の社員のうち、旧陸海軍の要請により戦闘に参加したと認められる者は、すでに戦傷病者戦没者遣族援護法(昭和二十七年法律百二十七号)において準軍属として措置しているところであり、これらの会社の社員のみ他の一般戦争犠牲者と異なる処遇を講ずることは、臨時恩給調査会の報告の趣旨からも、妥当ではないと考える。

六 在外財産問題審議会の復活について

 韓国所在の日本人財産は、在韓米軍政府の命令により、米軍政府に帰属せしめられた後、米韓協定により韓国に移譲されたものであり、わが国としては、サンフランシスコ平和条約第四条(b)の規定により上記米軍政府の処分の効力を承認しているが、この結果当該財産の所有者が損害を受けることがあつても、それは同条約第十四条(a)の規定による在連合国日本人財産の場合と同様、あくまで当該連合国の主権に基づいてなされた処分であつて、わが国政府の処分によるものではないから、政府として補償の責を負うものではないと考えている。しかしながら、現実には多数の在外同胞が生活の本拠としていた外地からほとんど無一文で引き揚げてきた実情にかんがみ、政府は昭和三十一年二月の在外財産問題審議会の答申に基づき、昭和三十二年五月引揚者給付金等支給法を制定して、外地からの引揚者へ引揚者給付金を支給することとした次第である。
 また、樺太、満州、中国に所在する日本人財産については将来いかなる措置がとられるかは不明であり、現在回答できる段階に至つておらないが、これらの地域からの引揚者に対しても引揚者給付金が支給されていることはいうまでもない。
 以上のような次第であり、また在外財産問題審議会は一応その使命を果たして解散したことでもあるので、あらためて在外財産問題審議会のような機関を復活する必要はないと考える。

 右答弁する。


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