答弁本文情報
昭和三十五年十月二十二日受領答弁第二号
(質問の 二)
内閣衆質三六第二号
昭和三十五年十月二十二日
内閣総理大臣 池田勇人
衆議院議長 ※(注)※(注)一※(注) 殿
衆議院議員濱地文※(注)君提出伊勢の神宮に奉祀されている御鏡の取扱いに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員濱地文※(注)君提出伊勢の神宮に奉祀されている御鏡の取扱いに関する質問に対する答弁書
一 伊勢の神宮に奉祀されている神鏡は、皇祖が皇孫にお授けになつた八咫鏡であつて、歴世同殿に奉祀せられたが、崇神天皇の御代に同殿なることを畏みたまい、大和笠縫邑に遷し奉り、皇女豊鍬入姫命をして斎き祀らしめられ、ついで、垂仁天皇は、皇女倭姫命をして伊勢五十鈴川上に遷し奉祀せしめられた沿革を有するものであつて、天皇が伊勢神宮に授けられたのではなく、奉祀せしめられたのである。この関係は、歴代を経て現代に及ぶのである。したがつて、皇室経済法第七条の規定にいう「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」として、皇居内に奉安されている形代の宝鏡とともにその御本体である伊勢の神鏡も皇位とともに伝わるものと解すべきであると思う。
二 伊勢の神鏡は、その起源、沿革等にかんがみ神宮にその所有権があると解し得ないことは明らかであると思うが、これを民法上の寄託等と解するかどうかの点については、なお慎重に検討を要する問題である。要するに、神宮がその御本質を無視して、自由に処置するごときことのできない特殊な御存在であると思う。
三 神鏡の御本質、沿革等については、神宮当局の十分承知しているところであり、神宮は、従来その歴史的伝統を尊重してきたが、新憲法施行後においても、神宮に関する重要事項はすべて皇室に連絡協議するたてまえになつている次第もあり、現状においては特にあらためて心得等を指示される必要はないと思う。
右答弁する。