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答弁本文情報

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昭和四十三年四月十九日受領
答弁第九号
(質問の 九)

  内閣衆質五八第九号
    昭和四十三年四月十九日
内閣総理大臣 佐藤榮作

         衆議院議長 石井光次郎 殿

衆議院議員田中武夫君提出政府の金買上げ価格等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員田中武夫君提出政府の金買上げ価格等に関する質問に対する答弁書



一 政府が新産金の一部を強制的に買い上げることは、対外決済の準備に充てるため、法律の規定に基づいて行なうものである(金管理法第一条)。従つて、政府が強制的に買い上げること自体については、違憲の問題を生ずる筈がない。
  次に、その場合の金の買上げ価格は、一グラムにつき四〇五円と定められているが(金管理法第四条)、この買上げ価格は、金の正当な価格と言うべきである。けだし、国際通貨基金協定第四条第二項においては、「………加盟国は、平価に所定のマージンを加えた額をこえる価格で金を買い入れ、又は平価から所定のマージンを差し引いた額未満の価格で金を売つてはならない。」と定められているが、この規定をまつまでもなく、一グラムにつき四〇五円という価格は、一オンス三五ドルという通貨用金の国際価格及び一ドル三六〇円というわが国の基準外国為替相場(外国為替及び外国貿易管理法第七条)からおのずから算定される数字であり、また、一グラムにつき四〇五円という価格は、国際自由価格ともほぼ等価の関係にあり、金の輸入及びその国際間における流通が自由であるとした場合の国内価格もこの国際自由価格とほぼ同一になると考えられるからである。
  従つて、「現在、日本の産金コストはグラム約七〇〇円が常識である」ということの当否は別として、たとえ産金コストが政府の買上げ価格を上回つているとしても、理論上の問題はなく、その上回ることについてどのように対処すべきかは、政策上の問題である。
  以上述べたところにより、政府の買上げ価格一グラムにつき四〇五円が憲法第二十九条第三項に規定される「正当な補償」に当らないとすることはできない。
  ただ、金投機等により、金の国際自由価格が一グラムにつき四〇五円を恒常的に上回ることになり、金の輸入及びその国際間における流通が自由であるとした場合の金の国内価格が一グラムにつき四〇五円とほぼ等価の関係に立つことが期待できないことになれば、産金業者は、強制買上げの制度がない場合においてはその分の金を一グラムにつき四〇五円を上回る価格で販売できることになる筈である。従つて、そのような事態においては、政府が一グラムにつき四〇五円で買い上げることについて検討を要することになるが、それはあくまで金投機等に伴う新規の問題である。
  (注)所定のマージンとは、金価格の一パーセント又は四分の一パーセントプラス輸送料等のいずれかを加盟国が選択することとなつている。

二 政府が行なう新産金の強制的買上げは、一に述べたとおり対外決済の準備に充てるため、法律の規定に基づき行なうものであるから、理論的には、産金業者が自由に販売できる金量に係る価格と、憲法第二十九条第三項の規定とは直接関係はないと解される。
  もつとも、政府が買い上げる金量を決定するについては、これまで、産金コストの動向をも参酌のうえ、産金業者の手取りが総体として何ほどになるかについて考慮を払つて来たことは事実である。

三 既に述べたとおり、国際通貨基金協定第四条第二項においては、「………加盟国は平価に所定のマージンを加えた額をこえる価格で金を買い入れ、又は、平価から所定のマージンを差し引いた額未満の価格で金を売つてはならない。」と定められており、また、一九四七年の基金理事会の決議によれば、金生産に対して補助政策をとろうとする国は、あらかじめ基金と十分協議しなければならないこととされている。IMFに加盟しているわが国として、協定又は右の決議に拘束されることはあらためて言うまでもないところである。

四 最近、金の密輸事犯が相当摘発されているが、昭和四十二年度からは、需給の不均衡に対処して、政府が海外より金を輸入しこれを払い下げることとし、今後とも必要に応じ輸入をふやし、産業用金の需要をみたしていく方針である。
  これまでの産金政策は、国内金鉱山維持のために必要なものであつたと考える、今後の産金政策としては、従来行なつて来た金鉱山助成のための新鉱床探査補助金の活用に加えて、昭和四十三年度から新たに効率的な探鉱の実施に資するため、金属鉱物探鉱促進事業団に基礎的な地質構造調査を行なわせることとしている。

五 海外自由金市場における産業用金の価格は、現在のところ、従来より若干上回つて、いるが、昭和四十三年度の予算には、国内新産金の買入れ分と併せて一四トン分の海外購入を予定して約五八億円が計上されているほか、約一二億円の予備費も計上されており、また、弾力条項もあるので、当初の予定どおり一四トンの購入は可能であると考える。
  また、この程度の購入量は、世界の生産量から見てわずかであり、海外自由金市場においてこれを購入することは困難ではないと考える。
  なお、海外自由金市場での購入は、市場の動向をみながら、できるだけ安い価格で行なうことを考えている。

 右答弁する。




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