答弁本文情報
昭和四十七年七月十八日受領答弁第五号
内閣衆質六九第五号
昭和四十七年七月十八日
衆議院議長 ※(注)田 中 殿
衆議院議員池田※(注)治君提出当面の緊急政治課題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員池田※(注)治君提出当面の緊急政治課題に関する質問に対する答弁書
一について
1(1) 事前協議制度とは、安保条約第六条の実施に関する交換公文に列記されている三項目(すなわち、配置における重要な変更、装備における重要な変更およびわが国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての施設・区域の使用)については、米軍がそのいずれかに該当する行動をとろうとするときはあらかじめわが国と協議することを米国に義務づけたものである。
今回のB52の沖繩への一時飛来は、そのいずれにも該当するものではなくこれをもつて事前協議制度の空洞化というのは全く当たらない。
(2) いわゆる「拒否権」を拒否することができる権利と解するならば、安保条約下の事前協議制度の下においてわが国がかかる権利を有することは従来から政府が繰り返して明らかにしてきた通りである。
(3) 事前協議制度とは、(1)に述べたとおり、交換公文列記の三事項のいずれかに該当する行動を米軍がとろうとする場合にわが国とあらかじめ協議することを米国に義務づけたものであるから、かかる義務を負つている米国が、これらの行動をとろうとすれば、右の義務を履行するためにわが国に協議してくるべき性質のものである。
(4) 事前協議制度は、国際法上「制度」として一般的に存在するものではないので、かかる「制度」につき一般的に論ずることはできないが、日米安保条約下の事前協議制度は日米安保条約の実施にかかる約束ごととして日米間で合意されたものであつて、これに基づく義務の誠実な履行は当事国にとり一般国際法上の義務である。
2 国際連合の集団措置に基づく場合または自衛権の行使の場合以外の武力行使が禁じられている国際連合憲章下においては、米軍の行動は、そもそも相手国からの侵略行為があつた場合にのみ行なわれるものであり、かかる侵略を排除するための米軍の行動がわが国の施設・区域の使用を伴うことがあつても、米軍の行動の相手国がわが国に対し報復攻撃を行なうことはわが国に対する侵略であり、国際法上認められない。
3 政府としては、事前協議制度の運用について検討するとともに、米側とも適当な機会に話し合う考えであるが、米側との話合いは、双方の都合から本年秋頃となる見込みである。
1 最近の中国をめぐる国際情勢の新たな進展及び国内世論の動向にかんがみ、政府としては、今や日中国交正常化の機が熟しつつあると考える。日中国交正常化はわが国国民多数の希望するところであり、かつ、これがアジアの緊張緩和に資するゆえんであるという観点から政府としては、国民各層の広い支持を得て、国交正常化の具体策を着実に進めてゆく考えである。
2 政府は由来、一貫して平和に徹する外交を自主的に推進してきた。
いわゆる平和共存五原則の考え方は、国連憲章の原則にも合致し、かつバンドン十原則にも含まれているところであるから、政府としてはこのような考え方に基づいて日中国交正常化を図ること自体には何ら異存はない。
3 台湾の法的帰属、日華平和条約等に関し、中華人民共和国側が提示した、国交正常化に関する、いわゆる三原則については、基本的認識としては、政府としても、これを十分理解できるので、広く国民各層の意見も十分考慮しつつ、日中双方が合意しうるような具体策を検討してまいりたいと考えている。
4 戦前、戦中の一時期、日中関係が不幸な状態にあつたことは、遺憾ながら、事実として認めざるをえず、われわれとしては、わが国が中国人に多大の迷惑をかけたことを謙虚に反省すべきであると考える。このような反省を具体的にいかなる形で表わすかという問題は日中国交正常化の過程で解決したいと考えている。
5 政府としては、今や日中国交正常化の機が熟しつつあるという判断の下に、国交正常化を着実に推進してゆく方針である。中華人民共和国側が提示したいわゆる国交正常化に関する三原則については、基本的認識としては、政府としても、これを十分理解できるので広く国民各層の意見も十分考慮しつつ、日中双方が合意しうるような具体案を検討してまいりたいと考えている。
6 政府としては、日中国交正常化を推進してゆくに際し、台湾における邦人およびわが国資産の保護等の問題についても、細心の配慮をしたいと考えている。
1 国鉄財政が危たいにひんしている現状にかんがみ、国鉄財政再建対策を強化する必要があるので、できる限り早い機会に国鉄再建関連法案を国会に提出したい。
2 国鉄財政の再建対策としては、国の財政措置の大幅な増額、国鉄の近代化、合理化努力の徹底とあわせて運賃水準の適正化を図ることが最も当を得た措置であると考えており、今後もこれらの施策を総合的に講ずることによる再建の推進を図る方針である。
3 再建施策の具体化にあたつては、前記の考え方に基づいて行なう所存である。
昭和四十七年七月豪雨による災害に対しては、政府としては、七月八日、災害対策基本法第二十四条の規定に基づき、総理府に、総理府総務長官を長とする昭和四十七年七月豪雨非常災害対策本部を設置し、関係省庁、地方公共団体および公共機関の実施する災害応急対策の総合調整にあたらせているところである。
当面の対策について、大要、次のような方針を決定し、関係省庁に指示した。
(一) 関係省庁において早急に被災現地を調査し、被害の実情に即した対策を実施すること。
(二) 災害復旧事業の査定を急ぎ、すみやかに事業に着手することができるよう措置すること。
(三) 農業共済に係る共済金の支払い(仮払いを含む。)を早期に行ないうるよう措置すること。
(四) 激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法等の適用の検討を急ぐこと。
(五) 危険地域の総点検を急ぐとともに、住民に対する避難の指示について適切な措置を講ずること。
(六) 当面の被災者の救出にあたる消防、警察、自衛隊等の活動について、相互の連絡を密にし、被災者の救出に遺憾なきを期すること。
なお、政府としては、死者、行方不明が多数におよんだ今回の災害の実情にかんがみ、災害弔慰金補助制度を創設し、今回の災害から適用することとした。
国民皆保険の実現した今日、真に国民連帯意識を基調とする皆保険の名に値するよう、医療保険制度のあり方に改革を加え、保険給付、保険料負担の両面にわたつて格差・不均衡を是正しつつ、いよいよ重要性を増してきた国民医療の確保の観点から、医療保険の一層の充実発展を図ることは急務である。このような考え方に立つて、昭和四十八年度から漸進的に改革を実施するため、第六十八回国会に抜本改正法案を提出したが、廃案となつたところであるので、財政対策法案との関連も考慮しながら、できるだけ早い機会に国会に提出いたしたいと考えている。