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答弁本文情報

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昭和四十七年七月十八日受領
答弁第七号
(質問の 七)

  内閣衆質六九第七号
    昭和四十七年七月十八日
内閣総理大臣 田中(注)榮

         衆議院議長 (注)田 中 殿

衆議院議員松本善明君提出当面する内外の緊急問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員松本善明君提出当面する内外の緊急問題に関する質問に対する答弁書



一について

 ヴィエトナム紛争は、その性格および態様上極東全体の平和と安全に影響を与えずにはおかないものであり、その意味において、米軍がヴィエトナム紛争に対処する措置との関連でわが国の施設区域を使用することは、安保条約第六条に照らし、許容されるところである。
 なお、ヴィエトナムにおける軍事行動は、米中、米ソ首脳会談、パリ和平会談、その他各種の外交的接触等、インドシナをめぐる国際情勢の動きとも密接に関連しているものであるが、わが国は、これらの動きを詳細に知りうる立場になく、また、ヴィエトナム紛争の直接当事者でもないので、個々の軍事行動につきコメントする立場にない。

二について

 1、2および3 今回のB52の沖繩への一時的飛来は、グァム島附近の台風のため同島の基地に帰投できなくなつたという事由に基づくものであり、気象条件の好転に伴い、全機グァム島に向け沖繩を離れた。以上のことは米側からの通報により承知するところであるが、当時のグァム島附近の気象条件については、政府としても自ら確認している。

 4 一般に米軍機の施設・区域への出入は、安保条約の目的に合致する限り、地位協定上認められているところであり、また、今回のB52の一時的飛来は事前協議の対象となるものではないが、政府としては、B52に対する国民感情にかんがみ、米側に対して、かかるわが国の国民感情を十分認識の上悪天候の場合の避難など真に必要やむをえない場合以外にはB52をわが国に飛来させないこと、ヴィエトナム爆撃の帰途に飛来することが定型化することのないようにすること、またB52をヴィエトナム爆撃のため沖繩に常駐させることは絶対にないよう申し入れており、これに対して米側は、B52のわが国への飛来は悪天候その他緊急な場合のみに厳に限ること、B52をわが国から戦闘作戦行動のために発進させることは決してしないことを確約している。
   なお、政府としては、わが国の安全を確保するためには安保条約を必要とするとの考えに立つものであり、B52の飛来をやめさせるため安保条約を廃棄するという考えをとることはできない。

三について

 今回の災害の主因は異常かつ突発的な豪雨によるものと考えるが、さらに原因を十分に調査し、国土と国民の生命・財産を守るために万全の措置を講ずる所存である。
 この災害による被災者に対しては、すでに七月十五日現在において一府十五県内の百二十二市町村に災害救助法を適用し、収容施設の供与、炊出しその他による食品の給与および飲料水の供給、被服、寝具その他生活必需品の給与等必要な救助を行なつているところであるが、さらに被害の実態に即して、次のような措置を講ずることにより、被災者の救済を図る所存である。

 イ 世帯更生資金の貸付け
 ロ 災害公営住宅の建設
 ハ 災害復興住宅融資
 ニ 国税および地方税の減免、徴収猶予等
 ホ 天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法による経営資金の融通
 ヘ 農林漁業金融公庫法による災害復旧資金の融通
 ト 自作農維持資金の貸付け
 チ 中小企業信用保険法による災害関係保証
 リ 中小企業近代化資金等助成法による貸付けおよびその償還の免除等
 ヌ 商工組合中央金庫による資金の貸付け
 さらに、これら既存の制度による措置のほか、新たに、大規模な災害を受けた市町村の支給する災害弔慰金に対する国庫補助制度を創設し、今回の災害から適用することとしたところである。

四について

(1) 政府としては、官庁保有自動車に率先して自動車排出ガス清浄装置を取り付ける方針であり、各省庁において、現在、本装置の取付けを急いでいるところである。

(2) 自動車排出ガス清浄装置は、現在、光化学スモッグの原因であるとされている炭化水素および窒素酸化物に対して有効に作用する性能のものが開発されつつあるが、現段階では技術上かなりの問題点がある。
    しかし、短期間であれば、現在の清浄装置によつても排出ガスの減少に寄与すると考えられるので、光化学スモッグの発生する夏期については、十分な技術的管理が行なえる自動車使用者に対して必要な指導のもとに本装置の取付けを勧奨している。

(3) 現に光化学スモッグの被害を受けた学校等については、学校設置者の申請にもとづき空気浄化装置についての国庫補助について配慮する。
    なお、私立学校に関しては、公害対策のため、施設設備を整備する場合には、日本私学振興財団を通じて長期低利の融資をすることとしている。
    また、学校における「公害問題」に関する教育については、公害問題に関する教育の重要性にかんがみ、先般来の小学校、中学校、高等学校の教育課程の改訂に当たつて児童生徒の心身の発達段階に応じて、公害問題に関する指導がいつそう適切に行なわれるように措置した。
    これらの施策のほか、文部省体育局長から各都道府県教育委員会教育長および各都道府県知事に対し「オキシダントによると思われる公害発生の際の措置について」通知し、光化学スモッグ発生時における児童生徒に対する学校の適切な措置について具体的に指導を行なうとともに、これら大気汚染地域の公立の小学校および中学校の児童生徒を対象として特別健康診断および健康増進特別事業(移動教室)を市町村が実施するために必要な経費の一部を補助しているが、今年度は、これらの事業をさらに拡充して補助することとしている。

(4) 光化学スモッグについては、その発生機構、人の健康への影響等を中心に試験研究を推進しているが、光化学スモッグ問題の緊急性から、今夏、政府においては環境庁が中心となり関係地方公共団体と共同して総合的な調査を実施することとしている。この調査は、医学関係、化学分析関係、気象関係等の学者、研究者、技術者等広く協力を求めて衆知を結集して具体的調査計画の検討、策定を行ない、さらに、調査の指導、調査結果の総合的な解析評価を行なうこととしているものであり、その結果については公表の原則を貫ぬいてまいりたい。

(5) 光化学スモッグの人体影響は一過性のものと考えられており、その精細な所見が得られていないので、現在、健康被害の実態を把握するとともに、医学専門家に対し疾病の態様等に関して検討を願つている。
    また、光化学スモッグが予想される地域においては、医療機関、救急機関等の連絡協力体制の強化確立を図り、光化学スモッグによる健康被害者の医療救急に万全を期してまいりたい。

(6) 政府としては、最近における光化学スモッグ発生の状況にかんがみ、暫定的対策の一環として自動車使用者に対して自動車排出ガス清浄装置の取付けを指導しているところである。
    しかしながら、本装置には、浄化効率、耐久性、関連公害の発生等技術的な問題点が残されているので、自動車の使用者に対し、本装置の取付けを義務づけるまでにはいたつていない。
    したがつて、現在ただちに本装置を取り付けていない自動車の通行を禁止することは、適当でない。

(7) 不要不急の自動車の都心部乗り入れを抑制し、日常の自動車の交通量を削減するため、マイカーが集中的に駐車している路線および地域に対し駐車禁止規制を強化するとともに違反車両に対しては、レッカー車による移動措置を主体とした取締りを強力に推進しているところである。
    警視庁においては、現在、八十七台のレッカー車を配備しているが、さらに二十台増強するとともに、取締り用ミニパトカーを七月中に各署に増強配備し、駐車禁止規制の拡大とその取締りを強化しているところである。
    なお、警視庁における本年の駐車違反検挙件数および移動措置の状況は、次のとおりである。

駐車違反検挙件数および移動措置の状況


(8) 光化学スモッグ対策としての交通規制の種別には、恒常的な規制と緊急時の臨時規制があり、また、規制の方法としては、間接規制と直接規制がある。
    オキシダント濃度が〇・五PPM以上となるような場合で、広域にわたつて甚大な人身上の被害が生ずるような緊急時に、そのもつとも著しい発生源とみられる地域および時間帯について、直接規制を行なうことは考えられるが、その実効を期するためには、発生源と大気汚染の因果関係をすみやかに究明する必要がある。
    したがつて、政府としては、都市における日常の自動車交通量を削減するため、駐車禁止規制、バス優先(専用)レーンの設定およびスクール・ゾーンを中心とする歩行者用道路の設定等、恒常的な間接規制が光化学スモッグ対策としてのみならず、都市における交通事故防止、交通の円滑化のためにも、もつとも有効適切な規制であると考えており、これらの規制を強力に推進中である。

(9) オキシダント等の緊急時の汚染レベルは、大気汚染防止法第二十三条に基づいて政令で設定されているが、この基準については、専門家の意見を徴し設定したものである。今後とも汚染レベルとそれによる影響との関係について十分検討を行ない、必要があれば、これらの基準についても所要の改訂をいたしたい。

(10)イ 自動車排出ガスの規制については、昭和四十八年度から光化学スモッグ原因物質であるとされている炭化水素および窒素酸化物を中心に規制の強化を図ることとしている。また、昭和五十年度以降においては、米国の一九七〇年大気清浄法改正法(マスキー法)が予定している自動車排出ガスの規制値を十分考慮した自動車排出ガスの許容限度の抜本的強化を図る必要があるとの基本認識に立つて、現在、その方策を中央公害対策審議会において審議を進めてもらつており、この答申をまつて早急に所要の措置を講ずることとしたい。
    ロ 窒素酸化物として二酸化窒素およびオキシダントについての環境基準の設定については、中央公害対策審議会において慎重に審議が進められている。政府としては、この答申を得次第すみやかにこれらの環境基準の設定を行なうことにしている。また、光化学スモッグ関連物質としての炭化水素については、本年中に環境基準設定のための検討をはじめることとしている。

(11) 光化学スモッグ防止のため排出規制等の措置については、すでに、自動車排出ガスとしての炭化水素の排出規制を強化するとともに、二酸化窒素およびオキシダントに係る緊急時の措置基準を定め、ばい煙の排出量または排出濃度の減少措置、ばい煙発生施設の使用制限等の要請または命令を行なうよう措置している。また、窒素酸化物については早急に環境基準を定め、これに基づく排出基準を設定することとしている。
     さらに、政府においては、環境庁が中心となり、関係都県と共同して光化学スモッグの発生機構等の解明のための総合調査を実施し、その成果もふまえて、すでに設置している光化学スモッグ対策推進会議の場を活用し総合防止対策の確立のための検討を進めることとしており、大気汚染防止法の改正については、その一環として今後検討してまいりたい。

(12) 光化学スモッグ対策についてはその緊急性にかんがみ、昭和四十六年度予備費一億二千万円を使用して本年度の光化学スモッグ総合調査の準備を進めてきており、本年度においては、これらとあわせて、光化学スモッグの総合調査を一億円計上して実施することとしている。また、地方公共団体の監視測定体制の整備についても計画的に助成するための予算を計上しているところである。一方、窒素酸化物およびオキシダントの環境基準の設定の検討、自動車排出ガス低減の抜本的方策および固定発生源からの窒素酸化物対策等の検討、光化学スモッグの発生機構および人の健康への影響に関する調査研究についてもその推進を図つているところである。今後においても、これらの対策の実施状況を勘案しつつ所要の措置を講じてまいりたい。

 右答弁する。




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