答弁本文情報
昭和五十年一月二十一日受領答弁第二号
内閣衆質七五第二号
昭和五十年一月二十一日
衆議院議長 前尾繁三郎 殿
衆議院議員※(注)崎弥之助君提出核兵器積載艦船の我が国領海内通過をめぐる政府統一見解に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員※(注)崎弥之助君提出核兵器積載艦船の我が国領海内通過をめぐる政府統一見解に関する質問に対する答弁書
一について
安保条約第六条の実施に関する交換公文中の「同軍隊の装備における重要な変更」にいう「同軍隊」とは、安保条約の適用を受ける合衆国軍隊を意味するものであつて、我が国に配置された合衆国軍隊に限定されるものではない。このことは交換公文の文脈上明白であつて、政府が現行安保条約の承認を求めた第三十四国会以来繰り返し明らかにしているところであり、この点につき米国政府より異議が提起されたことはない。
1 安保条約第六条の実施に関する交換公文にいう「装備における重要な変更」とは、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」をいうことが当時の交渉当事者である藤山外務大臣とマッカーサー米国大使の間で、口頭で了解されており、統一見解における「核の持込み」は「装備における重要な変更」に該当することはいうまでもない。
2 常時核装備を有する軍艦については、その我が領海通過や我が国への寄港は核の持込みに該当すると考えられる。
3 一般国際法上、特定の通航が無害通航に該当するか否かについては、領海条約に規定する一般的基準の枠内において、いかなる通航が無害であるかを認定する第一次的な判断は沿岸国にゆだねられていると解される。
4 統一見解第一項については前記3のとおりであり、また、同第二項については、事前協議の対象となる「装備における重要な変更」とは「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」をいうことが日米間で明確に了解されていることは、前記1のとおりであつて、第二項は、この了解の内容によつているものにほかならない。
以上のとおり、統一見解の内容は明確であつて、改めて米側と確認合意するという問題は生じないと考える。
5 事前協議の解釈に関して、改めて米国政府と再調整する考えはない。
6 海洋法会議における領海問題については、国際海峡の取扱いの問題等もあり、この問題に関する国際合意が行われる場合にそれがどのような内容のものとなるかが明らかとなつた段階で検討する所存である。
7 我が国としては常時核を搭載した外国軍艦の領海通航は無害通航に当たらないとの立場をとつているのであるから、かかる軍艦が我が領海を通航するに当たつては無害通航を認められず、したがつて我が国の通過許可を求めるべきものと考えられるところ、その場合、我が国としてはかかる軍艦の領海通航を拒否することとなろう。