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答弁本文情報

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昭和五十一年五月二十一日受領
答弁第七号
(質問の 七)

  内閣衆質七七第七号
    昭和五十一年五月二十一日
内閣総理大臣 三木武夫

         衆議院議長 前尾繁三郎 殿

衆議院議員金瀬俊雄君提出次期対潜哨戒機PXL等の選定経過と関係省庁の係り合いに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員金瀬俊雄君提出次期対潜哨戒機PXL等の選定経過と関係省庁の係り合いに関する質問に対する答弁書



一について

(1)及び(2) 政府は従来から、文民統制の原則の下に防衛力を整備し、自衛隊を管理運営してきており、このような認識は、政府として一貫しているものである。

二について

(1)及び(2) 次期対潜機の選定については、防衛上の見地に立つて所望の性能が得られ、費用対効果の上で優れているものを選定する所存であり、その選定の経緯についても、可能な範囲で国民に明らかにしたいと考えている。しかし、その関連資料等は、我が国の防衛上の必要から、また、外国政府に対する信義上の問題等から公表できないものもあるので、必ずしもそのすべてを公表することはできない。

(3) 次期対潜機選定の前提となる、その必要性、要求性能等は、次のように考えている。
    海上自衛隊では大型陸上固定翼対潜機P2V ― 7及びそれを一部改造したP ― 2Jを保有しているが、このうちP2V ― 7は既に減少しつつあり、また、P ― 2Jは昭和五十七年以降逐次用途廃止が見込まれる。次期対潜機は、これらの減少する大型陸上固定翼対潜機を適時に補充し、かつ、潜水艦の性能向上のすう勢に有効に対処するため必要となるものである。
    次期対潜機に対する運用上の要求性能は、列国潜水艦の性能向上に対応するため、新しい探知機器、総合的情報処理装置等をとう載し、広域の同時監視能力、迅速正確な目標の位置局限能力、対潜攻撃機能等の充実強化されるものを考えている。

三について

 次期対潜機選定の前提となる海上自衛隊の固定翼対潜機の装備機数等については、昭和五十二年度以後の防衛力整備計画の一環として、防衛庁において検討しているところであり、まだ説明できる段階に至つていない。

(1) 防衛力について、確立された定説はないが、通常、「防衛兵器の自国内生産能力」は、「防衛力」には含まれず、国防関連諸施策、すなわち、より広義の国防政策ないし安全保障政策の一環として問題とすべき事項であろうと考えている。

(2) 防衛力の整備に当たつては、まず防衛上の見地から立案され、その際経費が同じであれば最大の効果をあげられるものを、効果が同じであれば最少の経費で済むものを選択することはいうまでもない。しかし、最終的には、広範な国の他の諸施策との調和も考慮して、決定されるものである。

(3)及び(4) 防衛力整備の計画は、国防会議に諮つた上で、閣議において決定されるが、経済企画庁長官及び大蔵大臣は、国防会議及び閣議の構成員として同計画の決定に関与している。

(5) 防衛力整備の計画が国民経済に及ぼす影響については、関係各省庁がそれぞれその所掌事務の範囲内で、予測することとなる。

(6) 防衛力整備のための総経費の決定に際して、財政上効率的な予算の配分の確保という見地から個々の経費についての検討も必要不可欠であると考えており、大蔵省は、防衛庁はじめ関係省庁と十分協力しつつ、その検討を行つているところである。
    なお、経済企画庁は、個々の防衛費の配分には、直接関与していない。

(7) 軍用機に限らず、ある財貨の輸入が増加すれば、それだけ我が国の国際収支の黒字が減少し、ドル減らしにつながる可能性があることはいうまでもない。
    なお、軍用機の輸入によりどの程度の効果ないし即効性があるかについては、輸入の形態、支払条件等その契約内容いかんによつて差異があるので、これを例示することは困難である。

(8) 現在、米ソの核の相互抑止力に基づき、地域的安全保障のわく組みが存在しており、核戦争及び核戦争に至る可能性のある通常戦争の発生が抑止されていると考えている。
    我が国としては、日米安全保障体制を堅持することによつて、我が国に対する大規模な武力侵略は未然に防止されると考え、我が国の保有する防衛力は限定的な武力侵略に対して有効に対処し得ることを主眼として整備することとしている。

四について

 昭和三十六年から昭和五十年に至る毎年度末の外貨準備高及び外貨準備高中の外貨の量は、次のとおりである。なお、外貨のほとんどは米ドルである。

昭和三十六年から昭和五十年に至る毎年度末の外貨準備高及び外貨準備高中の外貨の量

五について

(1)から(3)まで 防衛庁は、昭和四十二年度概算要求において、高等練習機T ― 2(以下単に「T ― 2」という。)の国産化を一応の前提とする研究開発に着手するものとして、高等練習機設計研究委託費八三四百万円(うち昭和四十二年度歳出額三三四百万円、後年度負担額五〇〇百万円)を要求したものである。
    昭和四十二年度予算においては、高等練習機設計研究委託費として七一五百万円(うち昭和四十二年度歳出額二〇〇百万円、後年度負担額五一五百万円)が計上され、同年度に開発に着手したものである。
    これは、その研究開発の結果、所望の性能が得られ、費用対効果の点でも満足される場合には、国産に進むことを期待していたものであるが、その装備に着手する段階においては、改めてその可否を検討することを予定していたものである。

(4) 試作機が初飛行したのは昭和四十六年七月二十日であり、昭和四十二年度研究開発着手以来昭和四十六年初飛行までの概算要求と成立予算は別紙第1のとおりである。

(5) T ― 2の研究開発については、第三次防衛力整備計画(以下「三次防」という。)の大綱及び主要項目に明記されており、三次防の一環として行われたものである。

(6) T ― 2の採用は、超音速の高等練習機が必要であることによるものであり、その機種については、教育訓練、維持、整備等の面を考慮し、最も効率的であるとして決定されたものである。
    なお、その採用は、第四次防衛力整備五か年計画(以下「四次防」という。)の主要項目の一部として昭和四十七年十月九日国防会議に諮つた上で閣議において決定したものである。

(7) T ― 2の研究開発は、昭和四十二年度に着手しており、昭和四十八年度には開発を完了し、逐次用途廃止される高等練習機(F ― 86F)に代えて昭和四十九年度から使用することを考えていた。

(8) T ― 2は、ほぼ予定どおり、昭和四十九年度に一号機を取得した。

(9) 四次防において決定されている五十九機については、昭和五十四年度末までに取得する予定である。その後の配備については、昭和五十二年度以後の防衛力整備の計画の一環として検討中であり、説明できる段階に至つていない。

六について

(1)から(3)まで 防衛庁は、昭和四十七年度概算要求においてT ― 2を支援戦闘機に改造する場合の調査研究のための技術調査研究委託費四九〇百万円(うち昭和四十七年度歳出額九八百万円、後年度負担額三九二百万円)及び支援戦闘機用の火器管制装置の試作品費九九四百万円(うち昭和四十七年度歳出額一九九百万円、後年度負担額七九五百万円)を要求したものである。
    昭和四十七年度予算においては、右の技術調査研究委託費及び試作品費としてそれぞれ四二四百万円(うち昭和四十七年度歳出額八五百万円、後年度負担額三三九百万円)及び七九六百万円(うち昭和四十七年度歳出額一五九百万円、後年度負担額六三七百万円)が計上され、同年度に研究開発に着手したものであり、国産化については、装備を決定する時点において検討する考えであつた。
    なお、防衛上の装備品に係る研究開発は、一般には、直ちに装備化につながるものでなければならないというものではなく、一般的技術水準の向上、将来装備化する場合の技術的基盤の維持及び育成等に役立つものである。

(4) 試作機が初飛行したのは昭和五十年六月三日であり、昭和四十七年度研究開発着手以来初飛行までの概算要求、成立予算及びその執行金額は別紙第2のとおりである。

(5) FS ― T2改支援戦闘機(以下単に「FS ― T2改」という。)の研究開発については、T ― 2を母機とする小規模な改造に関するものにすぎず、四次防の主要項目等に具体的に定められているものではない。

(6) FS ― T2改の採用は、四次防の主要項目の一部として昭和四十七年十月九日国防会議に諮つた上で閣議において決定したものである。
    なお、支援戦闘機としてFS ― T2改を選定した理由は(11)において述べるとおりである。

(7) FS ― T2改の研究開発は、昭和四十七年度に着手しており、昭和五十年度には開発を完了し、逐次用途廃止される支援戦闘機(F ― 86F)に代えて昭和五十二年から使用することを考えていた。

(8) FS ― T2改は、ほぼ予定どおり、昭和五十二年度に一号機を取得する予定である。

(9) FS ― T2改は、当初四次防の主要項目において、六十八機整備することが決定されたが、この計画は、昨年十二月三十日の国防会議及び同三十一日の閣議において、二十六機に変更された。その最終取得年度は、昭和五十三年度である。以後の取得計画については、現在、昭和五十二年度以後の防衛力整備の計画の一環として検討中であり、説明できる段階に至つていない。

(10) 大蔵省は、四次防の主要項目の策定の過程において、国産機は一般に輸入機に比し割高となり、さらにドル・ショック以降の円高の為替相場により輸入機が従来より割安となること等の理由から、機種を特定せず外国機の輸入の検討を行うよう防衛庁に求めたものである。
    なお、昭和四十二年度予算及び昭和四十七年度予算の編成に当たり、国産か輸入かが問題となり、昭和四十二年度予算編成の際はT ― 38(米国ノースロップ社製でその後F ― 5Bとなる。)、昭和四十七年度予算編成の際は、F ― 5Bが輸入の検討対象となる機種である旨の説明を防衛庁から受けた経緯がある。

(11) 外国機を導入する場合の候補機種は、F ― 5Eであつたが、我が国における支援戦闘のための航空機としては、T ― 2を改造したFS ― T2改の方が性能面において優れており、更に、高等練習機と支援戦闘機とを同系列の航空機とすることは、要員の教育、航空機の維持、整備等の面からも効率的であることから同機の方が適当であると判断されたものである。

七について

(1)、(6)及び(7) 次期対潜機に関しては、防衛庁は、昭和四十五年度概算要求において初めて基礎研究のためのものを要求したが、これは国産化を前提としたものではない。
    なお、防衛庁として国産化を前提とした研究開発のための要求をしたのは、昭和四十六年度概算要求における次期対潜機設計研究委託費が最初である。ただし、次期対潜機の国産化を前提とした研究開発費は、一度も予算に計上されていない。概算要求及び成立予算の内容は、別紙第3のとおりである。

(2) 防衛庁が次期対潜機を国内開発する方針を主張したのは、当時、米国からP ― 3Cを導入できる見込みがなかつたこと及び国内開発によつて所望の性能のものが得られると考えたことによるものであるが、あわせて国内開発を行うことによつて防衛基盤の培養にも資すると考えたからである。

(3) 防衛庁は次期対潜機は、二の(3)で述べたような必要性に基づき、P ― 2Jの減少に対し適時に補充し得るよう配備することを考えていた。

(4) 次期対潜機の必要性、要求性能等は、二の(3)において述べたとおりであり、P ― 2Jでは一九八〇年代後半以降の主力機としての要求を十分に充足することができないものと考えている。

(5) 防衛庁としては、次期対潜機について、国産化を前提とする研究開発に着手したことはない。

(8)及び(9) 右の次期対潜機関係の技術調査研究委託費は国産化を前提とする調査研究を行うためのものではなかつたが、国産化を前提とする研究開発を行うか否かを決めるに当たり必要となる基礎的、技術的な調査研究及びいずれの方針に決まる場合においても必要となる事前研究を行うための経費であり、防衛庁がこの経費により必要な調査研究をメーカー等に委託し、その成果をは握しておくことが、その後における国産化を前提とする研究開発を行うか否かの方針決定等を行う上において必要であつた。

(10) 昭和四十五年度及び昭和四十六年度の次期対潜機に関する調査研究は、国産化を前提とする研究開発ではなく、基礎的調査研究であつて、三次防に具体的に定められているものではない。

(11) 経済企画庁長官及び通商産業大臣は、閣議の構成員として予算の決定に関与しているが、御指摘の研究開発予算の決定には特に関係していない。

(12) 大蔵省は、次期対潜機に関しては、その国内開発には多額の研究開発費を要すること、及び国内開発機の量産価格は大量生産された場合の外国機に比べてかなり割高になること等の理由により、国産化を前提とする研究開発に着手することには反対であつた。
    なお、自力による防衛力整備については、その時々の国際情勢、経済財政事情、科学技術水準等を総合的に勘案して、個々の事案ごとに検討すべきものと考える。

(13) 大蔵省は、次期対潜機の国産化を前提とする研究開発に反対していたもので、特定の外国機の輸入を求めていたものではない。
    しかし当時、参考として、検討の対象となる外国機種としては、P ― 3C(米)、ニムロッド(英)、アトランティック(仏)の三機種がある旨の説明を防衛庁から受けていた。

(14) 大蔵省は、具体的機種の選定を行う立場にないが、財政当局としての立場から、性能面において大きな差がなければ財政上負担の少ない方法によるべきであると考えていた。

(15) 大蔵省は、(3)で述べた防衛庁の考えと同じであつた。

(16) 大蔵省は、次期対潜機を国産化した場合の所要経費見積、輸入する場合との経費比較等に関して、主として防衛庁から説明を受けた。

(17) 大蔵省は、P ― 3Cが次期対潜機の検討対象となり得る機種の一つであることは承知していたが、四次防策定時には具体的な機種を選定する必要もなく、大蔵省として機種をP ― 3Cに特定した事実はない。

(18)及び(19) 大蔵省は、(12)で述べた理由により国産化を前提とする研究開発には反対したが、次期対潜機の必要性を認めなかつたのではない。

(20)から(22)まで 四次防の策定の過程において検討の対象として取り上げられていたのは、次期対潜機について国産化を前提とする研究開発を行うか否かという高度の技術的専門的な判断を要する問題であつたので、昭和四十七年十月九日の国防会議議員懇談会においては、国防会議事務局に、専門家の会議を設ける等により、慎重に検討することが了解事項として確認されたものである。専門家の意見を徴することとなつたのは、以上の事情によるものであり、資料の蓄積の有無によるものではない。
    なお、当時は、次期対潜機の機種の選定については、検討の段階にも至つていなかつたものである。

(23) 防衛力整備の計画は、国防会議に諮つた上で閣議において決定されるが、大蔵省主計局は、国防会議及び閣議の構成員たる大蔵大臣を補佐する立場から財政上の観点を中心に同計画の策定に関与しているにすぎない。

 右答弁する。


別紙第1


別紙第2


別紙第3



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