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答弁本文情報

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昭和五十六年七月三日受領
答弁第四五号
(質問の 四五)

  内閣衆質九四第四五号
    昭和五十六年七月三日
内閣総理大臣 鈴木善幸

         衆議院議長 福田 一 殿

衆議院議員稲葉誠一君提出「憲法・同盟・安保」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員稲葉誠一君提出「憲法・同盟・安保」に関する質問に対する答弁書



一について

1 同盟条約という言葉については、一義的な定義が存在するわけではなく、日米安保条約が同盟条約といえるか否かは同盟条約の定義にもよる。日米安保条約は、日米両国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が発生した場合に、共通の危険に対処することを定めているが、同盟条約という言葉を双務的な集団的自衛権の行使を前提としたものとしてとらえるのであれば、日米安保条約がかかる意味の同盟条約に該当しないことは明らかである。

2 「同盟」又は「同盟関係」という言葉は、国際政治上、複数国家間の防衛の分野における協力関係を指す場合もあるが、このような関係のみに限定されず、より広く種々の共通の目的又は利益を有する複数国家間の緊密な協力関係という意味で用いられることもある。

二について

1 去る五月八日に日米両国首脳間で行われた共同声明第八項の御指摘の部分は、日米安保条約が我が国の安全保障の基礎であり、また、極東における国際政治の基本的枠組みの重要な柱として極東の平和と安定の維持に当たつてもその基礎となつているとの日米両国首脳の信念を再確認したものである。

2 共同声明にある日米間の役割分担については、従来に比し新しい考え方を表明したものではない。すなわち、まず極東の平和と安定のためには、紛争の根源を除去するための政治的・経済的役割が重要であり、我が国は、米国とともにこの面で今後とも重要な役割を果たしていく考えである。
  他方、極東の平和と安定のための軍事的抑止力に関しては、我が国は、直接的に貢献することはできず、また、貢献する考えのないことは従来から明らかにしてきているとおりである。
  また、日本の防衛との関連での役割分担については、既に「日米防衛協力のための指針」において日米それぞれの役割分担の考えが示されており、これについて現在日米の間で研究、協議が行われていることは御承知のとおりである。
  なお、共同声明の内容について、英文と和文との間に意味上の相違がないことはいうまでもない。

三について

 日米安保条約第五条は、日米両国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が発生した場合に、共通の危険に対処することを定めたものであるが、我が国が自衛権の行使としての実力を行使することのできる地理的範囲について定めているものではない。
 共同声明第八項は、同項において、「憲法及び基本的な防衛政策に従つて、」日本の領域及び周辺海・空域における防衛力を改善することを述べていることからも明らかなとおり、憲法を逸脱したり、専守防衛を変更するものではない。
 なお、我が国が自衛権の行使として我が国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することのできる地理的範囲は、必ずしも我が国の領土、領海、領空に限られるものではないことについては、政府が従来から一貫して明らかにしているところである。

四について

 レーガン大統領は、去る五月八日、鈴木総理との第二回首脳会談終了後のステートメントにおいて、「我々は、経済、政治、軍事等数多くの幅広い問題につき意見の一致をみるに至つた。又はその点が明らかになつたというべきかもしれない。」と述べた。
 レーガン大統領の右発言の趣旨は、鈴木総理との二回にわたる首脳会談において、両者が、国際情勢、日米関係、国際経済問題等につき、意見交換を行つた結果、幅広い意見の一致をみたことを明らかにしたものと理解している。レーガン大統領が「意見の一致をみるに至つた」、又は「明らかになつた」と述べているのは、右に述べた内容を指しているものと解される。その内容は、具体的には、首脳会談の成果として公表された共同声明で明らかにされているところである。

五について

 共同声明第十四項は、日米両国首脳が、核兵器拡散防止のための国際的努力の必要性を再確認し、原子力平和利用推進の一般的な重要性について相互に確認した上で、日米両国間の懸案事項の早期かつ恒久的な解決を図るため、速やかに協議を開始することで意見の一致をみた旨を表したものである。
 したがつて、この共同声明第十四項は、新たに核拡散防止条約を堅持するという条件で原子力政策について米国が我が国に対する拘束を撤去する用意があるという意思表示を行つたものではなく、また、非核三原則を堅持し原子力平和利用に徹している我が国について、核武装国家にならないという再確認を米国が求めたというものではなく、これを我が国が約束したというものでもない。
 また、共同声明第十四項に言及されている再処理に関する懸案事項は、現行日米原子力協定と関連するものであり、この解決には米国政府との協議を必要とするところ、この協議の早期開始の必要性が、今回の共同声明の中で特に言及されたものである。

 右答弁する。




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