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昭和六十年三月一日受領
答弁第一一号

  内閣衆質一〇二第一一号
    昭和六十年三月一日
内閣総理大臣 中曽根康弘

         衆議院議長 坂田道太 殿

衆議院議員松沢俊昭君提出フッ素の安全性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員松沢俊昭君提出フッ素の安全性に関する質問に対する答弁書



一の1、2及び6について

 今回の事業は、厚生省健康政策局が企画し、国の補助事業として市町村が実施主体となつて行うものである。
 昭和六十年度においては、五歳時に萌出する幼若永久歯(第一大臼歯)のむし歯予防手法の確立を図るため、歯科医師等の専門家による委員会を設置し検討を行うとともに、幼若永久歯むし歯予防のモデル調査事業を実施することとしているが、この事業では、五市町村の五歳児を対象として歯科医師等の専門家により歯科健康診査、正しい歯磨き等の保健指導にあわせて、御指摘のフッ化物の歯面塗布も行うものである。
 また、この事業は、各実施市町村において希望者を対象として行うこととしている。

一の3及び4について

 むし歯予防のためのフッ化物の応用については、WHO(世界保健機構)の勧告もあり世界各国で広く活用されており、我が国においても、専門団体である日本歯科医師会及び日本口腔衛生学会は安全かつ有効であるとの見解を示しており、その安全性については問題がないと考えている。また、今回のフッ化物歯面塗布事業を行うに当たつてモニターのための第三者機関を設置する必要はないものと考えている。

一の5について

 御指摘の疫学調査は、フッ化物歯面塗布の有効性が確認されているので行う考えはない。なお、今回の事業は、その施策効果を測定し、これを各都道府県に示すことにより普及を図ろうとするものである。

一の7について

 むし歯は多くの要因によつて発生するものと考えられているが、基本的には原因菌、砂糖の摂取及びむし歯に対する歯質の抵抗力が問題になる。
 その予防法としては、歯磨き、甘味の制限、フッ化物の応用という方法が一般的であるが、WHO、日本歯科医師会及び日本口腔衛生学会においては公衆衛生学的手法としてはフッ化物の応用が最も効果的な方法であるとされており、厚生省としても歯磨き、甘味の制限と併せてフッ化物の応用を行うことが最適のむし歯予防法と考えている。

二の1について

 我が国のフッ素の水質基準は、一リットル当たり〇・八ミリグラム以下と定められている。
 また、米国においては気温の高低により異なるが、最も厳しいところで一リットル当たり一・四ミリグラム以下と定められている。
 なお、各国が水質基準を定める場合のガイドラインとしてWHOの示している値は、一リットル当たり一・五ミリグラム以下である。

二の2の@及びCについて

 飲料水中からフッ素を摂取することにより生ずる慢性中毒には、歯牙フッ素症、骨フッ素症等があるが、このうち、歯牙フッ素症については、一リットル当たり二ミリグラム以上のフッ素を含む飲料水を歯の形成期に長期間にわたつて飲用した場合に問題となる症状が生ずるといわれ、骨フッ素症については、一リットル当たり八ミリグラム以上のフッ素を含む飲料水を長期間にわたつて飲用した者の一部に発生するとされている。しかしながら、フッ素を食物から摂取することにより、歯牙フッ素症等の慢性中毒が生じたとする報告はない。
 このようなことから、摂取形態が異なるものを単純に合算してフッ素の許容量を論ずることはできないと考えられる。

二の2のAについて

 日本人の食物からの一日フッ素摂取量は、成人一日当たり〇・四八ミリグラムから二・六四ミリグラムといわれている。また、小児の場合は食物の摂取量も少ないので、成人の数値に比して一日フッ素摂取量も少なくなる。

二の2のBについて

 フッ化物局所応用法のうち、フッ化物歯面塗布は乳歯あるいは幼若永久歯に対し年一回から四回行われるものであるが、各回ごとの口腔内フッ素残留量はおよそ一ミリグラムから三ミリグラムであり、また、フッ化物水溶液による洗口の場合で一回およそ〇・五ミリグラムから一・五ミリグラム、フッ化物を含有する歯磨き剤の使用の場合一回でおよそ〇・一ミリグラムから〇・三ミリグラムとされている。

二の2のDについて

 有機フッ化物の通常の生活環境における体内摂取量は、極めて少なく無視し得る量である。
 さらに、無機フッ化物及び有機フッ化物の生理作用は異なるものであることから、両者の総摂取量が人体にどのような影響を与えるかという形で論ずることはできない。

二の3の@について

 制定当時の諸外国における水質基準、日本人の食習慣及び科学的知見に基づき総合的な検討を行い、制定したものである。

二の3のAについて

 我が国における歯牙フッ素症の調査では、フッ素濃度一リットル当たり〇・八ミリグラム程度の飲料水の飲用によつて問題となる症状の発現はないとされている。

二の3のB及びCについて

 米国及びWHOにおいて、水質基準等の改正が行われたことについて承知している。
 なお、我が国においては、直ちにフッ素に関する水質基準を見直す必要はないと考えている。

二の4について

 我が国における北津軽地方、岡山県笠岡市、沖縄地方の歯牙フッ素症の調査結果から判断する限り、ディーンの報告とそれほどの差はないと考えられる。

二の5について

 フッ素濃度は、一リットル当たり〇・六ミリグラムであつた。御指摘の調査においては、問題となる歯牙フッ素症の増加等は認められなかつたとされている。
 なお、現行水質基準の安全性に問題はないと考えている。

二の6について

 中国広州市の水道水フッ素添加事業の中止については、現在、中国側に対し照会中である。

二の7について

 水道水におけるフッ素に関する水質検査は、法令上、おおむね一月に一回行うことを原則としているが、原水及び浄水におけるフッ素濃度が水質基準に比して十分低い等検査を行う必要がないことが明らかであると認められる場合には、省略することができるとされている。しかし、この場合においても、少なくとも一年に一回は検査するよう指導しているところである。これらの検査によれば、水道水におけるフッ素濃度は、おおむね一リットル当たり〇・二ミリグラム以下であり、すべて水質基準に適合している。
 なお、水質検査の結果については、水道事業者に照会することにより知ることができる。

二の8について

 我が国における飲料水濃度と骨中のフッ素濃度とを関係付けた調査については、承知していない。

三の1について

 フッ化物がむし歯予防に有効であることは広く知られており、フッ素の大量摂取による有害性をもつて直ちにその有用性が否定されるものではない。
 現在、WHOの勧告もあり、世界各国でむし歯予防の目的でフッ化物は使用されているが、これまでのところ、安全性の面で特に問題になつたとの報告は承知しておらず、現在のところ、フッ化物歯面塗布等フッ化物をむし歯予防に用いることに問題はないと考えている。

三の2及び四の6のDについて

 フッ化物歯面塗布溶液の通常使用量に含まれるフッ素量が腎機能に影響を及ぼすことは、その口腔内残留量からみて考えられず、また、腎機能障害のある者における排泄障害についても、むし歯予防に使用されるフッ化物量及び摂取頻度からみてそのおそれはないとされている。

四の1の@及びBについて

 当時の内外の多くの研究成果を基に、フッ化物歯面塗布がむし歯予防手段として有効であると判断したものである。

四の1のAについて

 フッ化ナトリウムを用いたフッ化物歯面塗布を無効とする報告はない。ただし、使用薬液が八パーセントフッ化スズであるものについて無効であるとする研究としては米国のウエロックの報告(一九六五年)が一例あるが、他の研究者によれば試験研究方法そのものに不備があるとされている。

四の2の@及びAについて

 米国のアストによる報告(一九五〇年)があり、二歳児から七歳児二六〇人を対象に、二パーセントフッ化ナトリウム水溶液年四回塗布法を実施し、その結果、一年後に二十二パーセントの抑制率を報告している。

四の2のBについて

 御指摘のような報告は、承知していない。

四の3について

 現在、むし歯予防の目的で歯面塗布に用いられている製剤は、フッ化ナトリウムを有効成分とする医薬品であり、市販されているものは、いずれも薬事法に規定する毒薬又は劇薬に該当しないものである。

四の4について

 フッ化物歯面塗布の実施状況については、歯科疾患実態調査や保健所運営報告により把握されており、それによれば、フッ化物歯面塗布経験のある者は十五歳未満のもので二十二・三パーセント(昭和五十六年歯科疾患実態調査)、保健所で受けた乳幼児四十九万七千八百四人(昭和五十八年保健所運営報告)と報告されているが、昭和五十二年以前にもまたそれ以後についても害作用があつたとの報告は受けていない。また、その有効性については、大阪府八尾保健所の藤沢(昭和五十年)、新潟大学の大沢(同五十七年)、大阪府八尾保健所の安倍(同年)、新潟県長岡保健所の小泉(同五十九年)等の報告がある。

四の5について

 フッ化ナトリウムを含有する歯面塗布剤については、現在、中央薬事審議会において再評価の審議が行われているところである。

四の6の@及びAについて

 むし歯予防のためのフッ化物歯面塗布により口腔内に残留する微量のフッ素が嚥下されることで、栄養吸収あるいはTCAサイクルに影響を及ぼすという報告は、承知していない。

四の6のBについて

 むし歯予防のためのフッ化物歯面塗布が生体の染色体に影響するという報告は、承知していない。
 また、WHOの附属機関である国際がん研究所(IARC)の報告によつても否定されている。

四の6のCについて

 むし歯予防に用いるフッ化物利用で骨等の発育に悪影響を及ぼすという報告は、承知していない。
 なお、微量のフッ素は骨の発育を促進するとされている。

四の7の@について

 フッ化物歯面塗布一回当たりのフッ素の口腔内残留量は、およそ一ミリグラムから三ミリグラムである。

四の7のAについて

 血中フッ素濃度は、塗布後一時的に上昇するが、塗布濃度により約一時間から数時間後には通常濃度に復帰し、その変動範囲も生理的範囲にあるとされている。

四の7のBについて

 塗布後二時間の尿中フッ素濃度は、一時的に塗布前の約十倍の濃度に上昇し、塗布後二十四時間の尿においては塗布前と同じになると報告されている。

四の7のCについて

 腎機能の低下している児童とそうでない児童とで、塗布前後の尿中フッ素排泄量に差があるとする報告は、承知していない。

四の7のDについて

 フッ化物歯面塗布により口内炎・歯肉炎等の症状が発生するとする報告は、承知していない。

四の8の@及びAについて

 二重盲検法によるフッ化物歯面塗布の効果を調査した報告としては、国内では新潟大学の木次による報告(昭和五十二年)、国外ではオランダのハウインクの報告(一九七四年)が挙げられる。木次による報告によれば、小学校入学時から開始した場合、四年後に一人平均永久歯むし歯数で十六・三パーセントの抑制率を示した。また、ハウインクの報告によれば、七歳から開始した場合、九年後に永久歯むし歯歯面数で三十七パーセントの抑制率を示した。

四の8のBについて

 厚生省として全国的に一斉に調査したものはないが、保健所の歯科医師の最近の報告例として、四の4についてにおいて述べた藤沢(昭和五十年)、大沢(同五十七年)、安倍(同年)、小泉(同五十九年)等の報告がある。これらの報告では、例えば、小泉によれば抑制率は三歳児の一人平均むし歯数で五十一・三パーセントが示されているように、いずれもフッ化物歯面塗布は有効であるとしている。

四の8のCについて

 米国のクヌトソンとアームストロングによる報告(一九四六年)がある。この報告では、七歳から十五歳児二百四十二人にフッ化物歯面塗布を行い、塗布実施三年後において永久歯むし歯数で抑制率三十六・七パーセントを示した。

四の9の@及びAについて

 歯牙フッ素症は、その発現形態からして、フッ化物歯面塗布による発症は全く考えられないところである。

四の9のBについて

 水道水フッ化物添加地域児童の発育状態については、米国のシュレージンジャー等が十年間ニュー・ヨーク州で調査し、他地区に比して何ら異常はないと報告(一九五三年)しているが、フッ化物歯面塗布についてもその使用量及び使用回数から問題はないと考えられる。

四の10について

 フッ化物歯面塗布によるむし歯抑制率は、およそ二十パーセントから五十パーセント、フッ化物含有歯磨き剤によるむし歯抑制率は、およそ十五パーセントから二十五パーセントとされており、いずれも有害作用はないものといわれている。

五の1について

 歯磨き剤に含有されているフッ化物はモノフルオル燐酸ナトリウムであり、その濃度はフッ素として〇・一パーセントである。一回の歯磨き剤の使用量を〇・五グラムから一グラムと考えると、フッ素の量は〇・五ミリグラムから一ミリグラムとなる。

五の2の@について

 フッ化物含有歯磨き剤の使用によるフッ素の口腔内残留量について年齢別に検討した報告としては、ドイツ連邦共和国のアイヒレル(一九五五年)、スウェーデンのエリクソン(一九六九年)、米国のバーンハルト(一九七四年)等の報告があり、フッ素の口腔内残留推定量には、それぞれの報告により幅があるが、平均的にみて二十パーセントから三十パーセント程度とされている。

五の2のAについて

 フッ化物含有歯磨き剤について、年齢制限等の使用制限を設けている国は、承知していない。

五の2のB及びCについて

 フッ化物含有歯磨き剤を使用することにより、安全性の面で御指摘のような問題があるとの報告は承知しておらず、現在のところその使用に制限を設ける必要性はないものと考える。

五の2のD及びEについて

 フッ化物含有歯磨き剤のむし歯予防効果について二重盲検法試験により検討した報告としては、イギリスのネイラー(一九六七年)、米国のフランクル(一九六八年)、東京歯科大学の竹内(一九六八年)、デンマークのリンド(一九七四年)等の報告があり、むし歯抑制率には、それぞれの報告により幅があるが、おおむね十五パーセントから二十五パーセント程度といわれている。

五の2のFについて

 フッ化物含有歯磨き剤については、フッ化物によりアレルギー障害等有害な作用が発現したとの報告は承知しておらず、現在のところ成分の記載を義務付けることは考えていない。

六の1について

 昭和五十五年度三歳児歯科健康診査状況の全国集計によれば、同歯科健診受診児のうち、むし歯があつたものは六十一・七パーセントであつたが、昭和四十一年度の集計七十八・三パーセントに比べて十六・六パーセントの減少であり、重症のむし歯の率も十五・八パーセントから十・六パーセントに減少している。これは、歯についての国民の保健意識の向上と関係者の努力によるところのものと考えられる。また、昭和五十二年度から開始された一歳六か月児歯科健康診査における歯科検診と保健指導も効果を挙げているものと考えている。

六の2について

 御指摘の事実については、承知していない。

六の3について

 長野県佐久市、新潟県東頸城郡牧村、岐阜県、福岡県等各地域での例があるが、近年、特にフッ化物水溶液による洗口を積極的に利用した事例が多く報告されている。

六の4について

 一歳六か月児歯科健康診査及び三歳児歯科健康診査等を中心とする歯科保健活動を通じて、糖分の適正な摂取について指導しているところである。

六の5について

 むし歯の予防には、歯口清掃が重要であることにかんがみ、学校給食の実施に当たつては、食後においてうがいや歯ブラシの励行など歯口清掃に努めるよう指導しているところである。

七の1について

 フッ化物水溶液による洗口の有効性、安全性については、内外の専門機関が一致して認め、WHOでも広く推奨しており、新潟県の見解についても問題はないと考える。

七の2について

 新潟県教育委員会作成の「歯の検査(管理)票」は、学校保健法施行規則第三号様式と同内容であり、問題はないと考える。

七の3の@について

 学校におけるフッ化物水溶液による洗口は、学校保健法第二条に規定する学校保健安全計画に位置付けられ、学校における保健管理の一環として実施されているものである。

七の3のAについて

 フッ化物水溶液による洗口の実施に当たつては、フッ素の身体に及ぼす影響について不安を持つ保護者もあるので、事前に保護者に対しその趣旨の説明を行い、その理解と協力を求めたものと聞いている。

七の3のBについて

 フッ化物水溶液による洗口は、任意に行われるものであるので、それを拒否した場合、学校における保健管理上の義務違反にはならないと考える。

七の4について

 御指摘の状況については、把握していない。

七の5及び6について

 むし歯予防のためのフッ化物応用については、WHOの勧告もあり世界各国で広く活用されており、我が国においても、日本歯科医師会及び日本口腔衛生学会の専門団体は安全かつ有効であるとの見解を示しており、その安全性については問題がないと考えている。

七の7の@について

 フッ化物水溶液の洗口は、学校における保健管理の一環として実施されているものである。

七の7のAについて

 フッ化物水溶液による洗口は任意に行われるものであるので、「フッ素うがい」を行わない児童生徒がいても問題はないと考える。

七の7のB及びCについて

 フッ化物水溶液による洗口の実施に当たつては、事前に保護者に対しその趣旨の説明を行い、その理解と協力を求めてこれを実施することが望ましいものと考える。

七の8及び9について

 劇薬から劇薬でない医薬品を業として製造するには、薬事法に基づく製造業の許可が必要である。しかし、学校の養護教諭がフッ化ナトリウムを含有する医薬品をその使用方法に従い、溶解、希釈する行為は、薬事法及び薬剤師法に抵触するものではない。

七の10について

 適切な方法によるフッ化物水溶液による洗口については安全性に問題はないことから、フッ化物水溶液による洗口を禁止又は停止すべき児童生徒についての基準は、設けていない。

七の11について

 学校におけるフッ化物水溶液による洗口は、学校における保健管理の一環として実施されるものであるが、その性格にかんがみ、これを実施しようとする市町村教育委員会は、職務命令という手段で行うことは適当ではなく、事前に校長等の教職員はもとより、児童生徒の保護者や学校歯科医、学校薬剤師等にも十分説明し、その理解を得て協力体制を確立した上で実施することが望ましいと考える。

七の12について

 公衆衛生施策の施策効果としては、副次的効果も含めて考えるのが妥当であると考える。
 なお、政府は、御指摘のような統計上の指導はしていない。

七の13について

 学校においてフッ化物水溶液による洗口を実施する場合においては、それに携わる関係者が、フッ化物によるむし歯予防の基礎知識やフッ化物水溶液による洗口の実施方法等について十分理解した上で適切に行うよう研修会等の機会を通じて指導しているところである。

七の14の@について

 我が国は一九六九年の「飲料水へのフッ素添加及び歯科衛生に関する第二十二回WHO総会決議」に加わつており、その内容について歯科関係方面へ連絡しているところである。

七の14のAについて

 御指摘の内容については、承知していない。

七の14のBについて

 各総会決議が採択される際の各国の表明態度については、WHOの公式記録には見当たらない。
 また、御指摘のWHOの専門委員会の文書については、フッ化物利用を主としたむし歯予防対策について述べたものであり、その内容については問題はないと考える。

七の14のCについて

 WHOの見解は、水道水フッ化物添加はむし歯予防に有効であり、生涯を通じてその有効性は持続するとしている。

七の15、21、22及び27について

 水道は清浄にして豊富低廉な水の供給を図ることを目的としており、むし歯の予防等健康増進を目的としていないこと、給水量に比して飲用に供される量が極めて少ないこと、及び至適濃度の管理が難しいこと等の理由により、現在のところ水道水へのフッ化物添加を指導する考えはない。

七の16について

 中国広州市の決定については、現在、中国側に対し照会中である。
 なお、御指摘の新潟県の件については、新潟県における独自の調査及び判断により行つたものと聞いている。

七の17について

 薬事法第四十八条第一項において、業務上劇薬を取り扱う者は、これを他の物と区別して貯蔵し、又はこれを陳列しなければならないことが規定されているが、これに従つて保管する限り、同法に抵触しない。

七の18について

 フッ化物水溶液による洗口では、フッ化ナトリウムの一回使用量は十一ミリグラムから二十二ミリグラム(フッ素として五ミリグラムから十ミリグラム)であり、七十キログラムの成人の場合のフッ化ナトリウムの致死量は五グラムから十グラムとの報告がある。

七の19及び20について

 フッ素は、種々の元素と結合し自然界に広く存在する物質であり、適量では人体に必要な栄養素であるといわれているが、大量に環境中に放出された場合、大気汚染による植物等の被害や水質汚濁による魚への被害が生ずるため、環境への排出について規制している。
 なお、むし歯予防のために使用されるフッ化物については、微量であるので影響はないものと考える。

七の23の@について

 むし歯予防のためのフッ化物利用で歯牙の萌出遅延は起こらないとされている。代表的な報告としては、ドイツ民主共和国力ールマルクス市におけるエルフルト大学のキュンツェル等の広範な疫学調査(一九七六年)が挙げられる。

七の23のAについて

 フッ素による慢性中毒として現在までに確認されているのは歯牙フッ素症、骨フッ素症等であるが、これらの発現形態が異なることから、軽度の歯牙フッ素症の発現が骨フッ素症等の発現を予告する前兆として考えることは妥当ではない。

七の24について

 フッ化物の応用によるむし歯予防の効果については、二重盲検法及び被検査者盲検法によつて有効であるという報告が既になされている。
 なお、フッ化物の応用によるむし歯予防の判定においては、その対象が硬組織疾患であることから、他の疾患の場合に比してより客観的な判定が可能であり、したがつて、二重盲検法のみが有効であるとは考えていない。

七の25について

 カルシウムの摂取量、フッ素の摂取量及び甲状腺腫の三者の関係を示す報告は、承知していない。

七の26について

 歯牙フッ素症は、その発現形態からして、フッ化物水溶液の洗口による発症は全く考えられないところである。

七の28について

 新潟県において御指摘のような計算方法を採つているのは、長期間の平均フッ素摂取量の目安とするためと聞いている。

八の1の@について

 フッ化物含有歯磨き剤がフッ化物水溶液による洗口又はフッ化物歯面塗布と併用された場合、人体に対して有害であるとの報告は承知しておらず、また、そのフッ素推定摂取量から見ても、現段階では特に問題はないものと考えている。

八の1のAについて

 通常の生活で摂取するフッ素量には個人差があるが、その変動範囲は十分に生理的範囲内にあるので、健康被害に対するおそれはない。

八の1のBについて

 腎障害がある場合でも、むし歯予防の目的で使用されるフッ素製剤からのフッ素推定摂取量からみて、現段階で特に問題はないものと考えている。
 なお、御指摘のミラノールの使用上の注意事項については、国が企業に対し指示した事実はなく、企業が自主的に記載したものと推察される。

八の2の@について

 フッ化物による大気汚染の実態については、大規模なフッ化物の排出源がある地域等について把握している。

八の2のA及びBについて

 フッ化物による大気汚染地区の定めはない。したがつて、御指摘のような白米と青緑色野菜類のフッ素含有量に関する調査はなく、また、むし歯予防のためのフッ化物応用についても、地域事情を勘案する必要はないものと考える。

八の2のCについて

 大気汚染防止法に基づき、工場又は事業場に設置されているフッ化物の排出施設について排出規制を実施しているところであり、フッ素による大気汚染地区を定める必要はないと考えている。

八の3について

 御指摘のような点に関連する研究及び科学的知見は、把握していない。

八の4について

 フッ化物の排出源としてはアルミニウム精錬工場、燐酸系の肥料工場等がある。
 フッ化物の発生源については、業種、排出形態、規模等が多岐にわたつており、年間排出量や今後の増減等について推定することは困難である。

八の5について

 むし歯予防のために使用するフッ化物は、微量であることから、人体への影響と環境への影響との両面からみても問題となる事態を引き起こすことは考えられない。
 また、むし歯予防のために使用するフッ化物は、環境汚染防止の観点から規制の対象となつているフッ化物とは化学的性状が異なり、人体に影響を及ぼす場合の過程も異なつている。

 右答弁する。




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