答弁本文情報
平成元年十二月二十二日受領答弁第一五号
内閣衆質一一六第一五号
平成元年十二月二十二日
衆議院議長 田村 元 殿
衆議院議員菅直人君提出アスベスト問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員菅直人君提出アスベスト問題に関する質問に対する答弁書
一について
石綿の濃度の高い作業環境において長期間作業に従事した労働者に、肺がん及び悪性中皮腫が発生することは、各種調査で明らかにされている。
一方、世界保健機関(WHO)の報告によれば、都市部における環境大気中の石綿の濃度がおおむね空気一リットル当たり一本以下から十本程度にある状況下では、「一般住民においては石綿に起因する悪性中皮腫及び肺がんのリスクは信頼できるほど定量化できないものの、おそらく検出できないほど低いであろう」とされている。
我が国の石綿の供給の大部分を占ある石綿輸入量については、昭和六十二年に二十七万七千トン(対前年比八・四パーセント増)、昭和六十三年には三十二万トン(対前年比十五・六パーセント増)と増加傾向を示している。
石綿の輸入量が増大しているのは、堅調な建築需要に支えられて、石綿スレート等の石綿を含有する建材の生産量が増加したこと等によるものと考えられる。
しかしながら、今後の石綿の使用量については、石綿の代替製品の開発及び含有率の低減化の進展により、減少するものと考えられる。
また、使用制限については、将来的に安全な物質に代替させることが人の健康の確保という観点から望ましいものの、石綿の代替品の開発状況にかんがみ、現時点で直ちに石綿の使用を制限する考えはない。
アメリカにおける石綿訴訟については、訴訟の内容、件数等詳細を承知していない。
現時点において直ちに石綿の使用禁止又は制限について法規制を行う考えはない。
建築物の改修・解体に伴う石綿の飛散防止については、昭和六十二年十月二十六日付け環境庁大気保全局大気規制課長通知「建築物の改修・解体に伴うアスベスト(石綿)による大気汚染の防止について」により、都道府県及び十大政令市の大気保全担当部(局)長に対し、吹付け石綿で覆われた天井等が存在する建築物の改修・解体工事の実施時における石綿の環境大気中への排出抑制について、石綿の飛散を防止するため必要な作業時の措置等を示している。
公立小学校及び中学校等の吹付け石綿対策工事は、昭和六十二年度以降、国庫補助事業等により行われてきており、昭和六十二年五月の文部省の調査による吹付け石綿使用校千三百三十七校のうち、昭和六十三年度末で、おおむね八割の学校で実施されたと承知している。
現在工事中の東京都第二庁舎においては、外壁の目地材として石綿が使用されているが、これは石綿成型品であり、かつ、直接外気に接することのないような措置が講じられていることから、粉じんの飛散のおそれはないと承知しているので、直ちにその使用制限等の措置を講ずる必要はないと考えている。
政府としては、石綿の代替製品の開発状況及び石綿の含有率の低減化の現状について、調査・検討を行っているところであり、その検討結果を踏まえ適切に対応していく所存である。
なお、関係業界においては、既に石綿の代替製品の開発及び石綿含有率の低減化に取り組んでいると承知している。