答弁本文情報
平成三年四月十九日受領答弁第八号
内閣衆質一二〇第八号
平成三年四月十九日
衆議院議長 櫻内義雄 殿
衆議院議員草川昭三君提出不法滞在の外国人の医療費支払等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員草川昭三君提出不法滞在の外国人の医療費支払等に関する質問に対する答弁書
一について
法務省入国管理局の推計によれば、平成二年七月一日現在、約十万人の不法滞在者が国内に潜在している。
医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十九条第一項の規定による診療に応じる義務の有無を判断するに当たっては、同項にいう正当な事由の有無を個々の事例に即して具体的に検討することを必要とするが、一般的には、治療費を支払うことができないこと又は不法滞在者であることのみを理由として診療を拒むことはできない。
御指摘の治療費の支払は基本的には医療機関と患者の間の民法(明治二十九年法律第八十九号)上の債権債務関係として取り扱われるべき問題であるが、御指摘のような事態が生じ、人道上の立場からもその改善について要請があることは認識しており、今後の研究課題であると考えている。
国公立病院も他の医療機関と同様に診療費により運営することを原則としていることから、不法滞在者に対して国公立病院が病院側の負担で医療を行うという制度を設けることは、不適当と考えている。
なお、不法滞在者は、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)の規定に基づき退去強制の対象となるが、これらの者の医療を国公立病院が行うという制度を設けることは、政府自らが不法滞在を容認しているとの誤解を招くおそれがある。
我が国に不法滞在する外国人は入管法の規定に基づき退去強制の対象となること、また、これらの者に対し医療保障を行うことが結果として不法滞在を容認し、更にこれを助長させるおそれがあることから、不法滞在であることを前提とした医療保障を行うことは、困難である。
不法就労者等入管法に違反し国内に潜在している不法滞在者の退去強制手続において、これら入管法違反者からの事情聴取を行っており、その申立ての中で賃金の不払又は労働災害があったと認められるような場合には、所要の救済措置が採られるよう、その人権に十分に配慮しているところである。
いわゆるすべての移住労働者及びその家族の権利保護に関する国際条約は、内容的には問題点が多いと考えるが、移住労働者及びその家族の権利保護を目的とする同条約の理念そのものは理解できる。