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平成三年十一月一日受領
答弁第九号

  内閣衆質一二一第九号
    平成三年十一月一日
内閣総理大臣 海部俊樹

         衆議院議長 櫻内義雄 殿

衆議院議員常松裕志君提出核燃料物質輸送とその輸送事故の防災に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員常松裕志君提出核燃料物質輸送とその輸送事故の防災に関する質問に対する答弁書



一の1及び2について

 道路上及びふ頭内で自動車により天然六ふっ化ウランを運搬する場合にあっては、加工事業者及び原子炉設置者並びにこれらの者から運搬を委託された者(以下「原子炉設置者等」という。)は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第五十九条の二第一項により、運輸省令(運搬する物についての措置については、総理府令)で定める技術上の基準に従って保安のために必要な措置を講じなければならないこととされており、船舶により天然六ふっ化ウランを運搬する場合にあっては、荷送人及び船長は、船舶安全法(昭和八年法律第十一号)第二十八条第一項により、危険物船舶運送及び貯蔵規則(昭和三十二年運輸省令第三十号。以下「危規則」という。)で定める技術上の基準に適合するように運送しなければならないこととされている。さらに、ウランの量が五百キログラムを超える天然六ふっ化ウランが運搬される場合には、加工事業者は、原子炉等規制法第五十九条の三第二項により、運搬が開始される前に、総理府令で定める事項についての運搬に関する取決めの締結に関する科学技術庁長官の確認を受けなければならないこととされている。そして、科学技術庁長官は、核燃料物質等の工場又は事業所の外における運搬に関する規則(昭和五十三年総理府令第五十七号。以下「事業所外運搬規則」という。)第十七条の七第一項に規定する当該確認の申請書を受理した時点で、当該天然六ふっ化ウランの運搬を承知するとともに、当該確認をした場合には、原子炉等規制法第七十一条第十項により、関係大臣に当該確認をした旨を遅滞なく通報することとされている。
 また、特定港(港則法(昭和二十三年法律第七十四号)第三条第二項の特定港をいう。)において天然六ふっ化ウランの積込、積替又は荷卸(以下「荷役」という。)をするには、船舶は、港則法第二十三条第一項により、港長(海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)第二十一条第一項に基づき海上保安官の中から海上保安庁長官により命じられた者をいう。以下同じ。)の許可を受けなければならないこととされている。そして、港長は、当該許可の申請を受理した時点で、当該天然六ふっ化ウランの運搬を承知することとなる。
 なお、原子炉設置者等は、その所持する天然六ふっ化ウランについて事故が生じたときは、原子炉等規制法第六十三条により、遅滞なくその旨を警察官又は海上保安官に届け出なければならないこととされている。
 また、地震、火災その他の災害が起こったことにより、原子炉設置者等の所持する天然六ふっ化ウランによる災害が発生するおそれがあり、又は発生した場合において、当該事態を発見した者は、原子炉等規制法第六十四条第二項により、直ちにその旨を警察官又は海上保安官に通報しなければならず、さらに、原子炉設置者等は、自動車、船舶等に火災が起こり、又は、これらに延焼するおそれがある火災が起こったときには、原子炉等規制法第六十四条第一項並びにこれに基づく核燃料物質等の事業所外運搬に係る危険時における措置に関する規則(昭和五十三年運輸省令第六十八号。以下「危険時措置規則」という。)第一項及び事業所外運搬規則第十八条第一項により、直ちにその旨を消防吏員又は海上保安官に通報しなければならないこととされている。

一の3及び4について

 陸上において自動車により放射線障害防止のための措置が特に必要な核燃料物質であって運輸省令で定めるもの等を運搬する場合には、使用者、加工事業者、原子炉設置者及び再処理事業者並びにこれらの者から運搬を委託された者(以下「使用者等」という。)は、原子炉等規制法第五十九条の二第二項により、シリンダーの表示ラベル等の標識、積載方法その他の運搬に関する措置が運輸省令(運搬する物についての措置については、総理府令)で定める技術上の基準に適合することについて、運搬時に科学技術庁長官又は運輸大臣の確認を受けなければならないこととされている。
 天然六ふっ化ウランを運搬する場合には、当該確認の対象とはならないが、原子炉等規制法第五十九条の二第一項により、原子炉設置者等が運輸省令(運搬する物についての措置については、総理府令)で定める技術上の基準に従って保安のために必要な措置を講じなければならないこととされており、御指摘の輸送物の表示ラベルなどのチェックや輸送方法の安全確認については運搬時に原子炉設置者等自らが行うところとなっている。

一の5について

 陸上において自動車により天然六ふっ化ウランを運搬する場合には、原子炉等規制法等により輸送車両の総重量等について確認を行うこととはなっていないが、核燃料物質等車両運搬規則(昭和五十三年運輸省令第七十二号。以下「車両運搬規則」という。)第四条等により、原子炉設置者等は運搬に際し核燃料輸送物の安全性を確保しなければならないことから、総重量が重量制限に反することがない旨の確認は運搬時に原子炉設置者等自らが行うところとなっている。

一の6について

 天然六ふっ化ウランを積載していることのみのために、車両が道路を通行することについて届出等を必要とすることはない。

一の7について

 天然六ふっ化ウランの運搬中に事故で天然六ふっ化ウランが漏れた場合には、原子炉設置者等は、原子炉等規制法第六十三条により、遅滞なく警察官又は海上保安官に届け出なければならないこととされており、また、原子炉設置者、加工事業者等は、原子炉等規制法第六十七条等により、直ちにその旨を科学技術庁長官又は運輸大臣等に報告しなければならないこととされている。

二について

 コンテナ輸送に係る道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第四十七条の二第一項に基づく特殊車両の通行許可に当たっては、当該通行許可申請書には、当該コンテナの収納物については明らかにされず、コンテナとのみ記載されるため、道路管理者としては、それが天然六ふっ化ウランの輸送のために提出されたものであるかどうかを確認することはできない。このため、御指摘の運搬については、通行条件、条件書の記載内容、許可申請書提出の有無、運搬する車両の諸元のいずれについても確認することができない。

三の1について

 天然六ふっ化ウランの荷揚げに際して、海上保安官は原則として立ち会うこととしている。

三の2について

 核燃料物質を運搬する場合には、一の1及び2についてにおいて述べた天然六ふっ化ウランについての規制等に加え、ふ頭内で自動車により放射線障害防止のための措置が特に必要な核燃料物質であって運輸省令又は総理府令で定めるもの等を運搬するときには、使用者等は、原子炉等規制法第五十九条の二により、運搬に関する措置が運輸省令(運搬する物についての措置については、総理府令)で定める技術上の基準に適合することについて科学技術庁長官又は運輸大臣の確認を受けなければならないこと、当該運搬をする旨を都道府県公安委員会に届け出なければならないこと等とされている。

三の3について

 核分裂性物質等の荷役が行われる場合には、港則法上の荷役の許可に当たって、荷役が安全に実施されるよう、荷役が行われる岸壁を限定するとともに原則として夜間の荷役を禁止している。さらに、次に掲げる事項等について指導しているところである。

 (一) 荷役が行われる場所の付近では、関係者以外の者の立入りを禁止すること。
 (二) 荷役が行われる場所の付近では、火気の取扱いを厳禁すること。
 (三) 荷役中に事故が発生した場合には、直ちに港長に通報すること。
 (四) 荷役中、核分裂性輸送物等が落下し、放射線の漏えいが明らかとなった場合、港長が中止させる必要があると認めた場合等には、直ちに荷役を中止すること。
    また、核燃料物質を含め、危険物の荷役をする場合には、船長又はその職務を代行する者は、危規則第五条の四により、これに立ち会わなければならないこととされている。

三の4について

 「緊急搬出」とは、荷役に従事する業者間で通俗的に用いられる用語であり、その詳細については承知していないが、このような用語が用いられるのは、核燃料物質等が陸揚げ後直ちに輸送されるため、東京都火災予防条例第五十九条に基づく届出を要する貯蔵・取扱いに該当しない場合であると聞いている。

三の5について

 原子炉等規制法第六十四条により、使用者等は、地震、火災その他の災害が起こったことにより、その所持する核燃料物質による災害が発生するおそれがある場合等には、応急の措置を講じなければならないこととされている。この場合において、科学技術庁長官又は運輸大臣は、当該核燃料物質による災害を防止するために必要な措置を講ずることを使用者等に命ずることができることとされている。
 また、一の1及び2について並びに一の7についてにおいて述べたとおり、発見者等は、警察官、海上保安官、消防吏員、科学技術庁長官又は運輸大臣等に通報等をしなければならないこととされている。
 なお、核燃料物質の荷役に係る港則法上の許可に際しては、荷役中に事故が発生した場合には直ちに港長に通報するよう船長に対し指導しているところである。
 さらに、荷役中及びふ頭内での事故の通報等を受けた場合には、都道府県警察、海上保安部署及び消防機関並びに関係省庁が相互に密接な連絡を取りつつ対応することとなる。

三の6について

 核燃料物質がふ頭内にあるときには、使用者、加工事業者、原子炉設置者又は再処理事業者に輸送本部が設置されていると聞いている。

四の1について

 海上災害防止センターは、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号。以下「海防法」という。)に基づき、海上防災のための措置を実施すること等をその業務としており、危険物や核燃料物質による化学災害の場合にも、油若しくは有害液体物質等の排出又は海上火災の発生に対応するため、船舶所有者の委託等を受けて出動することができる。

四の2及び3について

 核原料物質、核燃料物質、放射性同位元素又はこれらによって汚染された物(以下「放射性物質」という。)については、原子炉等規制法第六十一条の二の二及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号。以下「放射線障害防止法」という。)第三十条の二により、人命又は船舶等の安全を確保するためやむを得ない場合等を除き海洋投棄してはならないこととされている。
 また、船舶に積載してある核燃料物質を含め、危険物については、危規則第五条の九第二項により、船長が、人命、船舶又は他の貨物に対する危害を避けるため必要があると認めるときは、当該危険物を廃棄することができることとされている。
 さらに、危険物が海防法上の油、有害液体物質等又は廃棄物(放射性物質を除く。)に該当する場合には、同法第四条、第九条の二又は第十条により、船舶の安全を確保し、又は人命を救助する場合等を除き、当該危険物を船舶から排出してはならないこととされている。
 万一、船舶の事故により核燃料物質、放射性同位元素又はこれらにより汚染された物(以下「核燃料物質等」という。)による災害等が発生するおそれがあり、又は発生した場合には、原子炉等規制法第六十四条又は放射線障害防止法第三十三条に基づき、使用者等又は放射線障害防止法上の使用者等は、危険時措置規則、放射性同位元素等の事業所外運搬に係る危険時における措置に関する規則(昭和五十六年運輸省令第二十二号)等で定めるところにより汚染の広がりの防止及び汚染の除去を行う等の措置を講じなければならないこととされており、さらに、こうした災害等を防止するための措置が緊急を要すると判断される場合には、科学技術庁長官又は運輸大臣は使用者等又は放射線障害防止法上の使用者等に対し、核燃料物質等の所在場所の変更その他核燃料物質等による災害等を防止するため必要な措置を講ずることを命ずることができることとされている。

五の1から5までについて

 「放射性物質安全輸送連絡会」は、法令上特に明文の根拠規定はないが、放射性物質の輸送に関する安全対策等について、関係省庁間における密接な連絡等を行うため、関係省庁の協議に基づき設置されたものである。「放射性物質輸送の事故時安全対策に関する措置について」は、法令上特に明文の根拠規定はないが、放射性物質の輸送事故時の安全対策に関して一層の整備充実を図るため、昭和五十九年二月二十四日の「放射性物質安全輸送連絡会」において関係省庁が申し合わせた事項である。
 運輸省にあっては、事故が発生した場合に、原子炉等規制法第六十四条第三項に基づき核燃料物質による災害を防止するために必要な措置を講ずることを使用者等に対し命ずる等の措置を、海上保安庁にあっては、原子炉等規制法第六十四条第二項の通報等を受けた場合に、事故の状況把握に努めるとともに、事故の状況に応じて、現場海域への立入制限、人命救助等に関する必要な措置を、関係省庁と速やかに連絡調整を行いつつ採ることが「放射性物質輸送の事故時安全対策に関する措置について」において確認されている。
 「放射性物質輸送事故対策会議」については、法令上特に明文の根拠規定はないが、「放射性物質輸送の事故時安全対策に関する措置について」において、放射性物質の輸送事故に際して、関係省庁間の密接な連絡調整が必要と判断される場合又は関係省庁の求めがあった場合には、速やかに「放射性物質輸送事故対策会議」を開催することが確認されている。

五の6及び7について

 「放射性物質輸送事故対策会議」は、これまでのところ昭和六十年八月十二日の日本航空一二三便の事故のときのみ開催されている。
 同会議において関係省庁は、同便に積載されていた放射性輸送物の数量等を把握し、現地捜索機関に対して注意事項を連絡すること、現地調査を行うために関係省庁の職員を現地に派遣すること及び社団法人日本アイソトープ協会等の職員にもその参加を要請することを決定するとともに、最終的な現地調査による放射線の測定の結果の確認等を行った。

五の8及び9について

 御指摘の事故は昭和六十年八月十二日の夕刻に発生したが、翌十三日未明に開催された「放射性物質輸送事故対策会議」において関係省庁は、現地調査のために警察庁及び運輸省の職員を現地に派遣すること並びに社団法人日本アイソトープ協会の職員にもその参加を要請することを決め、これらの者は同日中に現地入りし、十四日の朝から事故現場において調査を開始した。
 さらに、その後、同会議における決定により科学技術庁及び日本航空株式会社等の職員が現地調査に参加した。

五の10及び11について

 昭和六十年八月十三日に開催された「放射性物質輸送事故対策会議」において関係省庁は、日本航空一二三便に積載されていた放射性輸送物は長時間身体に密着保持させない限り人体への障害を及ぼすおそれはないことを確認した。また、事故発生から四箇月後に開催された同会議において関係省庁は、最終的な現地調査による放射線の測定の結果を受け、人体への障害を及ぼすおそれはないことを確認した。

六の1及び2について

 車両運搬規則第二十二条に基づく指定をする場合には、運搬に関する実績、原子炉等規制法第五十九条の二第二項の確認を受けた実績、運搬の実施体制等を審査することとなるが、現在のところ、当該指定に係る申請を受理したことはない。

六の3及び4について

 平成三年九月二十六日から翌二十七日までの天然六ふっ化ウランの輸送に関しては、「放射性物質安全輸送連絡会」等を通じ、関係省庁間で安全対策の確認等を行った。
 次回以降の天然六ふっ化ウランの輸送に関しても、必要に応じ「放射性物質安全輸送連絡会」等を通じ、関係省庁間で安全対策の確認等を行うこととしている。





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