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答弁本文情報

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平成九年三月二十五日受領
答弁第六号

  内閣衆質一四〇第六号
    平成九年三月二十五日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員若松謙維君提出税制改正ならびに中小会社の決算公開に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員若松謙維君提出税制改正ならびに中小会社の決算公開に関する質問に対する答弁書




一の1について

 贈与税の基礎控除額の水準は、少額不追求の観点、相続税の補完税である贈与税の機能の維持の観点等から設定されているものであり、現在の六十万円という水準は、このような観点にかんがみ、妥当な水準であると考えている。

一の2について

 所得税における各種所得控除については、基礎的な人的控除のほか、特別な事情に基づく追加的費用の斟酌を通じて担税力に応じた負担を求めるため、あるいは基礎的な控除で対処し得ない担税力減殺要因を斟酌する等の見地から設けられているものであり、基本的に維持すべきものと考える。
 配偶者特別控除は、片稼ぎの給与所得者世帯においては仕事に直接従事する者の所得の稼得に他方の配偶者も相応の貢献をしていることや、事業所得者においては青色事業専従者給与の支払による配偶者への所得分与を通じて負担緩和を図り得ること等を考慮し、主としてサラリーマン世帯の税負担の調整を図るとともに、パートで働く配偶者の所得が一定額を超える場合に、かえって世帯全体の税引後手取り所得が減少するという逆転現象にも対処する趣旨から設けられているものである。このような趣旨からすれば、配偶者特別控除を廃止することは適当でないと考えている。しかしながら、今後、所得税の人的控除の基本的な在り方を検討する際には、女性の就業等の社会情勢の変化も踏まえながら、配偶者特別控除の在り方についても検討していくべきものと考える。
 なお、所得税においては、一定の所得があれば、夫婦であっても所得を稼得する個人ごとにその稼得する所得に対して課税する方式である個人単位課税を採っており、消費生活を同じくする世帯ごとに夫婦又は世帯の構成員の稼得する所得を合算して課税する方式は採っていない。

一の3について

 消費税の事業者免税点制度及び簡易課税制度に関する届出書の提出時期については、消費税が転嫁を予定している税であり課税事業者であるか否かが商品の値付けに影響を及ぼすこと、また、簡易課税制度を選択するか否かにより売上げ、仕入れに関する記帳の内容に影響を及ぼすこと等、これらの特例措置の適用の有無が取引方法等に影響を与えるものであることから、このような制度の適用の有無について課税期間開始前に確定しておくことが事業遂行や適正な課税の実現のために必要であるので、課税期間が開始する前にその届出書の提出を求めているものである。
 また、事業者免税点制度や簡易課税制度は、中小事業者の事務負担等に配慮して設けられており、本来、納付税額が有利になるか、不利になるかという考慮に基づいて、その適用を受けるか否かが判断されるべき性格のものではないと考えている。
 仮に、課税事業者選択届出書の提出時期を前事業年度の申告期限までとすれば、課税期間の開始後届出書の提出時期までの間、課税事業者となることが未確定のまま消費税相当分を上乗せして販売していた事業者が、結果として免税事業者にとどまるといった場合も考えられるが、このような事態は、いわゆる「益税」の発生を助長するものとして、国民の理解は得られないものと考えられる。
 したがって、これらの届出書の提出時期を、前事業年度の申告期限まで延長することは困難である。
 なお、事業者免税点制度及び簡易課税制度に関する届出書以外の各種届出書(課税期間の短縮に関する届出書を除く。)及び承認申請書で、その届出等に係る事項の適用が翌期以降になるものはない。

一の4について

 固定資産税は、資産の保有という事実に着目して課される税であり、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)は、固定資産税の課税標準を固定資産の適正な時価としているところである。
 適正な時価とは、正常な条件の下に成立する取引価格をいうものと考えられており、固定資産評価基準(昭和三十八年自治省告示第百五十八号)は、具体的な評価方法として、最も客観的な評価が可能である等の理由から売買実例価格を基準として評価する方法を採用し、このうち宅地の評価においては、当分の間、地価公示価格等の七割を目途として評定することとされているところである。
 収益価格を用いるべきであるとの御指摘と考えられるが、収益価格を実際の評価に用いるに当たっては、客観的な数値を把握するのが難しいこと、実際の賃貸料等にもかなりの格差があること、我が国には成熟した賃貸市場が存在しないことという問題点があるため、現実には採用し難いものと判断している。
 ただ、地価公示価格等の基となっている不動産鑑定評価制度においても、収益還元法を重視する等の観点に立った新しい不動産鑑定評価基準が示されているところであり、固定資産税の評価においても、評価の検証手段として、収益還元法を活用することが検討されるべき課題であると考えている。
 平成九年度の宅地の評価替えにおいては、平成八年一月一日を価格調査基準日として市町村において評価を行ったところであるが、市町村長は、固定資産評価基準に基づき、同日から平成八年七月一日までの間に地価が下落したと認めた場合には、その地価下落に応じて評価額に修正を加えたところである。また、今回の税制改正において、評価額の据置年度である平成十年度又は平成十一年度において地価が下落し、市町村長が修正前の価格を用いることが固定資産税の課税上著しく均衡を失すると認める場合には、価格を修正する措置を講ずることとしており、地価の変動を反映した適正な評価が行われるものと考えている。

一の5について

 税務調査については、例えば、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百三十四条に質問検査に関する規定が設けられているが、最高裁判所の裁判例によれば、「質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、右必要と相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、これを権限ある収税官吏の合理的な選択に委ねたものと解するのが相当である」と解されており(昭和五十八年七月十四日最高裁判所判決。同旨昭和四十八年七月十日最高裁判所決定及び平成五年三月十一日最高裁判所判決)、さらに、「質問検査権を行使しうべき場合につき、具体的かつ客観的な必要性のあることを要件としており、質問検査の範囲、程度、時期、場所等、権限ある収税官吏の合理的な選択に委ねられていると解される実施の細目についても、質問検査の必要と相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度内という制限を課して客観的にその範囲を画定している」と解されている(昭和五十八年七月十四日最高裁判所判決)。
 したがって、質問検査の範囲、程度、時期、場所等の税務調査の実施の細目は、権限ある収税官吏の合理的な選択にゆだねられており、質問検査の必要と相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度内という制限を課して、客観的にその範囲が画定されているものと考えている。
 このような観点から見て、税務調査に関して納税者の権利保護に欠けているということはないと考えている。

二について

 いわゆる中小会社の計算書類の登記所における公開の制度を中小会社に対する外部監査の制度に先行させて導入する準備を進めているとの事実はない。
 また、中小会社の計算の適正を確保するための方策については、中小会社にふさわしい会社制度全体の在り方を検討する中で、関係各界の意見も十分に聴きながら、検討を進めていくことが必要であると考えている。





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