衆議院

メインへスキップ



答弁本文情報

経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成九年五月二十七日受領
答弁第一七号

  内閣衆質一四〇第一七号
    平成九年五月二十七日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員平田米男君提出アトピー性皮膚炎治療によるステロイド剤の副作用と被害に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員平田米男君提出アトピー性皮膚炎治療によるステロイド剤の副作用と被害に関する質問に対する答弁書



一について

 アトピー性皮膚炎は、慢性に経過するかゆみの強い湿疹を主たる症状とする疾病であり、その発症機序等については、多くの場合、アレルギー体質等のアトピー素因が存在するといわれているが、現時点においては不明な点が多い。
 厚生省においては、平成四年度から平成六年度までの「アレルギー総合研究事業」並びに平成七年度及び平成八年度の「長期慢性疾患総合研究事業」においてアトピー性皮膚炎研究班及び疫学研究班を設置し、実態の把握、病因及び病態の解明並びに治療法の開発に努めてきたところであり、平成九年度においては、「免疫・アレルギー等研究事業」において研究班を設置して引き続き実態の把握等に努めることとしている。
 厚生省の疫学研究班が「アレルギー総合研究事業」において実施したアレルギー疾患の全国疫学調査(以下「全国疫学調査」という。)によれば、アトピー性皮膚炎は増加の傾向にあり、平成六年度における有病率(調査時点において疾病を有する者の割合をいう。以下同じ。)は、小児(中学生以下の者をいう。)十・三パーセント及び成人(小児以外の者をいう。以下同じ。)七・四パーセントである。

二について

 アトピー性皮膚炎は、一般に乳幼児期に始まり、その多くは成長とともに治癒するが、思春期まで遷延するものもあり、最近では成人の難治症例が増加しているといわれている。全国疫学調査によれば、成人のアトピー性皮膚炎の有病率は七・四パーセントであり、また、平成五年十月における厚生省の患者調査によれば、調査期日にアトピー性皮膚炎及び関連病態により医療機関を受診した患者数は、全国で約三万三千人と推計されており、そのうち二十歳以上の者は約一万一千人である。

三について

 御指摘の患者団体を通じた調査については、患者団体は、成人のアトピー性皮膚炎の実態把握に関する疫学的な調査の対象集団としては適当でないと考えられる場合もあるため、現在のところ実施する予定はない。

四について

 医薬品による副作用については、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第六十九条又は第七十七条の四の二の規定に基づく医薬品製造業者、輸入販売業者等からの報告及び医療機関からの報告により把握している。御指摘のアトピー性皮膚炎の治療に用いられたステロイド外用剤の副作用については、医薬品及び疾病を特定して検索できる平成六年九月以降の報告について調査したところ、九件の報告が行われている。

五について

 難治性アトピーとステロイド外用剤の長期連用の関係については、これに関して厚生省のアトピー性皮膚炎研究班が行った研究報告においては、顔面へのステロイド外用剤の長期連用の危険性とその中止による重症化を指摘するもの(平成六年度)、ステロイド外用剤は適切に使用すれば皮膚萎縮等の副作用は回避できる可能性が高いとするもの(平成七年度)、これまでステロイド外用剤による可能性が指摘されていた症状のうちいくつかはその可能性が否定的であると考えられるとするもの(平成八年度)等があり、いまだその評価は定まっていないものと考えている。

六及び八について

 御指摘のステロイド外用剤を始め医薬品については、一般に、薬事法第十四条第一項(同法第二十三条において準用する場合を含む。)の規定に基づき承認された内容に従い、患者の症状等に応じ、医療上の必要がある場合に使用されるものであり、御指摘のようにステロイド外用剤の長期連用を禁止するような措置を採ることは適当でないと考える。
 しかしながら、適正な使用を確保するため、ステロイド外用剤のうち医療用医薬品については、「精神神経用剤等の使用上の注意事項について」(昭和五十二年七月六日付け薬発第六百三十八号薬務局長通知)に基づき、従来から添付文書の使用上の注意事項の欄(以下「注意事項の欄」という。)において長期連用についての注意喚起を行うとともに、医師が患者の症状等に応じてその経過を観察しながら使用期間を判断しているところである。
 ステロイド外用剤のうち一般用医薬品については、「一般用医薬品の使用上の注意記載要領について」(昭和五十二年八月十日付け薬発第八百四十号薬務局長通知)に基づき、従来から一定期間使用しても症状の改善が見られない場合には、使用を中止し、医師、薬剤師等に相談すべきことが注意事項の欄に記載されている。また、一定量以上の副腎皮質ホルモンを含有するものについては、製造業者において長期連用をしない旨を注意事項の欄に記載する対応が採られていると承知している。
 御指摘の薬局及び薬店における医薬品の販売については、「薬局業務運営ガイドライン」(平成五年四月三十日付け薬発第四百八号薬務局長通知)を定め、薬局において適切な服薬指導を行うよう指導しているところであり、また、薬事法等の一部を改正する法律(平成八年法律第百四号)において、薬事法に第七十七条の三第四項の規定が追加され、医薬品を一般に購入する者又は使用する者に対し医薬品の適正な使用のために必要な情報を提供することが、薬局開設者及び医薬品の販売業者の努力義務とされたため、これに基づいて、これらの者に対して、必要に応じて添付文書に記載された事項等を分かりやすく説明すること等について指導を行っているところである。

七について

 適正な使用目的で適正に使用されたにもかかわらず生じた医薬品の副作用による健康被害については、医薬品副作用被害救済制度の対象となるものであり、御指摘のステロイド外用剤の副作用による健康被害についても、その健康被害が医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法(昭和五十四年法律第五十五号)第二十八条第一項各号に規定する要件に該当する場合には、同条第二項第二号に該当する場合を除き、同法に基づく救済給付が行われることとなる。

九について

 ステロイド外用剤を使用しないアトピー性皮膚炎の治療法の研究については、これまで、「長期慢性疾患総合研究事業」の中で、移植免疫抑制薬の外用、海洋深層水療法、難治化した場合におけるソラレン長波長紫外線治療(PUVA療法)等の有効性について実施してきたところであり、平成九年度に実施する「免疫・アレルギー等研究事業」においても引き続きこれらの治療法の研究を推進していくこととしている。





経過へ | 質問本文(HTML)へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.