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答弁本文情報

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平成九年七月十五日受領
答弁第三一号

  内閣衆質一四〇第三一号
    平成九年七月十五日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員枝野幸男君提出住友金属和歌山製鉄所沖出し中止問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員枝野幸男君提出住友金属和歌山製鉄所沖出し中止問題に関する質問に対する答弁書



一の1について

 御指摘の住友金属和歌山製鉄所沖出しに係る和歌山下津港西防波堤沖埋立てについては、和歌山県知事が昭和五十三年八月に住友金属工業株式会社(以下「住友金属」という。)から提出された当該埋立ての免許の願書について審査を行ったものである。
 当該審査において、和歌山県知事は、瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四十八年法律第百十号)第十三条第一項の規定に基づいて同法第三条第一項に規定する瀬戸内海の特殊性につき十分配慮するとともに、住友金属和歌山製鉄所(以下「和歌山製鉄所」という。)の一部の移転によって地域の環境の改善が図られる等その埋立ての内容が公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)第四条第一項に定める基準に適合すると判断したことから、同法第四十七条第一項の主務大臣の認可を受けて、昭和五十五年六月に同法第二条第一項の免許を行ったものである。

一の2及び3について

 御指摘の埋立地における廃棄物の埋立処分に関しては、財団法人和歌山環境保全公社が和歌山製鉄所からの廃棄物を含むすべての廃棄物の埋立処分事業を、それぞれの処分料金を徴収した上で実施するとともに、和歌山製鉄所と同公社との契約に基づいて、和歌山製鉄所が廃棄物処分作業を請け負っていたと承知している。
 財団法人和歌山環境保全公社が徴収する処分料金の単価は、和歌山製鉄所の場合、トン当たり昭和五十六年度から昭和六十三年度までは一律八十五円、平成元年度から平成五年度までは消費税込みで一律八十七円であったのに対し、和歌山製鉄所以外の企業の場合、昭和五十六年度から昭和六十三年度までは、燃えがら、汚泥等はトン当たり千八百円、固化物等はトン当たり千三百円及び建設廃材はトン当たり五百円、平成元年度から平成五年度までは消費税込みで燃えがら、汚泥等はトン当たり千八百五十四円、固化物等はトン当たり千三百三十九円及び建設廃材はトン当たり五百十五円であったと承知している。なお、平成六年度以降においては、和歌山製鉄所と和歌山製鉄所以外の企業の間で処分料金の単価に差は設けられていないと承知している。
 和歌山製鉄所の廃棄物処分作業の請負料金は、昭和五十六年度から昭和六十三年度まではトン当たり七十五円、平成元年度から平成五年度までは消費税込みでトン当たり七十七円であり、平成六年度以降は、廃棄物処分に必要な築堤作業費、仮設道路工事費等を含めた実費相当の額として、トン当たり平成六年度から平成八年度までの平均で七百十九円であったと承知している。当該請負契約に基づき、昭和五十六年度から平成八年度までに和歌山製鉄所が財団法人和歌山環境保全公社から受け取った総額は約三十九億六千万円であると承知している。
 なお、和歌山製鉄所と和歌山製鉄所以外の企業の廃棄物処分に係る料金設定が異なっていたことについては、和歌山製鉄所から排出される廃棄物の計量等の業務を財団法人和歌山環境保全公社ではなく和歌山製鉄所が実施していたこと、埋立ての護岸工事費用等を住友金属が負担していたこと、及び平成五年度までの間は和歌山製鉄所が実費よりも安価な価格で廃棄物処分作業を請け負っていたことによるものと承知している。

一の4について

 和歌山下津港西防波堤沖埋立ての工事費は、住友金属が全額負担しており、そのうちの護岸工事費の額は、当該埋立ての免許の願書の添付図書によれば約五百六十六億円である。

一の5及び6について

 公有水面埋立法第二十七条第一項において、同法第二十二条第一項の竣功認可後十年を経過していない埋立地の所有権の移転等については、都道府県知事の許可を受けることが必要とされており、都道府県知事は、同法第二十七条第二項各号の要件に適合すると判断した場合に当該許可を行うものである。同項第三号において、埋立地の所有権の移転等をしようとする者がそれにより不当に受益しないことが許可の要件とされていることから、所有権の移転により埋立地の所有者が不当に受益することとなる場合には、都道府県知事は当該所有権の移転の許可を行わないこととなる。
 仮に、今後、住友金属が和歌山下津港西防波堤沖埋立地の第二工区の所有権の移転について、公有水面埋立法第二十七条第一項の規定に基づく許可の申請を行った場合には、和歌山県知事に対して慎重な審査をするよう指導してまいりたい。

二の1について

 和歌山下津港西防波堤沖埋立てについては、和歌山県知事が、昭和五十五年に第一工区から第三工区までについて公有水面埋立法第二条第一項の免許を行い、昭和五十八年に第一工区、平成四年に第二工区についてそれぞれ同法第二十二条第一項の竣功認可を行っている。
 その間、平成三年に住友金属から埋立地の土地利用計画の見直しを行いたい旨の希望が表明されたが、これは、当該埋立て免許の効力に何ら影響を与えない事実上の行為であり、埋立てに関する工事は免許の内容のとおりに完成したことから、平成四年に和歌山県知事は第二工区について竣功認可を行ったものである。

二の2について

 御指摘の点について、環境庁において和歌山県に照会したところ、同県から、中松江自治会と和歌山製鉄所の間で、降下ばいじん量の目標値について平成六年以降の夏場(五月から九月まで)の中松江地区センターにおいて測定した同地区における降下ばいじん量の平均値を一月につき一平方キロメートル当たり四・〇トン(影響風向頻度二五・九パーセントの場合)と同等以下とし、影響風向頻度に応じて補正することができること、及び異常気象等の和歌山製鉄所に起因するものでないことが明らかな要因により降下ばいじん量が高値を示したと認められる場合は協議してその取扱いを決定することが相互に確認されている旨の報告があったところである。

二の3について

 御指摘の中松江自治会と和歌山製鉄所の間の確認事項に基づいて行われている降下ばいじん量の測定結果は、環境庁としては、承知していない。当該確認事項における降下ばいじん量の目標値は、当事者間で自主的に設定されたものであり、これが守られているか否かについては、当事者間で判断されるべきであり、環境庁としてその実行を指導する立場にはないと考える。

二の4の(1)について

 住友金属が、公有水面埋立法第二条の規定に基づいて昭和五十三年八月に提出した免許の願書においては、大気汚染、悪臭、騒音等についての環境改善に関する目標値(以下「環境改善目標値」という。)を設定し、これを達成するため、高炉滓及び転炉滓処理場等の公害発生源のうち移転によらざるを得ない設備は埋立地に移転した上で、必要な場合には散水設備の設置等の対策を講ずるとともに、既存の敷地内においても集じん設備の設置等の対策を講ずることが記載されているところである。

二の4の(2)について

 住友金属は、免許の願書に記載した対策として、高炉滓及び転炉滓処理場を埋立地に移転するとともに、環境改善目標値を達成すべく、既存の敷地内において粉じん飛散、悪臭、騒音等の防止のための設備の整備及び道路等に散水を行う等の操業上の対応を実施し、更に埋立地に移転しないコークス炉の一つに乾式消火設備を導入する等の追加的な環境保全対策を行っていると承知している。環境庁においては、和歌山県から、現在までに工場移転と同等以上の環境保全効果が認められているものとの報告を受けているところであるが、現在、報告の内容について現地調査を含め確認しているところであり、その結果必要があれば、所要の措置を講じてまいりたい。

二の5について

 御指摘の点について、環境庁において和歌山県に報告を求めたところ、住友金属は、環境保全のための対策を進めるに当たり、その計画を関係する周辺の自治会に提示するとともに、対策の実施後に設備の完成状況をこれらの自治会に視察してもらうこと等により、周辺住民の理解を得てきているところであり、今後、和歌山製鉄所の周辺環境に関する測定結果のモニタリングシステムによる迅速な公開も計画している旨の報告を受けている。

二の6について

 御指摘の点について、環境庁において和歌山県に報告を求めたところ、住友金属から和歌山製鉄所の沖出しの中止の希望が表明された平成三年及び住友金属から和歌山県知事に対して沖合移転を中止したい旨の申し出があった平成六年を含む前後五年間における騒音、振動及び悪臭の状況に関し、騒音規制法(昭和四十三年法律第九十八号)第二十一条の二、振動規制法(昭和五十一年法律第六十四号)第十九条及び悪臭防止法(昭和四十六年法律第九十一号)第十一条の規定に基づき、和歌山製鉄所敷地境界において測定した結果は、別表第一のとおり報告を受けている。
 測定値はほぼ横ばいに推移しているが、いずれの値もそれぞれの項目について各法に定める規制基準値以下となっている。

二の7について

 御指摘の点について、環境庁において和歌山市に報告を求めたところ、和歌山製鉄所において、ハイカーボン鋼の手入れ施設等から浸透液の廃液を地下浸透させていた事実があったこと及び同市が和歌山製鉄所の敷地境界にある井戸から地下水を採取し検査を行った結果、地下水の環境基準が定められている測定項目のすべてについて環境基準値以下であったことの報告を受けている。
 ハイカーボン鋼の手入れ施設等から排出された廃液から水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項第一号に規定される物質は検出されていないため、和歌山製鉄所がこの廃液を地下に浸透させる行為は同法第十二条の三の規定には違反していない。しかしながら、このような廃液の地下浸透は環境保全上好ましいことではないことから、和歌山県においては、恒久的な改善措置並びに協力会社を含む工場設備の点検及び環境保全意識の向上のための啓発の実施について、和歌山市においては、当該施設から排出される廃液の地下浸透防止措置、排水系統の総点検並びに和歌山製鉄所敷地境界にある井戸及び作業場周辺の地下水質検査の実施について、それぞれ指導がなされたと承知している。

二の8について

 御指摘の点について、環境庁において和歌山市に報告を求めたところ、現在、同市において、和歌山製鉄所周辺の地下水中のマンガンと和歌山製鉄所との関係を調査するため、和歌山製鉄所内及び周辺におけるボーリングの実施を和歌山製鉄所に指示するとともに、同市がボーリング地点の地下水質や土壌の分析を行っているところであるとの報告を受けており、調査の結果を踏まえて、適切に対処してまいりたい。

三の1、2、3、4及び6について

 公害防止事業費事業者負担法(昭和四十五年法律第百三十三号)は、同法第二条第二項に規定する緑地の設置等の公害防止事業を国又は地方公共団体が実施する場合における事業者が負担すべき費用の範囲、額の算定等について規定するものであり、事業者に対して緑地の設置等の公害防止事業の実施を義務付けるものではないので、同法に基づいて住友金属が緑地を整備することはない。同法が適用される事業については、同法第六条の規定に基づいて当該事業を実施する国の行政機関又は地方公共団体の長が定める費用負担計画に従って事業者が費用を負担することとされており、住友金属は、和歌山製鉄所周辺における湊緑地(約三・〇ヘクタール)、松江緑地(約六・二ヘクタール)及び西松江緑地(約五・九ヘクタール)の設置について和歌山県知事の定めた費用負担計画に基づいて費用を負担することとされているところである。
 次に、工場立地法(昭和三十四年法律第二十四号)においては、一定規模以上の工場又は事業場に関し、敷地内における緑地の確保について規定しているが、敷地外に整備される緩衝緑地については規定していない。同法第八条第一項の届出によれば、和歌山製鉄所の敷地内における緑地の面積は約四十ヘクタールである。
 また、和歌山海南都市計画においては、和歌山製鉄所及びその周辺について河西緩衝緑地として七十六・七ヘクタールを整備することが都市計画決定されている。このうち、和歌山県及び住友金属がそれぞれ事業の実施主体となって既に整備された当該緩衝緑地(公害防止事業団(平成四年十月一日以後においては環境事業団。以下同じ。)が施行して同県に譲渡したものを含む。)の面積は、合計約四十九・五ヘクタールである。当該緩衝緑地のうち未整備の部分について今後どのような形で整備を進めるかについては、現在、関係者間で調整中であるとの報告を同県から受けているが、御指摘の緩衝緑地の整備責任が県にある旨の住友金属の発言については承知していない。

三の5について

 公害防止事業団は、昭和五十七年度から平成四年度までの間、二期にわたり和歌山地区共同福利施設建設事業として湊緑地、松江緑地及び西松江緑地の整備を行っており、その年度別事業費とその内訳は、別表第二のとおりである。



別表第一
別表第一


別表第二
(一)第一期(湊緑地及び松江緑地計約九・二ヘクタール)(単位 百万円)
第一期(湊緑地及び松江緑地計約九・二ヘクタール)(単位 百万円)


(二)第二期(西松江緑地 約五・九ヘクタール)(単位 百万円)
第二期(西松江緑地 約五・九ヘクタール)(単位 百万円)




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