答弁本文情報
平成十年二月二十七日受領答弁第八号
内閣衆質一四二第八号
平成十年二月二十七日
衆議院議長 伊※(注)宗一郎 殿
衆議院議員福島豊君提出野菜の硝酸塩汚染に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員福島豊君提出野菜の硝酸塩汚染に関する質問に対する答弁書
一の1について
野菜からの硝酸塩の摂取状況については、昭和六十一年度、平成二年度及び平成八年度の厚生科学研究における食品添加物の一日摂取量に関する研究の中で、野菜その他の生鮮食品について、自然に含まれる硝酸塩及び加工した場合に添加物として含まれる硝酸塩の摂取量の把握等を行ったところである。
御指摘の硝酸塩の摂取状況については、一の1についてで述べたとおり、これまでの研究において摂取量を把握しているところである。野菜からの硝酸塩の摂取による健康に対する影響に関する調査については、硝酸塩はそもそも野菜中の成分として含まれており、通常の食生活において野菜中の硝酸塩が人体に有害な作用を引き起こすことはないと考えられること、我が国において野菜からの硝酸塩の摂取によって具体的な健康に対する影響が生じたという事例は承知していないこと、海外において昭和三十年代から四十年代にかけて生後三か月以下の乳児が野菜を摂取したことによりメトヘモグロビン血症を発症した事例があったことは承知しているが、我が国においては離乳がおおよそ生後五か月から開始されている実情からこのような事例が生じるおそれは極めて少ないと考えられること及び千九百九十五年に開催された第四十四回の国連食糧農業機関(以下「FAO」という。)及び世界保健機関(以下「WHO」という。)の合同食品添加物専門家会議(以下「FAO及びWHO専門家会議」という。)の報告において、硝酸塩の一日摂取許容量(以下「ADI」という。)を基に野菜の硝酸塩の含有量の限界値を設けることは適当でない旨の指摘が行われていることから、現段階において実施する必要性はないと考えている。
野菜の硝酸塩濃度については、昭和六十三年度に、厚生省において野菜を含めた生鮮食品における硝酸塩及び亜硝酸塩の含有量の調査として実施したところである。
窒素肥料の使用等については、農林水産省において、平成九年三月十日に農業技術に関する指導事項を取りまとめ公表した「農業生産の技術指針」(以下「技術指針」という。)の中で、農業者に対して土壌及び生育診断に基づく施肥設計、緩効性肥料の利用等に努めること、都道府県に対して施肥基準を環境への負荷に対する配慮の観点から見直すこと等を求め、窒素肥料等が過剰に施用されることのないよう指導に努めているところである。また、地力の増進を図る観点から、農林水産大臣は地力増進法(昭和五十九年法律第三十四号)第三条第一項に基づき地力増進基本指針(以下「基本指針」という。)を定めており、平成九年五月二十九日に同条第三項に基づき公表した変更後の基本指針において、農業者に対し、環境への負荷にも留意しつつ適正な施肥に努めるよう求めているところである。
今後、野菜に含まれる硝酸塩の健康に対する影響や窒素肥料の使用と水質汚染との関係についての新たな知見が得られた場合には、必要に応じ、窒素肥料等の適正な使用を図る観点から、技術指針及び基本指針の見直し等の措置を行う考えである。
FAO及びWHO専門家会議の報告においては、硝酸塩のADIを示す一方で、野菜は硝酸塩の主な摂取源となりうるが、野菜が食品として有用であることはよく知られていること及び硝酸塩が野菜の基質の中にあることにより人における硝酸塩の吸収や代謝が影響を受ける可能性があることを考慮すると、野菜からの硝酸塩摂取をこのADIと比較すること又はこのADIを基に野菜の硝酸塩の含有量の限界値を設けることは適当でない旨が指摘されており、食品に関する国際基準を作成するFAO及びWHOの合同食品規格委員会においては、野菜に含まれる硝酸塩について、これまでのところ基準が作成されていない。また、硝酸塩はそもそも野菜中の成分として含まれており、厚生省において、我が国において野菜からの硝酸塩の摂取によって具体的な健康に対する影響が生じたという事例は承知していないところである。このため、現段階において、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第七条第一項に基づき野菜に含まれる硝酸塩に係る規格基準を定める必要はないと考えている。