答弁本文情報
平成十年三月三日受領答弁第九号
内閣衆質一四二第九号
平成十年三月三日
衆議院議長 伊※(注)宗一郎 殿
衆議院議員中野寛成君提出成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療対象変更に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員中野寛成君提出成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療対象変更に関する質問に対する答弁書
一について
児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)においては、第三条で、児童福祉の理念を規定した同法第一条及び児童の健全育成に関する国及び地方公共団体の責任を規定した同法第二条が児童の福祉を保障するための原理であるとされているところである。政府としては、これらの規定の趣旨を踏まえて、その任務として児童の健全育成のための施策を実施しているところである。
御指摘の精神的苦痛や不利益については、成長ホルモン分泌不全性低身長症(以下「低身長症」という。)の患者等から結婚や就職において不利であること等の指摘があることは承知しているが、低身長であることにより一律に精神的な苦痛や社会的な不利益があると判断することは適当でないと考えている。
小児慢性特定疾患治療研究事業(以下「事業」という。)については、平成九年に厚生省に設置した小児医療の専門家からなる小児慢性特定疾患治療研究事業に関する検討会の同年十二月の報告及び同月の中央児童福祉審議会母子保健部会の意見を踏まえ、御指摘の低身長症を含む現在事業の対象となっている疾患全般にわたりその事業の対象としての適否及び事業の対象とする場合の基準について見直しを行ったところである。この結果、低身長症については、少子化の進行により子供の数が少なくなっているにもかかわらず給付人員が大幅に増加していること、医学上特段の理由が認められないにもかかわらず給付人員に地域的な偏りがみられることから、対象基準を明確化するとともに審査体制を強化することとしたところである。事業の対象範囲については、他の疾患の患者や疾患を原因としないことから給付対象とならない家族性の低身長者との均衡等を総合的に勘案し、開始基準を患者の身長が平成二年度の厚生省乳幼児身体発育調査及び文部省学校保健統計調査を基礎とした性別及び年齢別の身長の平均値から当該身長に係る標準偏差に二・五を乗じたものを減じた数値以下である場合に変更するとともに、終了基準として患者の身長が当該学校保健統計調査における十七歳の身長の平均値から当該身長に係る標準偏差に二・五を乗じたものを減じた数値に達した場合を設定することとし、男子は百五十六・四センチメートル、女子は百四十五・四センチメートルとしたところである。
また、御指摘の終了基準と平均身長との差については、一般に身長は遺伝や個人の体質等の要因によって大きな差異を生じ得ること、身長が終了基準以下の者の多数は家族性の低身長者等の事業の給付対象とならない者であること等を勘案すれば、特に問題があるとは考えていない。
低身長症の患者が事業による公費負担の終了後も治療を継続する場合には、引き続き医療保険制度の適用を受けられるが、もとより、事業の対象となる者については、その身長について三及び四についてで示した基準に基づいて配慮していることから、低身長症の患者の治療について患者の経済力によって格差が生じるものとは考えていない。
今回の事業の適正化のための開始基準の見直し等の措置は、三及び四についてで述べたとおり、必要な検討を経て実施したところであり、更に見直すことは考えていないが、今後とも、事業の適正な実施に努めてまいりたい。