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平成十年五月二十九日受領
答弁第二八号

  内閣衆質一四二第二八号
    平成十年五月二十九日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出組織犯罪対策法案と死刑に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出組織犯罪対策法案と死刑に関する質問に対する答弁書



一の(1)について

 組織的な犯罪対策に関し、各国間で死刑を刑罰に規定することについて議論が行われたという事実は承知していない。

一の(2)及び(3)について

 国際連合に加盟する国の中で、組織的な犯罪対策のための法律を制定している国が何箇国あり、そのうち、殺人罪の重罰を定める国が何箇国あるか、死刑を刑罰に定める国が何箇国あり、どのような犯罪につき死刑を刑罰に定めているかについては、そのすべてを把握しているわけではない。
 アメリカ合衆国、ドイツ連邦共和国、フランス共和国等においては、組織的な犯罪に関し、一定の組織的な犯罪の加重処罰、マネー・ローンダリング行為の処罰その他を内容とする刑事法を整備しているものと承知しており、これらの国のうち、アメリカ合衆国の連邦法においては、死刑が定められていない連邦法の第二級殺人や州法の殺人であっても、犯罪組織と一定の関連をもって行われるものについては、死刑を定める連邦法の第一級殺人と同様、死刑を最高刑として定めていると承知している。

一の(4)について

 お尋ねの法律案第三条第一項又は第二項に該当する殺人の罪の法定刑の上限については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十九条に規定する一般の殺人の罪の刑の上限と比較して、殊更引き下げるべき理由はないので、これと同一としたものである。

一の(5)について

 組織的な犯罪に対する厳格な対応を求める国際的な動向にかんがみ、それぞれの国の刑罰体系の中で組織的な犯罪について重い刑を定めることは、国際的な要請にかなった対応であると考えている。
 なお、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案は、これまで死刑が科されなかった行為に対し、新たに死刑を科することとするものではない。

二の(1)及び(2)について

 第五十四回国連人権委員会における死刑問題決議案は、昨年の第五十三回国連人権委員会において採択された同名の決議において、この問題について次の会期においても検討を継続する旨決定がされていたことも踏まえ、昨年と同様にイタリア共和国が中心となって作成され、本年三月三十日付けで決議案として配布された後、同年四月三日に採択されたものであると承知している。
 投票結果は、賛成二十六か国(アルゼンティン共和国、オーストリア共和国、ベラルーシ共和国、ブラジル連邦共和国、カナダ、カーボ・ヴェルデ共和国、チリ共和国、コンゴー共和国、チェッコ共和国、デンマーク王国、エクアドル共和国、フランス共和国、ドイツ連邦共和国、アイルランド、イタリア共和国、ルクセンブルグ大公国、メキシコ合衆国、ネパール王国、ペルー共和国、ポーランド共和国、ロシア、南アフリカ共和国、ウクライナ、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、ウルグァイ東方共和国、ヴェネズエラ共和国)、反対十三か国(バングラデシュ人民共和国、ブータン王国、ボツワナ共和国、中華人民共和国、コンゴー民主共和国、インドネシア共和国、我が国、マレイシア、パキスタン・イスラム共和国、大韓民国、ルワンダ共和国、スーダン共和国、アメリカ合衆国)、棄権十二か国(キューバ共和国、エル・サルヴァドル共和国、グァテマラ共和国、ギニア共和国、インド、マダガスカル共和国、モロッコ王国、フィリピン共和国、セネガル共和国、スリ・ランカ民主社会主義共和国、テュニジア共和国、ウガンダ共和国)であった。
 我が国は、死刑制度の存廃の問題については、基本的には各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、国際機関の場で死刑制度の是非を決するになじまないとの理由から、反対票を投じた。

二の(3)について

 ロビンソン国連人権高等弁務官は、第五十四回国連人権委員会において死刑問題決議が採択された後、右決議を支持する旨の発言を行ったものと承知している。

二の(4)について

 死刑廃止を求める決議が昨年に続いて採択されたことから、死刑の存廃の問題は国際社会で関心を集めている事項の一つであると考えるが、各国の投票態度及び立場表明から判断して、死刑に関する各国の考え方はいまだに様々に分かれており、その存廃について国際的に一致した意見はないと認識している。
 今後も同様な決議が採択され続けるかについては、このような決議案が提出されるか否かを含め、予測が困難な問題であると考えている。

二の(5)について

 我が国における死刑制度の存続が我が国の外交活動一般に影響を与えることはなく、また、国際的な組織的犯罪の摘発に当たり、我が国における死刑制度の存続により支障が生じることはないと考えている。

二の(6)について

 死刑制度の存廃の問題については、諸外国における動向や経験も参考にする必要があると考えるが、基本的には各国において当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討されるべきものであり、それぞれの国において独自に決定すべきものと考えている。
 我が国においては、死刑の存廃は、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であるところ、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については、死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人、誘拐殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等にかんがみると、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないと考えている。

二の(7)について

 死刑の存廃については、二の(6)についてでお答えしたとおり、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないと考えている。また、死刑の執行については、裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処すべきものと考えているところであり、死刑に関する情報については、我が国は、統計等により可能な限り公表している。
 御指摘の憲法前文は、国際協調主義の原則を宣明するものであるが、死刑の存廃や死刑に関する情報公開の具体的程度のような基本的には各国の決定、処理にゆだねられていると考えられる事項について、我が国が自らの判断でその在り方を決定することを否定する趣旨のものでないことは当然である。したがって、死刑の存廃や死刑に関する情報の公開に関する我が国の態度は、御指摘の憲法前文に照らしても何ら問題がないものと考えている。

三の(1)について

 ルワンダ共和国において、本年の四月二十四日、千九百九十四年(平成六年)の同国における民族大量虐殺の責任者に対し、同国の裁判所の判決に基づく死刑が執行されたと承知している。

三の(2)について

 他国の具体的な司法判断に関することについては、答弁を差し控えたい。
 なお、我が国としては、ルワンダ共和国政府が、国民融和を図りつつ、平和で安定した国家の再建に努力し、国際社会としてもかかる努力を支援していくことが重要であると考えている。

三の(3)について

 千九百九十八年(平成十年)四月二十三日付け国連記者発表によると、ロビンソン人権高等弁務官は、今般ルワンダ政府が虐殺事件に関与した者二十名以上を公開処刑とする旨決定したことを深く憂慮し、同国政府に対し右決定を再考するよう促す趣旨の声明を発出したものと承知している。
 同弁務官は、国連総会決議(第四十八回国連総会決議第百四十一号)により定められたその任務を踏まえ、本件公開処刑に関する情報に基づき、右声明を発出したものと承知している。

四の(1)について

 組織的な犯罪に対処するための法整備は、組織的な犯罪に対して各国が協調して対応することが喫緊の課題であるという国際的に一致した認識及び近年の我が国における組織的な犯罪が平穏な市民社会を脅かし、健全な社会、経済の維持、発展に悪影響を及ぼす状況にあることを踏まえたものである。この法整備を行うことと二の(6)についてでお答えした死刑制度の存廃の問題に関する我が国の立場とは何ら矛盾するものではないと考えている。

四の(2)について

 林郁夫被告人に対する無期懲役の求刑は、検察官において、その犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響のほか、同被告人の供述が組織的な凶悪犯罪の解明と犯罪組織の中枢の検挙による将来における凶悪犯罪の防止に大きく貢献したことなど、各般の情状を併せ考察して、無期懲役が相当であると判断したことによるものである。本来死刑が相当であると判断しながら無期懲役を選択したというものではなく、また、いわゆる「司法取引」によるものでもない。
 検察官が同被告人に対して無期懲役の求刑をしたのは、特定の法案を意識した結果ではない。

四の(3)について

 個々具体的な死刑執行に関する事項については、答弁は差し控えたい。





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