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答弁本文情報

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平成十年五月二十二日受領
答弁第三三号

  内閣衆質一四二第三三号
    平成十年五月二十二日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員石井郁子君外四名提出「子どもの権利に関する条約」についての質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員石井郁子君外四名提出「子どもの権利に関する条約」についての質問に対する答弁書



一について

 児童の権利に関する条約(平成六年条約第二号。以下「条約」という。)は、先進国、開発途上国の別を問わず全世界的な観点から、児童の権利の尊重及び保護の促進を目指して作成されたものであり、開発途上国のみならず先進国を含めた全世界において、児童の権利の尊重及び保護の促進に重要な役割を果たしているものと考えている。

二の(1)について

 政府としては、これまでも児童の健全な育成を目的とした各種施策の展開を通じて児童の権利の保障を行ってきたところである。今後とも、児童に関連するあらゆる施策の実施に当たっては、条約の趣旨を踏まえ、児童の権利が一層尊重されるよう引き続き努力してまいりたい。

二の(2)について

 非行等問題行動という側面からみると、ナイフを使用した殺傷事件など凶悪、粗暴な非行、薬物の乱用、いじめ、性をめぐる問題など、児童が直面している問題は極めて深刻であると受け止めている。
 政府においては、条約批准後も、例えば、各種相談窓口の整備、スクールカウンセラー、子どもの人権専門委員、被害少年カウンセリングアドバイザー等の配置、放課後児童健全育成事業、児童の自立支援施策等の充実など様々な分野で児童に関する各種施策の充実強化に努めている。

三の(1)について

 政府としては、児童の権利に関する意識の一層の高揚を図るためにも、条約の広報は極めて重要であると認識しており、これまで、条約の趣旨及び内容を説明した冊子、児童にも分かりやすく条約の内容を紹介したポスター、政府の広報誌、ラジオ、テレビ等を通じて、適切かつ積極的に条約の広報を行ってきたところである。
 政府としては、条約の広報は継続的に実施していくことが重要であると考えており、引き続き、各種の広報手段を通じて、条約の趣旨及び内容の周知に一層の努力をしてまいりたい。

三の(2)について

 政府としては、これまで行ってきた条約の広報については、一定の効果を上げてきたものと認識している。
 なお、条約の周知度及びその効果について調査又は評価を行ったことはない。

三の(3)について

 条約の広報は継続的に実施していくことが重要であると考えており、引き続き広報冊子の作成及び配布に努めるとともに、テレビ、ラジオ、広報誌その他の広報手段を利用した条約の広報を行っていく予定である。

三の(4)について

 学校教育の場においても、児童生徒に対し、条約についての正しい理解を図ることは重要と認識している。
 このため、文部省においては、児童生徒の指導に当たる教職員に対し、平成六年五月二十日付け文初高第百四十九号「『児童の権利に関する条約』について(通知)」(以下「文部事務次官通知」という。)を発出し、児童生徒に権利及び義務についての正しい理解を図ることの重要性を周知させるとともに、教職員に対する研修における指導及び広報誌の活用により、条約の趣旨及び内容の周知に努めてきたところである。また、各都道府県教育委員会においても、研修の実施、指導資料の作成などの取組が図られているものと承知している。
 さらに、児童生徒に対する指導については、中学校社会科、高等学校公民科等の多くの教科書において、条約について具体的に取り上げられているとともに、各都道府県教育委員会においても、児童生徒向けの小冊子の作成及び配布等の取組が図られており、これらを通じて、児童生徒に対し、条約の趣旨及び内容の周知が図られているものと承知している。

四の(1)について

 政府としては、これまでも児童の健全な育成を目的とした各種施策の展開を通じて児童の権利の保障を行ってきたところであり、今後とも、これらの施策の充実を図ることにより、児童の権利の一層の擁護を図っていくことが十分可能であると考えている。このため、現在のところ、包括的な国内行動計画を策定する予定はない。

四の(2)について

 青少年対策推進会議は、関係省庁の局長等の職員をもって構成され、関係省庁の緊密な連携の下に青少年の健全育成及び非行等問題行動の防止に関する青少年対策を総合的かつ効果的に推進することを目的として開催されている。同会議は、関係省庁の申合せに基づいて開催されているものであることから、それ自体として法令上の権限を有する性格のものではない。同会議においては、例えば、関係省庁の申合せである「青少年対策推進要綱」を随時改正するなどにより、同会議の目的の範囲で、条約の実施に必要となる施策を含む各種施策の調整を行っている。

四の(3)について

 青少年対策推進会議は、関係省庁の申合せに基づき、青少年の健全育成及び非行等問題行動の防止に関する青少年対策を総合的かつ効果的に推進することを目的として開催されているものであり、条約の全般について取り扱うものではない。
 なお、政府としては、これまでも児童の健全な育成を目的とした各種施策の展開を通じて児童の権利の保障を行ってきたところであり、今後とも現行の制度の下で、関係行政機関の緊密な連絡を保ちつつ、条約の趣旨を踏まえた施策を総合的に推進してまいりたい。

五の(1)について

 政府としては、民間において行われている児童の権利の尊重及び保護の促進を目的とした様々な活動は、条約の実施に資するものであり、その重要性を十分認識しているところである。
 政府が、条約の実施に当たり、民間団体と協力し又は関係する行政機関と民間団体との協力を推進した実例は次のとおりである。
 1 児童に対する虐待を防止するための措置として、児童相談所の運営に当たり、民間虐待防止団体と連携を取るよう都道府県知事等に通知している。
 2 児童を性的虐待及び性的搾取から保護するための措置として、財団法人日本ユニセフ協会と協力の上、児童買春の根絶を訴える啓発活動を行っている。
 3 開発途上国における教育及び母子保健等の児童の福祉に資する事業に従事する民間団体の活動に対し、草の根無償資金協力及びNGO(非政府組織、民間援助団体)事業補助金制度を通じ、財政的支援を行っている。

五の(2)について

 政府としては、条約を効果的に実施するためには、政府のみならず、社会全体として取り組んでいくことが重要であると認識しており、民間団体が児童の権利の尊重及び保護の促進に向けた活動に一層参加するよう、条約の趣旨及び内容についての広報活動の推進を図るとともに、五の(1)についてで述べた民間団体との連携の例を拡充すべく努力してまいりたい。

五の(3)について

 政府としては、児童に関連する施策の検討及び実施に当たり、必要に応じ民間団体の意見を聴くこととしている。

六の(1)について

 条約第十二条1前段は、児童個人に影響を及ぼすすべての事項について自らの意見を述べることが認められるべきであるとの理念を一般的に規定したものである。他方、条約第十二条2は、児童が「自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において」意見を聴取される機会を与えられる旨規定しており、御指摘の懲戒処分等の際には、締約国は児童の意見を聴取する機会を与える義務を負うが、そのために採るべき措置は、立法措置に限られず、行政措置その他の措置を採ることも許容されている(条約第四条参照)。
 また、条約第二十八条2は、学校における規律が、人間としての尊厳に合致し、かつ、条約に適合した方法で運用されるよう、締約国に対してすべての適当な措置を採ることを義務付けたものである。同規定は、「すべての適当な措置」と規定されていることから明らかなように、立法措置に限られず、指導などの行政上の措置を含め締約国が適当と判断する措置を採ることを義務付けるものであると解される。
 学校における児童に対する懲戒については、学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)第十三条第一項において、懲戒を行うに際し「教育上必要な配慮をしなければならない」と規定されている。また、文部事務次官通知において、各都道府県教育委員会等に対し、学校における懲戒処分は「真に教育的配慮をもって慎重かつ的確に行われなければならず、その際には、当該児童生徒等から事情や意見をよく聴く機会を持つなど児童生徒等の個々の状況に十分留意」するよう指導を行っている。
 したがって、懲戒に係る児童の意見表明及び弁明の機会の保障に関し本条約が締約国に求める措置については、既に講じられているものと考えている。

六の(2)について

 御指摘の昭和四十四年十月三十一日付け文初高第四百八十三号「高等学校における政治的教養と政治的活動について(通知)」は、教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)第八条を踏まえ、高等学校における政治的教養を豊かにする教育の一層の改善充実を図るとともに、高校生の政治的活動についての適切な指導を行うための見解を示したものであり、各学校における指導上の指針となるものである。その必要性は、現在においても変わるものではないと考えている。
 同通知は、
 1 学校内の政治的活動については、@教科・科目の授業中やクラブ活動、生徒会活動等において生徒がその本来の目的を逸脱して、政治的活動の手段としてこれらの場を利用することを禁止するとともに、A学校内に政治的な団体や組織を結成することや、学校内での政治的文書の掲示・配布、集会の開催などの政治的活動を行うことを制限、禁止することが必要であるとし、
 2 学校外の政治的活動についても、@学校が教育上の観点から、望ましくないとして生徒を指導したり、A特に違法なもの、暴力的なものを禁止するとともに、そのような活動になるおそれのある政治的活動についても制限、禁止することが必要であるとしている。
 これらは、高校生が心身の発達の過程にあって政治的教養の基礎を培っている段階にあることにかんがみ、教育的立場及び本人の心身への影響、他の生徒への影響等の観点から必要かつ合理的な制限を求めるものであり、また、特に学校外の活動についても、学校が指導し、また、特に違法性の強い活動に限定して制限を課すものであり、高等学校においてその教育目的を達成するため必要な範囲を超えた制限を求めているものではない。
 したがって、同通知に示されている生徒の政治的活動の規制は、高等学校がその教育目的を達成するために必要な合理的範囲を超えるものではなく、これは、条約に反するものではないと考えている。

六の(3)について

 文部事務次官通知では、各都道府県教育委員会等に対し、各学校における校則について、「日々の教育指導に関わるものであり、児童生徒等の実態、保護者の考え方、地域の実情等を踏まえ、より適切なものとなるよう引き続き配慮すること」を求めており、その後も、各種会議などを通じ、校則の不断の見直しについて指導を行ってきている。
 学校は、その教育目的を達成するために必要な合理的範囲内において、在学する児童生徒に対し、校則で髪型、服装、持ち物、校外生活等について規律することが可能であると考えている。

七について

 テレビ、雑誌等を通じたいわゆる有害情報が児童に与える影響については、これまでも官民の関係機関等で調査研究が行われてきたところであるが、今後も、最近のメディアの状況を踏まえつつ、政府としても、様々な角度から明らかにしていく必要があると考えている。





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