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答弁本文情報

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平成十年六月三十日受領
答弁第四八号

  内閣衆質一四二第四八号
    平成十年六月三十日
内閣総理大臣 橋本(注)太郎

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員坂上富男君提出国連「子供権利条約」審査委員会の日本政府に対する是正勧告に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員坂上富男君提出国連「子供権利条約」審査委員会の日本政府に対する是正勧告に関する質問に対する答弁書



 児童の権利に関する委員会(以下「委員会」という。)において、児童の権利に関する条約(平成六年条約第二号)の実施に関する我が国の第一回報告に関する審査が行われ、平成十年六月五日、我が国に対する最終見解(以下「最終見解」という。)が採択された。最終見解に含まれている委員会の勧告は、法的拘束力を有するものではないが、今回、我が国に対して出された勧告については、その内容等を十分に検討の上、政府として適切に対処していきたいと考えている。
 なお、お尋ねの勧告に対する現時点における政府の考え方は、次のとおりである。

1 最終見解において、委員会は、在日韓国人、在日朝鮮人及びアイヌの人々(以下「在日韓国人等」という。)を含めた少数者の児童の差別的取扱いが、いつ、どこで起ころうと、これについて十分に調査され排除されるようにすることを勧告しているものと承知している。
  在日韓国人等の児童の差別を含むあらゆる差別をなくすために、人権擁護機関においては、日常的な啓発活動のほかに、人権週間及び人権擁護委員の日等に街頭啓発及び講演会等を通じて全国的な啓発活動を展開している。さらに、これらの差別による人権侵犯の疑いのある事案については、積極的に調査を行って事案に応じた適切な措置を講じるとともに、関係者に対して人権思想を啓発することとしており、今後ともこれらの取組を充実、強化してまいりたい。
  大学入学資格については、学校間の接続や全体としての学校教育体系を明確にし、大学教育の水準の確保を図るため、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十六条の規定に基づき、高等学校を卒業した者等又は文部大臣の定めるところによりこれと同等以上の学力があると認められた者に対し与えられている。朝鮮人学校及び韓国人学校を含む国内の外国人学校は、そのほとんどが各種学校となっており、各種学校の教育内容については、法令上特段の定めが設けられていないことから、その卒業者に対して一般的に高等学校卒業者と同等以上の学力があると認定することは困難であり、大学入学資格を認めていない。これは、学校教育法第一条に定める学校と各種学校との区別に基づくものであり、児童の権利に関する条約第二条が禁ずる差別には当たらないと考えている。

2 最終見解において、委員会は、特に体罰といじめを除去する目的で、学校における暴力を防止するために包括的なプログラムが考案され、その実施が綿密に監視されること並びに体罰が家庭及び養護その他の施設において法律によって禁止されることを勧告しているものと承知している。
  いじめについては、平成八年七月に文部省の専門家会議が、いじめの問題に関する総合的な取組についての報告を取りまとめており、その趣旨及び内容を各都道府県教育委員会等に対して周知徹底させているほか、政府内に設けられている青少年対策推進会議において、いじめの問題に対して関係省庁が行うべき取組についての申合せを行っている。
  学校における体罰については、学校教育法第十一条により厳に禁止されており、研修、会議等のあらゆる機会を通じ、教育関係者に対してその趣旨の徹底を図っている。また、体罰を行った教員は懲戒処分等の対象となり、毎年、その状況を調査し、公表しているところである。さらに、体罰が刑法(明治四十年法律第四十五号)の暴行罪、傷害罪等に当たる場合には処罰の対象となる。
  家庭内においては、民法(明治二十九年法律第八十九号)によれば、親権者は親権に服する子を監護教育する権利及び義務があり、監護教育の目的のため必要な範囲内で懲戒をすることが認められているが、ここでいう懲戒権の行使は、社会通念上相当な範囲を超えるものであってはならず、それを超える場合には刑法の暴行罪、傷害罪等で処罰されることがある。
  児童福祉施設における体罰の禁止については、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)に基づき制定している児童福祉施設最低基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号)において、懲戒に係る権限の濫用禁止規定を設けているところであり、この濫用に当たる場合には改善命令や事業停止命令を行うほか、当該施設の認可を取り消すこともできる。また、体罰が刑法の暴行罪、傷害罪等に当たる場合には処罰の対象となる。さらに、我が国の矯正施設において、少年に対する違法な有形力の行使は、懲戒処分の対象となるだけでなく、刑法の特別公務員暴行陵虐罪等に当たる場合には処罰の対象となる。

3 最終見解において、委員会は、嫡出でない子について存在する差別を是正するために立法措置が導入されるべきであることを勧告しているものと承知している。
  嫡出でない子の相続分を嫡出である子の相続分の二分の一とする民法第九百条第四号ただし書の規定の立法理由は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出である子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である嫡出でない子の立場にも配慮して、嫡出でない子に嫡出である子の二分の一の法定相続分を認めることにより、嫡出でない子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と嫡出でない子の保護の調整を図ったものと解されるのであって、嫡出でない子を合理的理由もないのに差別するものとはいえず、児童の権利に関する条約第二条が禁ずる差別には当たらないと考えている。もっとも、子の人権尊重の観点から相続における差異は解消するのが立法政策として適当であるとの議論が従来からあり、平成八年二月に法務大臣の諮問機関である法制審議会が答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」においても、嫡出である子と嫡出でない子の相続分の同等化を図ることが提案された。しかし、この問題は、家族制度の在り方や国民生活にかかわる重要な問題として、国民の意見が大きく分かれていることから、今後の議論の動向を見守りながら適切に対処していく必要があると考えている。

4 最終見解において、委員会は、現在の「子どもの人権専門委員」制度を制度的に改良し拡大することにより又はオンブズパーソン(独立の苦情処理機関)若しくは児童の権利委員を創設することにより、独立の監視機構を確立するため、必要措置を採ることを勧告しているものと承知している。
  児童の権利に関する条約が定める権利を含めて、児童の人権を広く保障する行政上の措置の一つとして、平成六年度から、人権擁護委員制度の中に「子どもの人権専門委員」制度が導入されている。「子どもの人権専門委員」は、子どもの人権が侵犯されることのないように監視し、もし、これが侵犯された場合には、その救済のため、速やかに適切な措置を採るとともに、子どもの人権擁護のための啓発活動を行い、もって、子どもの人権擁護を図ることを任務としており、児童の人権問題に適切に対応している。
  政府としては、現行の「子どもの人権専門委員」制度が児童の権利に関する条約の実施を監視する役割を十分果たしていると考えているが、今後とも、この制度の更なる充実及び強化に努めてまいりたい。





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