答弁本文情報
平成十年十一月二十七日受領答弁第二五号
内閣衆質一四三第二五号
平成十年十一月二十七日
衆議院議長 伊※(注)宗一郎 殿
衆議院議員山本孝史君提出司法書士と規制緩和に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員山本孝史君提出司法書士と規制緩和に関する質問に対する答弁書
一の1について
政府は、司法書士を含む公的資格制度について、本年三月三十一日に閣議決定を行った。「規制緩和推進三か年計画」において、業務独占規定、資格要件、業務範囲等の在り方を含め、人々の意欲、能力を有効に生かす等の観点を踏まえ、見直しを行うこととしている。
法務省においては、従来から、司法書士の業務独占については、国民の権利の保全及び登記事務等の適正な運営の観点から、これを廃止することは相当でないと考えてきているところであるが、右閣議決定の趣旨をも踏まえ、更に検討していくこととしている。
司法書士試験制度の改正は、検討していない。
司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第十五条第六号は、各司法書士会の会則に司法書士の報酬に関する規定を記載しなければならないと規定している。同規定を受け、各司法書士会の会則には、「司法書士報酬規定」と題する報酬額基準表が定められていたところ、これが、確定額としてではなく、あくまで個々の司法書士が報酬額を決める際の基準として用いられていた限りは、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)上問題にならないものと考えている。
各司法書士会の会則が改正され、会則中の司法書士の報酬に関する規定が基準であることが明確になったことにより、同規定のより適正な運用がされるものと考えている。
司法書士法は、司法書士の報酬に関する規定を各司法書士会の会則の必要的記載事項とし(第十五条)、その制定又は変更を法務大臣の認可に係らしめている(第十五条の二)が、これは、公共的な性格を有する司法書士の報酬額について、適正な基準を設け、同基準を司法書士の事務所に掲示させること(司法書士法施行規則(昭和五十三年法務省令第五十五号)第十七条)により、国民が安心して司法書士制度を利用することができるようにするためであると考えられる。法務省においては、この考え方を変更する必要はないと考えている。
法務大臣の認可を受けた「司法書士報酬額基準」は、個々の司法書士が報酬額を決める際の基準について定めているものであり、そのような基準として用いられる限り、独占禁止法上問題にならないものと考えている。
司法書士が訴訟当事者の依頼に基づき裁判所に提出する書類を作成することは、司法書士法第二条第一項第二号により認められている司法書士の業務である。簡易裁判所に係属する少額の訴訟事件の多くについて、司法書士が訴状、準備書面等を作成している事実は、司法書士制度が十分に活用されていることを示すものであると考えている。
一般的な法律相談業務を司法書士の業務として法律上規定することについては、司法書士の資格要件、規律等を考慮し、当事者その他の利害関係人の利益の保護、法律生活の公正かつ円滑な営みの確保等の要請を踏まえた上で、国民的見地に立ちながら、慎重かつ必要な検討を行っていきたいと考えている。
司法書士法第二条は、司法書士が相談に応ずることを司法書士の業務として明記してはいないが、司法書士が同条に規定する司法書士の業務に関連して相談に応ずることは、一般に当該業務の範囲を越えるものではなく、同法第十条に違反するものではないと考えている。
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第五十四条第一項ただし書に基づく訴訟代理人の許可は、簡易裁判所においてその可否を決定するものであり、この規定が具体的にどのように運用されているかについては、承知していない。
民事訴訟法第五十四条第一項ただし書は、簡易裁判所の個別の許可によって、弁護士以外の者を訴訟代理人とすることを認めているが、司法書士は、その業務の範囲を越えて他人間の訴訟に関与してはならないものとされていること(司法書士法第十条)等から、簡易裁判所における訴訟代理人になることはできないと一般に解されている。
簡易裁判所における訴訟について代理することを司法書士の業務として法律上規定することについては、国民のニーズを踏まえつつ、司法書士の資格要件、規律等にかんがみ、種々の観点から、慎重な検討を行っていくべきであると考えている。
御指摘のように、国民の司法に対するアクセスを確保するという観点から、いわゆる弁護士の地域的偏在が問題とされていることは承知している。
このような弁護士の地域的偏在の解消を含め、司法をより国民に利用しやすいものとするためには、これを担う法曹の人口を増加させることが必要であるとともに、国民の負託にこたえ得る法曹としての水準を確保するという観点から、法曹の質を充実させていくことも重要であると考えている。今後とも、この法曹人口の増加の問題につき、その数及び質の両面において適切に対処してまいりたい。
また、司法書士については、全国的に広く存在し地域に密着した活動を行い得るという特性を生かし、司法をより国民に利用しやすいものとするという観点から、いわゆる隣接専門職種として、その役割を十分果たしていくことが望ましいと考えている。
独立行政法人化の対象となる事務及び事業については、現在、中央省庁等改革基本法(平成十年法律第百三号)の規定に基づき、かつ、行政改革会議の最終報告の趣旨にのっとり、中央省庁等改革に係る立案方針に沿って、登記、供託業務を含め、幅広く検討を進めているところである。