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答弁本文情報

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平成十一年一月二十二日受領
答弁第一〇号

  内閣衆質一四四第一〇号
    平成十一年一月二十二日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員山本孝史君提出九州大学医学部附属病院での脳死判定後の自発呼吸反応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員山本孝史君提出九州大学医学部附属病院での脳死判定後の自発呼吸反応に関する質問に対する答弁書



一について

 御指摘の事例については、平成八年五月二十三日に原動機付自転車乗車中の自損事故により極めて脳死に近い状態と判断された患者について、患者の父親(以下「父親」という。)から患者の全臓器を供与したいとの強い申出があったことを受けて、九州大学医学部附属病院において、担当医師等が検討した結果、臓器の移植に関する法律案が国会で審査中であるという社会的状況を考慮して、脳死体からの臓器移植は行わず、心停止後の腎臓及び角膜移植を目的とした眼球摘出を行うこととし、患者の家族(以下「家族」という。)の同意の下、患者の心停止後、腎臓と眼球の摘出が行われたものである。
 このように、本事例については、脳死体からの臓器移植を前提としていないため、当時臨床の場における脳死の判定に当たって用いられることが多かった、厚生省厚生科学研究費特別研究事業脳死に関する研究班昭和六十年度研究報告で定められている基準(以下「竹内基準」という。)に基づく脳死判定は行っていない。
 なお、その診察の過程において、次の表の検査を行い、患者は、極めて脳死に近い状態であり、回復は極めて困難であると診断されている。



二について

 一についてで述べたとおり、本事例については、竹内基準に基づく脳死判定は行っていない。
 なお、御指摘の自発呼吸は、一についてで述べた検査結果を踏まえ、家族の同意を得て、医師が人工呼吸器を停止したところ、胸部の微妙な動き及び全身の緩やかな動きが見られ、炭酸ガス分圧とは独立した酸素濃度の低下に伴い生じたものである。
 また、竹内基準に基づく脳死判定が行われた後に自発呼吸があった事例は承知していない。なお、竹内基準の検査項目に沿った脳死の診断後に呼吸促進剤を投与したところ、ごく弱い自発呼吸が確認された事例が平成九年八月二十五日に開催された公衆衛生審議会成人病難病対策部会臓器移植専門委員会に一例報告されている。しかし、当該患者は慢性閉塞性呼吸器疾患であり、竹内基準及び平成三年に発表された「厚生省「脳死に関する研究班」脳死判定基準の補遺」によれば、慢性閉塞性呼吸器疾患患者については竹内基準の検査項目の一つである無呼吸テストによる呼吸中枢機能の的確な評価は必ずしも容易ではなく、本来脳死判定を差し控えるべきものとされており、当該事例は、竹内基準に基づいて脳死判定が行われたものであるとはいえないと考えている。

三の(一)について

 一についてで述べた検査結果を踏まえ、家族の同意を得て、平成八年五月二十五日十八時七分に人工呼吸器を停止したところ、胸部の微妙な動き及び全身の緩やかな動きが見られ、炭酸ガス分圧とは独立した酸素濃度の低下に伴い自発呼吸が生じたことから、人工呼吸器を再装着したが、家族から延命のための治療について強い中止要請を受けたため、同日二十時に再び人工呼吸器を停止したものである。

三の(二)について

 一度目の人工呼吸器の停止に関しては、角膜及び腎臓の移植に関する法律(昭和五十四年法律第六十三号。臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号)により廃止。)第八条の許可に基づいて腎臓のあっせんに係る連絡調整を行う者(以下「臓器移植連絡調整者」という。)から家族に対し腎臓の移植について説明を行ったところ、父親から積極的に腎臓の提供の意思表明があった。そこで、臓器移植連絡調整者から家族に対し、
  ア このまま治療を継続し心停止後に腎臓を摘出する方法
  イ 昇圧剤の投与を中止して心停止後に腎臓を摘出する方法
  ウ 人工呼吸器を止めて心停止後に腎臓を摘出する方法
の三方法を説明したところ、家族からウの方法を希望する旨の申出があり、これを踏まえ、医師が一度目の人工呼吸器の停止を行ったものである。
 二度目の人工呼吸器の停止に関しては、医師が人工呼吸器を再装着した後に、家族に対して二についての中段で述べた経緯及び救命の見込みがないことを説明したところ、家族から、患者を救命できなければ延命のための治療は拒否すること、臓器の損傷を避け社会に役立てたいとの強い要請があったため、これを踏まえ、二度目の人工呼吸器の停止を行ったものである。このような同意内容については、腎臓の提供等についての承諾書面に父親によって記入されている。

三の(三)について

 一度目と同様の身体反応が見られたが、有効な換気にはならず、約二十分後に心停止を迎えたものである。

四について

 御指摘の心停止前のカテーテル挿入、血液凝固阻止剤の投与、灌流液の注入については行われていないが、移植に必要な検査を目的とする採血については、平成八年五月二十四日二十二時三十五分に実施している。
 当該採血については、実施前に、主治医が家族から口頭で承諾を得るとともに、実施後に、臓器移植連絡調整者が家族から心停止後の腎臓の提供等についての承諾を書面により得る際に、当該書面の中で改めて右の承諾を確認している。





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