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平成十一年四月九日受領
答弁第一六号

  内閣衆質一四五第一六号
    平成十一年四月九日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員東順治君提出石炭政策及び産炭地域振興対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員東順治君提出石炭政策及び産炭地域振興対策に関する質問に対する答弁書



一について

 現行の石炭政策は、平成四年度から平成十三年度までの十年間を政策期間として行われているものである。
 炭鉱離職者対策を含む石炭鉱業構造調整対策については、平成三年六月七日の石炭鉱業審議会答申において、「九十年代を構造調整の最終段階と位置付け、エネルギー政策上の国内炭の役割と国民経済的負担の大きさとの均衡点までは、国内炭鉱において経営の多角化・新分野開拓を図りつつ、国内炭生産の段階的縮小を図ることが必要である。」旨指摘されており、これまでこの趣旨に沿って施策を遂行してきているところである。
 鉱害対策については、従前から累積鉱害の解消を目標にしてきており、臨時石炭鉱害復旧法(昭和二十七年法律第二百九十五号)の期限である平成十四年三月三十一日までに当該目標を達成するべく施策を遂行してきているところである。
 産炭地域振興対策については、従前から石炭鉱業の不況という特殊な要因による影響の是正を目標にしてきており、現行の石炭政策の政策期間においては、平成二年十一月三十日の産炭地域振興審議会答申を踏まえ、所要の施策を遂行してきているところである。
 これら各般の施策の総合的な実施により、いずれも所要の成果がもたらされつつあると認識している。

二について

 現行の石炭政策においては、石炭会社の合理化を図るため、経営の多角化・新分野開拓を図りつつ行う生産規模の適正化、石炭坑の近代化・生産体制の集約化によるコスト低減等を推進してきているところである。
 具体的には、新エネルギー・産業技術総合開発機構において、石炭鉱業構造調整臨時措置法(昭和三十年法律第百五十六号)に基づき、通商産業大臣の承認を受けた新分野開拓計画に従って実施される新分野開拓事業に係る融資及び補助金の交付、経営基盤の安定及び経理の改善を図る観点からの石炭鉱業安定補給金の交付並びに石炭坑の近代化等を推進する観点からの坑内骨格構造整備拡充補助金の交付及び近代化資金の貸付けを行っているほか、通商産業省において、保安の確保を図る観点から、鉱山保安確保事業費補助金の交付を行っている。

三について

 鉱害地での石炭採掘が終了してから既に相当年数が経過しており、地下深部の石炭採掘に起因する沈下鉱害の発生は終息しているところ、福岡県については、平成七年三月末に復旧申出を締め切り、その処理に努めた結果、復旧申出未処理残件数は、平成七年三月末の一万六百九十件から平成十一年二月末の三千五百十一件に減少する一方、復旧すべき案件については、臨時石炭鉱害復旧法に基づく復旧基本計画及び実施計画に計上した上で、復旧工事を着実に進めている。
 累積鉱害の解消の公示については、同法に基づき、鉱害復旧長期計画(平成四年十二月八日通商産業省告示第五百三十九号)が達成されたと認められるとき、又は早期に達成されることが確実であると認められるときに行うこととなるが、福岡県については、平成十三年度の公示を目途に復旧の着実な推進に努めている。

四について

 累積鉱害の処理が完了した後においても、地表から深さ五十メートル以内の採掘跡又は坑道跡の崩壊に起因する鉱害、いわゆる局所的な浅所陥没による被害が発生する可能性があるが、その復旧事業を行おうとする公益法人の申請がある場合には、その法人を指定法人として指定する制度を設けている。
 これまで累積鉱害の解消が公示された地域においては、指定法人の指定の申請がないため、指定法人の指定は行っていない。

五について

 平成十一年二月の完全失業率が四・六パーセントと過去最高を更新し、有効求人倍率も〇・四九倍となるなど全国的に厳しい雇用失業情勢が続いている中で、産炭地域の炭鉱離職者については特に困難な状況にあると認識している。
 このため、炭鉱離職者の再就職を促進する観点から、機動的な職業訓練及びきめ細かな就職相談を行うとともに、炭鉱労働者等の雇用の安定等に関する臨時措置法(昭和三十四年法律第百九十九号)に基づき、炭鉱離職者求職手帳(以下「手帳」という。)の発給を受けた者に対しては就職促進手当及び移転費等を支給するほか、手帳の発給を受けた者を雇い入れる事業主に対しては特定求職者雇用開発助成金を支給する等、一般の離職者に比して手厚い支援を行っているところである。
 また、昭和四十四年度から、産炭地域の地域振興を図るとともに、炭鉱離職者等に対し臨時的に就業の機会を提供することを目的として、産炭地域開発就労事業を実施しているが、この事業については、平成六年に労働大臣の委嘱を受けて今後の失業対策事業の具体的な運営の在り方について調査研究を行った失業対策制度調査研究会の報告において、「石炭対策の財源の時間的な制約を念頭に置きつつ、産炭地域開発就労事業の事業規模を平成十三年度末に向けて早急に縮小していくことが必要である。」旨指摘されたことを受け、平成八年度から、事業規模の縮小に向けた取組を行っているところである。
 現在、石炭鉱業審議会において、現行の石炭政策の円滑な完了に向けての進め方について審議が行われているところであるが、今後の炭鉱離職者対策については、この審議結果等を踏まえつつ、適切な対応について検討してまいりたい。

六について

 平成四年度からの現行の石炭政策の下で、地域振興整備公団による工業団地の造成と融資等による企業誘致、産炭地域振興臨時交付金等による地方自治体への財政支援、産炭地域の振興を行うために設立される公益法人たる中核的事業主体の基本財産である産炭地域活性化基金に出捐した道県への財政支援等からなる総合的な産炭地域振興対策を推進してきたところである。
 これら各般の施策の総合的な実施により、昭和三十七年度から平成十年十二月にかけて、産炭地域全体では、地域振興整備公団により百三十八の工業団地を造成し、譲渡対象面積(三千百七十七ヘクタール)の約九十パーセントを譲渡するとともに、同公団による企業誘致を通じて二千四百十三社を誘致し、これにより約十四万二千人の雇用が創出されている等の成果がもたらされている。
 また、今後の産炭地域振興対策については、現在産炭地域振興審議会において行われている産炭地域振興対策の円滑な完了に向けての進め方についての議論を注視しつつ、産炭地域振興対策の円滑な完了に向けて最大限の努力をしてまいりたい。

七について

 産炭地域における産業の振興、産業基盤の整備、社会福祉等に係る生活環境の整備については、産炭地域振興臨時措置法(昭和三十六年法律第二百十九号)第四条の規定により平成三年に道県知事が各産炭地域経済生活圏ごとに作成した原案に基づき通商産業大臣が定めた産炭地域振興実施計画(平成三年十二月二十一日通商産業省告示第四百七十九号)に従って、関係各省庁等の緊密な連携を図りつつ、産炭地域振興臨時交付金による地方自治体への財政支援、産炭地域振興事業債調整分利子補給金による道県に対する地方債の利子補給、産炭地域の市町村が実施する特定の公共事業に係る国の負担割合の特例、地域振興整備公団による工業団地の造成と企業誘致の推進等からなる総合的な産炭地域振興対策を推進してきているところである。

八について

 産炭地域振興臨時措置法は、平成三年四月に法期限が十年間延長されたが、平成二年十一月の産炭地域振興審議会答申において、「国、関係地方自治体、地元住民等の関係者は、同法延長に伴う関連施策の実現が広く国民の負担によって行われるものであることを前提に、延長された期間内に産炭地域振興対策の目的を達成するよう最大限の努力を払うことが望まれる。」旨指摘されている。
 このため、昨年六月に通商産業大臣から産炭地域振興審議会に対して、産炭地域振興対策の円滑な完了に向けての進め方についての諮問がなされ、現在、同審議会において、審議がなされているところである。
 政府としては、引き続き、産炭地域振興審議会における審議状況を注視しつつ、産炭地域振興対策の円滑な完了に向けて最大限の努力をしてまいりたい。

九について

 福岡県大牟田市における地域活性化のためのプロジェクトの一環として、第三セクターとして株式会社ネイブルランドが設立され、同社により平成七年七月に「ネイブルランド」という名称のテーマパークが開園されたが、開園後、当初五か月間は順調な客足で推移したものの、その後入場者数が年々減少し、厳しい経営状況に至ったため、昨年十二月二十六日に閉園され、本年四月五日の同社臨時株主総会において同社の解散及び特別清算が決定されたと承知している。
 政府としては、今後とも、引き続き、関係者間の協議の推移を見守ってまいりたい。

十について

 御指摘の「カナディアンワールド」の関係金融機関からの借入れに係る債務については、平成六年に、北海道芦別市が、議会の議決を経て、経営母体である株式会社星の降る里芦別の債務返済相当額のほぼ全額を同社に貸し付けることとなり、また、平成七年には、関係金融機関が、支援策として債務の返済期間の延長等を行った。しかしながら、その後も入場者数が伸び悩んだことから、「カナディアンワールド」が平成九年十月末に閉園したため、同市は、昨年から、関係金融機関に対し、更なる支援の要請を行い、関係金融機関は本年一月に同社の金融債務の返済期間の再延長等を行い、これを受け、同市としても、本年二月に、議会の議決を経て、同社の債務返済相当額全額を同社に貸し付けることとなったと承知している。

十一について

 クリーン・コール・テクノロジーは、燃焼効率の向上により二酸化炭素排出量を抑制する技術、燃焼時に発生する有害物質の発生等を抑制する技術、固体燃料である石炭を利用しやすい気体又は液体に転換する技術及び石炭燃焼に伴い発生する石炭灰を有効利用するための技術に大別できる。
 二酸化炭素排出量を抑制する燃焼効率向上技術については、発電効率を向上させるための加圧流動床燃焼技術は既に実用化されており、燃料電池用石炭ガス製造技術等についてはパイロットプラントの建設等を行って開発中である。
 燃焼時の有害物質の発生等を抑制する技術については、硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじんの排出量を抑えるための脱硫、脱硝技術等の排煙処理技術を更に高度化するための開発を行っている。
 石炭を利用しやすい形に転換する技術については、石炭と水を混合し流動体化するコール・ウォーター・ミクスチャー技術等が既に実用化され、また、炭鉱ガスの有効利用や石炭をガス化する技術等についてパイロットプラントの建設等を行って開発中である。
 石炭灰有効利用の促進のための技術については、土木分野及び建設分野等を対象に用途開発を進めており、路盤材、軽量骨材として一部実用化されたものもある。
 このように、クリーン・コール・テクノロジーの開発は、石炭利用に伴う二酸化炭素の排出量の抑制、大気汚染の防止、廃棄物の発生の抑制等により、環境と調和した形での石炭利用を進めることを目的としており、石炭採掘技術を対象としていないため、産炭地域の活性化、振興等に直接結びつくものではない。

十二及び十三について

 我が国は、政府開発援助(ODA)の枠組みの中で、石炭生産技術、保安技術、環境保全技術等の炭鉱技術に係る技術協力として、中華人民共和国における石炭工業環境保護保安研修センターでの技術者の育成、マレイシアにおけるサバ州での石炭探査及び評価調査、中華人民共和国等からの研修員の受入事業等を相手国政府からの要請に基づき実施しており、また、有償資金協力として、モンゴルにおけるバガヌール・シベオボ炭鉱開発事業において石炭生産技術等のコンサルティングサービスに関して資金を供与している。
 お尋ねの「アジア・太平洋地域において、石炭開発、石炭産業等を研究するためのセンターの設置」については、近隣諸国に働きかけたことはないが、今後とも、海外産炭国からの協力要請を踏まえ、必要に応じ前述のような事業を実施するとともに、技術交流を含め、新たな協力の可能性についても検討してまいりたい。





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