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平成十一年四月二十日受領
答弁第一九号

  内閣衆質一四五第一九号
    平成十一年四月二十日
内閣総理大臣 小渕恵三

         衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員保坂展人君提出脱船逃亡者発生時の外国人乗務員上陸禁止措置・連座制に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員保坂展人君提出脱船逃亡者発生時の外国人乗務員上陸禁止措置・連座制に関する質問に対する答弁書



(一)について

 外国人である乗員の上陸については、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第十六条の規定に基づき許否を決定しているところ、密航者を運搬したことがある船舶、乗員が脱船逃亡(本邦に潜入することを目的とする外国人乗員が、本邦到着後に不法上陸すること又は乗員上陸許可を受けて上陸後不法残留することをいう。)した船舶、乗員が麻薬、覚せい剤等の薬物又は銃砲刀剣類に関する法令に違反した船舶等を「要注意船舶」に指定し、当該船舶に乗船する乗員に対しては、同指定の根拠となる事由に応じ、適正な出入国管理を確保するため、慎重な審査を実施している。
 乗員が脱船逃亡した船舶で「要注意船舶」と指定したものについては、脱船逃亡した者と同一国籍の乗員で、船員としての経歴が一年未満のもの、脱船逃亡した者と同一の会社に所属するもの又は脱船逃亡した者と同一の会社により配乗されたものの上陸を原則として一年間許可しないこととしている。ただし、このような者であっても、船舶の運航上必要な用務がある場合や人道上やむを得ない事情その他上陸を必要とする特別な事情がある場合には、上陸を許可している。また、当該指定後初めて本邦の港に入港し、問題なく外国の港に向け出港した場合又は船長若しくは運送業者が脱船逃亡防止のための改善措置を講じた場合には、一年間を待たず、直ちに当該指定を解除し、通常の乗員上陸許可に係る取扱いを行うこととしている。

(二)について

 本取扱いは、昭和三十年代初頭から韓国籍の船舶が朝鮮半島からの密航者を運搬する事案が多発し、これらの事案には、船長、運送業者及び船員が組織的に関与する場合がほとんどであったことから、密航者を運搬した船舶を「要注意船舶」と指定し、慎重な審査の対象としたことから始まったものである。
 その後、不法就労を目的としてフィリピン人、ミャンマー人等の乗員が脱船逃亡する事案が増加したことから、不法就労問題への適切な対応を主眼としてその取扱いを見直してきており、平成九年四月から現行の取扱いとしている。
 この取扱いは、入管法第十六条に基づくものである。同条は、船舶等の乗員が船舶等の乗換え、休養、買物その他これらに類似する目的をもって十五日を超えない範囲内で上陸を希望する場合には、乗員の管理監督責任者たる船舶等の長又は運送業者の申請に基づき簡易な手続で、入国審査官が乗員上陸を許可することができるとしているが、他方、かかる目的に藉口し不法な目的を有する者にまで上陸を許可することは同条の趣旨とするところではない。したがって、(一)についてでお答えした事由のある船舶を「要注意船舶」とし、当該船舶の乗員に対しては、慎重な審査を行っているところである。

(三)について

 脱船逃亡事案の発生した船舶の乗員で、船舶の長又は運送業者から上陸申請があり、上陸を許可されなかったものの数は、平成十年においては百三十七名である。他方、当該船舶の乗員で上陸を許可されたものは千三百十三名である。また、船舶名については、関係者の権利及び利益の侵害につながるおそれがあることから、答弁を差し控えたい。
 脱船逃亡事案が発生した船舶の乗員で上陸を許可されなかったものについては、原則として本邦の港に入港している間その取扱いが続くこととなるが、当該船舶が本邦の港に入港後七日経過したときには上陸を許可することとしている。
 なお、同年中に脱船逃亡した乗員は三百四十五名で、当該事案の発生した船舶は二百十八隻である。

(四)について

 (一)についてでお答えしたとおりである。これら船舶の多くは年間数回本邦の港に入港しているところ、そのほとんどは指定後初めて本邦の港に入港した後問題を生ずることなく出港しており、その時点で当該指定は解除されている。

(五)について

 これまでに、ノールウェー、デンマーク、オランダ及びギリシャの各在京大使館から、脱船逃亡事案が発生した船舶に乗船する乗員の上陸を禁止する取扱いの改正に関する申入れがあった。
 また、外国船舶協会から市場開放問題苦情処理推進本部(OTO)に対し、本取扱いの緩和を求める申立てがあり、さらに、全日本海員組合等海事関係者から、本取扱いの撤廃について申入れがあった。

(六)について

 船舶及び航空機の乗員が上陸を希望するときは、いずれも入管法第十六条の規定に基づく手続により上陸の許否を決定しており、同条第二項に数次乗員上陸許可に関し別々の規定が設けられていることを除けば、法令上及び審査手続上両者の間に差異はない。

(七)について

 法務省入国管理局において調査したところ、これまで航空機の乗員に係る脱船逃亡に相当する事案は発生しておらず、船舶と同様の取扱いは行っていない。

(八)について

 (七)についてでお答えしたような実態上の違いがあることから、入管法第十六条の適用において差異があるということである。

(九)について

 本取扱いは、(一)についてでお答えしたとおり、乗員の脱船逃亡をもって一律に全乗員の上陸を不許可としているものではなく、脱船逃亡事案等の発生状況にかんがみ、適正な出入国管理を確保するため、入管法第十六条に基づき個別に上陸の許否を決定し、適正に実施しているものである。

(十)について

 (一)についてでお答えしたとおり、船舶の運航上必要な用務がある場合や人道上やむを得ない事情その他上陸を必要とする特別な事情がある場合には、上陸を許可することとしている。例えば、病気治療の必要があるとき、当該船舶が十日以上他の港に寄港することなく本邦に入国したとき又は当該船舶が本邦の港に入港後七日経過したときには上陸を許可している。
 乗員の脱船逃亡が発生した船舶に対する諸外国の取扱いについては、これまで調査した範囲では、次のとおりであると承知している。
 英国においては、通常は書面で上陸の許可を決定しているが、当該船舶が過去に密航者の運搬、乗員逃亡等の同国入管法に違反したことがあった場合には、入管職員が臨船して乗員に対し個別の面接を行い、同国入管法に照らして上陸の許可要件を満たしていると認められるときは、個々に乗員に対する上陸を裁量により認めている。米国においては、同国入管法に違反した船舶のリストを保有しており、到着した乗組員が過去に逃亡したり、その他の入管法違反を犯した者であることが判明すれば、一般的に、船主又は船長の責任で船内に留め置かれる。乗組員が入国審査官の命令に従わず下船した場合には、船主、代理店、荷受人、船長等に対して一人につき三千ドルの罰金が科せられることとなっている。
 適正な出入国管理を遂行するための措置については、各国がその直面する問題に応じて定めるべきものであるところ、我が国においては、一般の上陸許可より簡易な手続を定めることにより船舶等の乗員の上陸について手続の円滑化を図る一方、近年、この制度を悪用する脱船逃亡事案が年間二百隻から三百隻発生している実状を踏まえ、本取扱いを実施しているものである。

(十一)について

 政府においては、平成八年以降、全日本海員組合、国際運輸労連、日本船主協会等の海事関係者との間で、脱船逃亡事案が発生した場合の外国人乗員に対する上陸許可の取扱いと並んで、同事案の未然防止に関しても協議を行ってきているところである。

(十二)について

 我が国はILO第百八号条約(以下「本条約」という。)を批准していないことから、本条約の適用はない。したがって、本取扱いと本条約との抵触の問題について見解を示すことはできない。
 本条約の内容は、国内法制との整合性等について検討する必要があるため、いまだ批准していないものである。

(十三)について

 (一)について及び(二)についてでお答えしたとおり、本取扱いは、適正な出入国管理を確保するため、入管法第十六条に基づき実施しているところ、乗員に係る脱船逃亡事案の発生状況等出入国管理行政上の問題、関係者からの要望等を踏まえて必要に応じて見直しを行っているものである。
 今後とも、出入国管理行政上の問題への的確な対応を採りつつ、適切な出入国管理行政の遂行に努めてまいりたい。





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