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平成十二年二月二十五日受領
答弁第二号

  内閣衆質一四七第二号
  平成十二年二月二十五日
内閣総理大臣 小渕恵三

       衆議院議長 伊(注)宗一郎 殿

衆議院議員寺前巖君提出危険有害物輸送の事故再発防止と安全確保に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員寺前巖君提出危険有害物輸送の事故再発防止と安全確保に関する質問に対する答弁書



一の1について

 御指摘のように、火災や健康危害等を発生させるおそれのある物質(以下「危険物等」という。)の道路輸送について規制する法律は、消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)、毒物及び劇物取締法(昭和二十五年法律第三百三号)等複数存在するところである。
 これらのうち主な法律について見ていくと、消防法においては、火災を発生させ、又は火災を拡大させる可能性の高い物質を危険物に指定し、その貯蔵、取扱い、運搬等について、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに火災による被害を軽減することを目的として必要な規制を行っている。
 毒物及び劇物取締法においては、日常流通する有用な化学物質のうち、主として急性毒性による健康危害が発生するおそれが高い物質を毒物又は劇物(以下「毒劇物」という。)に指定し、その製造、販売、運搬、貯蔵その他の取扱いについて、保健衛生上の見地から必要な規制を行っている。
 高圧ガス保安法(昭和二十六年法律第二百四号)においては、高圧ガスの製造、貯蔵、販売、移動その他の取扱いについて、公共の安全を確保することを目的として必要な規制を行っている。
 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)においては、危険物等を運送する自動車を含む道路運送車両の構造及び装置について、道路運送車両に関する安全性の確保を図ることを目的として必要な規制を行っている。
 以上のように、それぞれの法令の目的に沿い、それぞれの法令を所管する省庁において、所要の規制を行っているところであり、危険物等の道路輸送の安全は確保されていると考えており、これらの規制を見直す考えはない。

一の2について

 危険物等の道路輸送については、一の1についてで述べたとおり、それぞれの法令の目的に沿い、それぞれの法令を所管する省庁において、所要の規制を行っているところであるが、政府としては、危険物運搬車両による事故防止と迅速な事故処理対策等を推進するために、関係省庁等で構成する「危険物運搬車両の事故防止等連絡会議」を開催する等、関係省庁等の連携の下に、総合的に対策を推進しているところである。

一の3について

 消防法及びこれに基づく政令等においては、タンクローリーが横転事故を起こした場合であっても積載している危険物の漏れ等を最小限にとどめることができるよう、移動タンク貯蔵所について、所要の構造、設備等の技術上の基準を定めるとともに、その設置等に当たっては、市町村長等の許可及び完成検査を義務付けているところである。
 また、毒物及び劇物取締法及びこれに基づく政令等においては、毒劇物の運搬容器について、毒劇物による保健衛生上の危害を防止する観点から、横転事故を起こした場合であっても毒劇物の漏れ等を最小限にとどめることができるよう、必要な基準を定めているところである。
 以上のように、危険物等の道路輸送について、危害を防止する観点から、必要な構造上の基準が定められており、現時点でこれら基準を見直す考えはない。

一の4について

 消防法においては、危険物の輸送にタンクを用いる場合には、同法第十条第四項並びに第十一条第一項及び第五項の規定に基づき、市町村長等のタンクの設置等に係る許可及び完成検査を受け、当該危険物を安全に輸送するための技術上の基準を満たしていることが確認された専用の移動タンク貯蔵所を用いることとされている。
 また、毒物及び劇物取締法においては、同法第十一条第三項等の規定に基づき、毒劇物を運搬する場合には、飛散、漏れ等を防ぐのに必要な措置を講じなければならないこととされ、また、同法第十六条第一項に規定する技術上の基準として定めた毒物及び劇物取締法施行令(昭和三十年政令第二百六十一号)第四十条の四第三項の規定に基づき、毒劇物を車両を使用して運搬する場合には、容器又は被包が落下し、転倒し、又は破損することのないように積載することとされている。
 これに加えて、厚生省においては、昨年十月、首都高速道路で過酸化水素水を積載したタンクローリーが爆発する事故が発生したことを踏まえ、これらの法令上の義務が適切に遵守されるよう、運搬する物質と運搬容器との反応、当該運搬容器を用いて運搬する物質と前回運搬された物質との反応等を確認した上で、危険の防止措置を適切に講ずるよう「毒物劇物の運搬及び廃棄について」(平成十一年十一月十一日付け厚生省医薬安全局安全対策課長及び監視指導課長通知)により各都道府県衛生主管部(局)長あてに通知したところである。

二の1について

 イエローカードの携行状況については、消防法第十六条の五第一項及び第二項、毒物及び劇物取締法第十七条等の規定による立入検査及び関係機関による指導の際に、その確認を行っているところであり、その範囲内においては、危険物、毒劇物等を運搬する自動車の大半がイエローカードを携行しているものと承知している。

二の2について

 複数の名称を有する危険物等の道路輸送中に事故が発生した場合であっても、危険物等の性状が迅速に把握でき、適切な処理、二次災害防止等についての情報を入手できるシステムが既に構築されているところである。国連勧告に基づく番号及び図案の表示については、その背景として、国境を越えて危険物等を輸送する場合には、各国語で危険物等の名称等を表示することが困難であるため、共通化した番号等で表示することとしているものと認識しているが、我が国国内の道路輸送においては、国境を越えることがないことから、その必要性は低いと考えており、現時点では導入は考えていない。
 また、運輸省、建設省及び消防庁においては、「危険物道路輸送に関する欧州各国合意書」の概要を承知している。

二の3について

 危険物等の道路輸送中に事故が発生した場合には、事故発生時の迅速な処理方法、中和剤の入手、二次災害防止等について、現場の消防機関、警察、高速道路の道路管理者等が、二十四時間体制で適切に情報を入手できるシステムを構築しており、適切に対応しているところである。
 今後とも、関係機関の一層の連携強化を図るとともに、システムの整備改善に努めてまいりたい。

三について

 運輸省においては、道路運送車両法第四十条から第四十二条までの規定に基づき、自動車の構造及び装置について保安上の技術基準への適合を義務付けるとともに、タンクローリーの横転事故の原因の調査等を行っているところである。
 今後、事故原因の調査結果等を踏まえ、必要に応じ横転事故防止対策の検討を行うこととしたい。

四の1について

 石油元売り各社から一般貨物自動車運送事業者及び特定貨物自動車運送事業者(以下「運送事業者」という。)に御指摘の配車表が送付された場合であっても、そのこと自体は単に運送の依頼があったに過ぎないものと解される。運送事業者は、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)第十八条第一項、第二十二条第二項等の規定に基づき、運行管理者に、乗務割を作成しこれに従い乗務員を事業用自動車に乗務させること、乗務員に対する指導及び監督を行うこと等運行の安全の確保に関する業務を行わせなければならないこととなっており、このことは配車表が送付されたときであっても変わりはない。
 運輸省においては、これまでも運行管理者に係る同法の規定を遵守するよう徹底してきたところであるが、今後とも、同法第六十条の規定に基づく立入検査等により、法令の遵守状況の把握に努めるとともに、業界団体に対する指導及び個別事業者に対する指導等を実施してまいりたい。

四の2について

 運送事業者が収受する運賃及び料金は、基本的には、荷主との間で任意に定められるものである。政府としては、運送事業者と荷主との良好な取引関係の確立が図られるよう運送事業者及び荷主を指導してまいりたい。
 また、運送事業者は、貨物自動車運送事業法第十一条第一項等の規定に基づき、運賃及び料金をあらかじめ運輸大臣に届け出ることとなっているが、入札という方法で運賃及び料金が決定されても、そのこと自体は、同条第二項各号のいずれかに該当する場合を除いては、問題ではない。
 なお、取引の相手方を定める方法として入札を行うことのみをもって、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)に規定する不公正な取引方法に該当するとはいえないと考えられる。

四の3について

 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第三十条の二第二号本文においては、危険物のうち、危険性の種類、程度等を勘案し、特に危険性の高いものを輸送する場合に二人以上の運転要員を確保することを義務付けている。御指摘の石油類については、輸送に当たって特に危険性の高いものであるとは考えておらず、現時点で同号本文を適用することは考えていない。
 また、運輸省自動車交通局長及び労働省労働基準局長の連名で、石油連盟を含む荷主団体に対して貨物自動車運送事業における一層の労働時間の短縮について協力要請を行っているほか、運送事業者の業界団体が行う労働時間短縮に向けた荷主への協力要請を含む自主的な取組の促進のための支援を行ってきたところである。

四の4について

 過労運転等を防止し、輸送の安全を確保することは、貨物自動車運送事業法第十七条等の規定により運送事業者の義務とされている。運送事業者が収受する運賃及び料金は、四の2についてで述べたとおり、基本的には、荷主との間で任意に定められるものであるが、政府としても、輸送の安全の確保について所要の指導を行ってまいりたい。
 また、タンクローリー運転者を含むトラック運転者の労働時間等の労働条件の改善を図るため、これまで政府としては、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第七号)のほか労働基準関係法令の遵守の徹底に努めてきたところであり、今後とも、業界団体に対する指導及び個別事業者に対する監督指導を実施してまいりたい。





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