答弁本文情報
平成十二年五月三十日受領答弁第二五号
内閣衆質一四七第二五号
平成十二年五月三十日
衆議院議長 伊※(注)宗一郎 殿
衆議院議員金田誠一君提出周辺事態法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員金田誠一君提出周辺事態法に関する質問に対する答弁書
一の1について
日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定(昭和二十九年条約第十二号)第一条(d)に規定された「国際連合の軍隊」として活動しているアメリカ合衆国の軍隊(以下「合衆国の軍隊」という。)の活動が、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(平成十一年法律第六十号。以下「周辺事態安全確保法」という。)第三条第一項第一号にいう日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)の「目的の達成に寄与する活動」にも当たることはあり得ることであり、そのような合衆国の軍隊に対して、我が国が周辺事態安全確保法に基づき後方地域支援を行うことはできる。
周辺事態安全確保法第三条第一項第三号に規定する「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。以下同じ。)及びその上空の範囲」とは、平成九年九月二十三日に日米安全保障協議委員会において了承された日米防衛協力のための指針(以下「指針」という。)において後方地域支援が行われる地域として記述されている「日本の領域」及び「戦闘行動が行われている地域とは一線を画される日本の周囲の公海及びその上空」を表したものであり、両者は同じ内容のものである。
自衛隊による後方地域支援及び後方地域捜索救助活動の実施区域の指定については、基本計画に定められた事項に従い、防衛庁長官が内閣総理大臣の承認を得て行うこととなる。
当該実施区域が、周辺事態安全確保法第三条第一項第三号に規定する「後方地域」すなわち「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。以下同じ。)及びその上空の範囲」に該当するか否かについては、自衛隊が収集した情報、外務省から得た情報、米軍から得た情報等を分析することにより、防衛庁長官が判断し、内閣総理大臣の承認を得ることとなる。
周辺事態安全確保法に規定する「戦闘行為」と指針にいう「戦闘行動」とは、同一の意味である。
陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(明治四十五年条約第四号)及び同条約に附属する規則(以下「陸戦条約」という。)は、武力紛争における戦闘の方法等を規律するものであり、武力紛争の当事国の間で適用されるものである。しかしながら、周辺事態安全確保法に基づき我が国が実施する後方地域支援は、それ自体、武力の行使に該当せず、また、米軍の武力行使との一体化の問題が生ずることもないものであり、自衛隊の部隊等が当該後方地域支援を行っても、我が国が武力紛争の当事国になることはない。したがって、周辺事態においては、我が国に陸戦条約は適用されず、周辺事態安全確保法に基づき米軍に対して後方地域支援を行う自衛隊の部隊等が、陸戦条約にいう「交戦者」に該当することはない。
なお、陸戦条約では、「交戦当事者」という用語は、武力紛争の当事国を示すものとして使用されている。
周辺事態安全確保法第五条第一項に規定される「国会の承認」については、両議院の承認が必要であり、先議の議院において承認の議決があり、後議の議院において不承認の議決があった場合、国会の承認が得られなかったことになるものと解される。
なお、当該「国会の承認」は国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第八十七条第一項にいう「法律案、予算及び条約を除いて、国会の議決を要する案件」に当たるものと解され、この場合において、同条第二項により、先議の議院は両院協議会を求めることができることとされている。両院協議会において承認の成案が得られ、当該成案について両院で可決された場合には、国会の承認が得られたことになるが、両院協議会の手続を経ても、なお議決が一致しなかった場合は、国会の承認が得られなかったことになるものと解される。