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令和六年二月一日提出
質問第三三号

岸田内閣の財政運営規律と増税緊縮路線等に関する質問主意書

提出者  原口一博




岸田内閣の財政運営規律と増税緊縮路線等に関する質問主意書


一 令和五年十一月二十日付けの衆議院議員原口一博君提出岸田内閣の財政運営規律と増税緊縮路線等に関する質問に対する答弁書(以下「答弁書」という。)の一において、「御指摘の「金利上昇が懸念される中で、基金への巨額の拠出は利払いを通じて国民負担を増加させることにつながる懸念」の意味するところが明らかではなく、お尋ねについてお答えすることは困難である」と答弁しているところであるが、政府は、国債の利払費の算出に使う想定金利を令和六年度当初予算案において前年度より引き上げており、政府自身も、金利が上昇する可能性を想定していると判断できる。
 そして、財務省「令和五年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」では、仮に金利が一%上昇した場合には、令和八年度に三・六兆円国債費が増額するとの試算が示されている。我が国は財政赤字であるから基金への拠出は国債を財源としており、金利上昇により利払費が増加すれば、国民の負担が増すことになると考えられる。このような懸念について政府の見解を伺いたい。
二 「答弁書」の四の2において、「「税収の増収分の一部を国民に「還元」する」ための財源」の在り方については、令和六年度予算の編成過程において検討していくこととしており、現時点でお答えすることは困難であると答弁している。
 令和六年一月現在で令和六年度予算案は閣議決定されていることから、その編成過程において検討するとされていた「「税収の増収分の一部を国民に「還元」する」ための財源」がどのように確保されたのか、政府の見解を明らかにされたい。
三 「答弁書」の六において、「消費税の還付税額のうち輸出を原因としたものを区分して、その金額及び還付税額全体に占める割合を示すことは、消費税の申告手続において、還付税額のうち輸出を原因としたものを内訳として記載する必要がある等、事業者に多大な事務負担を課すこととなるため、困難である」と答弁している。
 しかし、税の還付を受けるのであれば、その具体的な金額を明らかにすることは、納税者たる国民に対する説明責任を果たすという点でも重要であり、そのための事務負担はやむを得ないものであると考えるが、「多大」な負担とは具体的にどのようなものなのか、政府の見解を示されたい。
四 「答弁書」の七において、安倍内閣総理大臣(当時)の答弁を引用し「派遣労働者の受入れ企業は、派遣料に係る消費税額を控除できることになりますが、一方で、人材派遣会社に対しては派遣料に上乗せして消費税を支払うことになるため、直接雇用の場合と比べて損得は生じない」としている。この答弁は、派遣料に消費税が確実に転嫁できていることを前提としている。しかし、令和五年五月十五日の衆議院決算行政監視委員会において、里見隆治経済産業大臣政務官が「消費税に限らず、コストが上昇する際に、交渉力の強い事業者と弱い事業者の間では、構造的にその上昇分を転嫁することが難しいという問題があるという認識」がある旨の答弁をしている。この問題は、派遣労働者の受入れ企業と人材派遣会社との間でも同様に存在すると考えられ、消費税が派遣料に転嫁されず、派遣労働者の受入れ企業が派遣料に係る消費税の支払額を抑えられるという構造があると思われるため、非正規労働者の増加に繋がっていると考えられる。このような非正規労働者の増加を招く仕組みとなっている消費税を社会保障の財源とするのは不適切と考えるが、再度、政府の見解を問う。
五 「答弁書」の十において、政府としては、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和四年一月十九日財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省公表)の作成等の対応を行っており、引き続き、事業者の方々が不当な取扱いを受けないよう、取引環境の整備に万全の対応を図るとしている。しかし、政府は過去の消費税率引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(平成二十五年法律第四十一号。以下「価格転嫁特措法」という。)で私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)の規定を適用しないとする措置を施すという対策を講じていた。
 現在、価格転嫁特措法は失効している状態であり、新規課税事業者が団結して消費税の転嫁についてのカルテルを形成した場合に、「一般論として、事業者が共同して取引価格を引き上げるというようなことは、独占禁止法上の不当な取引制限として問題となる可能性がある」と政府は答弁している。
 アニメーター、フリーライター等の様々な業種の個人事業主は、個別に取引先と価格交渉しづらいため、団体、組合等を構築して連携せざるを得ず、これは価格転嫁特措法がないとカルテルに該当し独占禁止法違反になるおそれが生じると考えられる。独占禁止法の規定を適用しないとする措置を講じないのであれば、政府が過去に価格転嫁特措法で措置を講じてきた対応と整合性が取れないと考えるが、政府の認識を再度伺いたい。
六 答弁書の十一において、「お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではない」とのことであるが、「リスク」という用語については政府も度々使用しているところであり、例えば、鈴木財務大臣は令和五年二月十四日の閣議後記者会見で、「世界経済の下振れリスクを乗り越えて、日本経済を再生するため」といった発言をしているし、財務省国際局作成の「最近の国際金融情勢について(令和五年十一月十日)」においても、世界経済に様々な下方リスクがある旨の記載がなされている。
 米国の財政リスクに対し、「金融・為替市場に不測の影響を与えるおそれがあるため、政府としてお答えすることは差し控えたい。」とのことであるが、上記のとおり、これまで世界経済のリスクについて政府は述べているにもかかわらず、今回、米国の財政リスクについて、答弁を行わない理由について伺いたい。
 また、令和四年度末時点で本邦には約四百十八・六兆円の対外純資産残高があり、多額の米ドル建て資産残高があると想定される。米国財政の悪化により米ドル価格が下落すれば本邦の米ドル建て資産の価値も下落することになる。このような懸念について政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。

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